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美容成分や疲労回復成分を血管に直接注入することで、体にいい成分をダイレクトに取り込める美容点滴。プラセンタ点滴やにんにく点滴などが有名ですが、不足しがちなビタミンやミネラルを点滴するマイヤーズカクテルも根強い人気のある治療方法です。日本での知名度はプラセンタ点滴などに比べると低めですが、アメリカでは古くから実施されていた点滴で安全性と信頼度の高い治療になっています。ここではマイヤーズカクテルについて詳しくお話していきます。

【監修医師からのワンポイント】

マイヤーズカクテルは、サプリメントとは違って、消化管を通らずにダイレクトにビタミン・ミネラルを点滴で血管に注入するため効率が良いエイジングケアであると言えます。抗酸化作用・代謝機能改善作用があり、細胞から活力を与えてくれるので、様々な不調や肌トラブルの改善にも期待できますね。マイヤーズカクテル点滴をうけて、お食事では補いきれないビタミン・ミネラルの大切さを体感して頂けたらと思います。

目次

1.副作用のないアンチエイジング点滴・マイヤーズカクテルとは

年齢とともに今まで使っていた化粧品やサプリメントの効果を実感しにくくなることがあります。点滴治療は消化管を通さないため効率よく体全体に行きわたり、サプリメントや薬よりも効果を実感しやすいと言えます。では、マイヤーズカクテルとはどんな点滴なのでしょうか。

1-1.マイヤーズカクテル点滴とは

マイヤーズカクテルとはアメリカのメリーランド州ボルティモアの医師ジョン・マイヤーズが開発した点滴療法。人間の体の中にあるビタミンやミネラルのみを用いて、治癒力や免疫力を高めることを目的としています。体内にある栄養素を増やし、人間の体がもっている自然治癒力を高めることを目的としています。当初は慢性疲労やうつ、喘息などの患者さんに行われ評判を集めていたそうです。

ビタミンやミネラルは経口摂取できる内服薬やサプリメント、外用できるクリームなどにも用いられますが、血管内に直接注入する点滴と比較すると効果は劣ります。ご存知のようにアメリカには日本のような健康保険制度がなかったこともあり、医療費が非常に高額でした。ビタミンやミネラルの点滴で免疫力を高め、さまざまな疾患を予防するという目的もあったのでしょう。患者さんからは好評だったようですが、マイヤーズ医師が1984年に亡くなってから、この治療を継承する医師がおらず、しばらくの間、この点滴が受けられなくなっていました。

■現代医学のエビデンスに基づいたマイヤーズカクテル

その後、点滴を受けられなくなった患者さんから相談を受けた、ペンシルベニア州の開業医アラン・ガビー医師がマイヤーズ医師の点滴をベースに現代医学のエビデンスに基づいた改良・改変を加えたものを開発しました。

自然治癒力を高めることを治療の根源とした医学を推奨するアメリカホリスティック医学協会の元会長であったガビー医師はマイヤーズ医師の功績をたたえ、「マイヤーズカクテル」と命名して再現したのです。現在ではこのマイヤーズカクテルが全米に広がり、1,000人以上の医師が治療に使用しています。

現在、アメリカでは疲労回復や免疫力アップのためだけではなく、パーキンソン病や線維筋痛症といった難病の治療にも処方され、減薬に貢献しつつ画期的な効果をもたらしていると言われています。

■不足しがちなビタミンやミネラルを大量に補う目的

不足しがちなビタミンやミネラルを大量に補う目的

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人間の体に必要な栄養素は大きく分けて2種類あります。

  • ・多量栄養素 たんぱく質・脂質・炭水化物
  • ・微量栄養素 ビタミン・ミネラル

微量栄養素というのはわずかな量であっても人間の体の維持や代謝に欠かせません。にもかかわらず、微量栄養素に分類されるビタミンやミネラルは知らず知らずのうちに不足しがちです。

現代人の食生活において多量栄養素が不足することはほとんどありません。しかし、ビタミンやミネラルは十分にとれていないことが多いようです。欧米化した食生活やストレスの多い社会ではこうした栄養不足が肌トラブルや疲労など不調の原因となっていることが少なくないのです。

「ビタミンやミネラルは食事やサプリメントからも摂れるのでは?」と考えがちですが、経口摂取した栄養素はすべてが吸収されるわけではありません。サプリメントもさまざまな品質のものがあります。含有量が少なかったり、吸収率が低かったりすれば、栄養素は不足したままになってしまうのです。

1-2.マイヤーズカクテルの成分

マイヤーズカクテルに含まれる成分は以下の通りです。ビタミンだけでなくカルシウムやマグネシウムといったミネラルが含まれているのが大きな特徴です。

  • ・ビタミンB群(B1、B2、B3、B5、B6、B12)
     新陳代謝の促進、エネルギーの産出、健康な皮膚や髪の維持、血液を作り出す作用、疲労・倦怠感の改善
     ホルモンバランスの調整、ニキビの改善
  • ・ビタミンC
     抗酸化作用、美白作用、抗ストレス作用、免疫力の向上、コラーゲンの生成など
  • ・カルシウム
     丈夫な骨や歯の維持、骨粗しょう症の予防、イライラの改善
  • ・マグネシウム
     エネルギー代謝、筋肉や神経機能の維持、骨の維持、たんぱく質の合成、血圧の低下

これらのベースとなる栄養素にプラセンタやトランサミン、グルタチオンなどクリニック独自の成分を加えているところもあります。

■にんにく点滴・注射との違い

疲労回復作用のあるにんにく注射はビタミンB1、B6、B12、ビタミンCがプラスされています。これにエネルギーの代謝や筋肉の維持、神経機能の維持などに必要なマグネシウムをプラスすることで、さらに高い疲労回復・健康効果が期待できます。

1-3.マイヤーズカクテルの効果

マイヤーズカクテルの効果

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当初はうつ病や喘息などの治療に用いられていたマイヤーズカクテル。今日のマイヤーズカクテルにはどのような効果が期待できるのでしょうか。

■美容効果

美肌、美白、シミ、そばかすの改善、ビタミンCの抗酸化作用によるアンチエイジング作用や更年期症状の改善にも。予防美容としても効果的です。

■疲労回復効果

眠っても疲れがとれない慢性疲労、全身の倦怠感など。またスポーツパフォーマンスの向上にも効果があります。

■さまざまな疾患の治療として

気管支喘息、急性上気道炎、慢性副鼻腔炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、慢性じんましん、偏頭痛、生理不順、こむら返り、甲状腺機能亢進症、心不全、うつ病、自律神経失調症、耳なりといったさまざまな症状に適応となります。

■難病治療の一環として

パーキンソン病、線維筋痛症

1-4.マイヤーズカクテルの副作用と治療を受けられない人

安全性の高いマイヤーズカクテルですが、副作用はないのでしょうか。また、治療を受けられないケースについても把握しておきましょう。

■マイヤーズカクテルの副作用

ベーシックなマイヤーズカクテルに使用される栄養素はすべて人間の体内にあるものなので、副作用はほとんどありません。マグネシウムの注射では血圧が低下したり、熱感を覚えたりすることがありますが、ゆっくり血管内に注入される点滴ではほとんど副作用が起こることはありません。点滴中に気分が悪くなるようなことがあれば、すぐに医師に伝えましょう。

ビタミンやミネラルの他の成分をプラスしたマイヤーズカクテルの治療を受ける際には、カウンセリングでプラスされている成分のリスクや副作用について説明があるはずです。

■マイヤーズカクテルの治療が受けられない人

  • ・甲状腺・副甲状腺疾患のある方
  • ・腎臓疾患のある方
  • ・ジギタリス製剤を使用している方

持病のある方でも、マイヤーズカクテルでの治療を併用することができるケースは多いのですが、治療を受ける際には主治医に必ず確認してから受けるようにしましょう。

2.クリニックにおけるマイヤーズカクテル点滴の現状

クリニックにおけるマイヤーズカクテル点滴の現状

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マイヤーズカクテルに含まれる栄養素は人間の体にとってベースとなるもの。マイヤーズカクテルでこれらの栄養素が満たされた状態であれば、普段使っているコスメやサプリメントなども効果を発揮しやすくなると言えます。現在では国内でも多くのクリニックがマイヤーズカクテルの治療を行っています。ここからは現在のクリニックにおけるマイヤーズカクテル治療の現状を紹介していきます。

2-1.クリニック独自のメニューも

ビタミンやミネラルをベースとした点滴にさらなる効果を持たせるため、美容成分を追加しているところもあります。肌トラブルや悩みにあった独自の成分をプラスしているクリニックを探してみてもいいでしょう。施術前にはまず、医師の診察を受け、症状を相談してから治療に関する説明を受けます。リスクや影響について説明を受け、治療同意書にサインをしてから施術が行われます。

■マイヤーズカクテル+高濃度ビタミンC

マイヤーズカクテル点滴に、高濃度ビタミンCを混ぜて点滴する治療法です。

大量のビタミンCの時間で点滴することで、ビタミンCの血中濃度を、一気に高めることが出来ます。
高濃度であるがゆえに、紫外線を多く浴びた後(あるいは前)に、しみ予防(メラニン生成を抑制)に効果を発揮します。

また、高濃度ビタミンCの活性酸素除去作用により、がん予防作用があります。

注意)G6PD欠損症のある方は、溶血発作を起こす場合があるので、必ず、初回はG6PD採血検査を行う必要があります。

高度の腎不全・透析中・心不全の方は行えません。

■マイヤーズカクテル+プラセンタ、トランサミン、グルタチオン

美肌効果の高いプラセンタや肝斑の治療に用いられるトランサミン、グルタチオンをプラスしたもの。グルタチオンはグルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸で構成されるトリペプチドです。強力な抗酸化作用があり美白ケアや肝機能の改善にも効果が期待できます。

■マイヤーズカクテル+αリポ酸、グルタチオン、ビタミンCの倍増

抗酸化効果をさらにアップし、疲労回復効果をパワーアップさせたもの。

■マイヤーズカクテル+トランサミン、グルタチオン、プラセンタ、ビタミンCの増量

抗酸化作用を高め、シミや肝斑の改善といった美白効果やコラーゲン生成を促進してハリをアップする効果も期待できます。また、皮膚の炎症を抑えてくれるので肌荒れやニキビの改善にもおすすめです。

■マイヤーズカクテル+カルニチン

不足すると肥満や慢性疲労の原因となるカルニチンをプラスしたもの

クリニックによっては高周波エネルギーで細胞を活性化させる治療「インディバ」とマイヤーズカクテルの併用を勧めているところもあります。インディバはフェイシャル、ボディケアに用いられる治療器で美肌や痩身、セルライトやむくみ解消、肩こりの改善まで幅広い適応のある施術です。体の中から治癒力や免疫力を高めるマイヤーズカクテルと併用することで、より高い効果が期待できそうですね。

2-2.マイヤーズカクテルを受ける頻度は?

症状や肌のトラブルなどに応じて、週に1、2回受けることができます。1~2週間に1回受けると効果を実感しやすいようです。治療時間は20~40分程度です。数回受けても疲労や倦怠感などの症状が改善しない場合、他に原因があることが考えられるため、検査を受けることをおすすめします。

2-3.歯科医院におけるマイヤーズカクテル

歯科医院におけるマイヤーズカクテル

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マイヤーズカクテルの治療は美容外科や内科の他に歯科医院でも受けることができるところがあります。歯科医院におけるマイヤーズ治療は以下のような目的で行われています。

  • ・歯茎の強化
  • ・口内の不定愁訴改善に
  • ・歯周病治療効果のサポート
  • ・糖尿病をお持ちの方の歯周病治療サポート
  • ・難治性口内炎の治療
  • ・治療後の神経麻痺や神経痛の改善
  • ・インプラント維持のための骨質向上
  • ・インプラントによる歯周病予防
  • ・抜歯などの傷の回復促進
  • ・金属アレルギーの改善

もちろんこれらの効果の他に、通常のクリニックでマイヤーズカクテルの治療を受けたときと同様の美肌、アンチエイジング、疲労回復の効果なども期待できます。

2-3.マイヤーズカクテルは自費診療? 値段は?

クリニックやプラスされている成分、点滴の量(時間)などによって異なりますが1回3,980~15,000円程度となっています。この他に診察料がかかるクリニックもあるので事前に確認しておくとよいでしょう。マイヤーズカクテルの治療はすべて自費診療となります。

2-4.マイヤーズカクテルは医療費控除の対象になる?

すべて自費診療となるマイヤーズカクテルは医療費控除の対象にはなりません。

3.まとめ

ビタミンやミネラルは、お食事だけでは、補えない栄養素です。
わたしたちのカラダの代謝やエネルギー産生にも大きく関わっています。
健康なからだがあってこその美容医療です。
ダイエットにおいても、栄養素の確保は必要不可欠です。

人間の体内にあるビタミンやミネラルを直接、点滴することで体がもつ自然治癒力を高める点滴、マイヤーズカクテル。疲労回復効果だけではなく、美肌やアンチエイジング、さまざまな疾患の治療にも効果が期待できます。美肌や美白を目指す方はプラセンタやトランサミンをプラスしたもの、疲労回復やスタミナアップにはαリポサンとグルタチオンなど症状に合わせて有効成分をプラスすることも可能です。インナービューティーに興味はあるけど、何から始めていいかわからない、という方には、マイヤーズカクテル点滴を体感されて、体調の回復や、化粧ノリの改善、ダイエットのサポートにも良いかと思います。ウェルビーイング(well-being)=健康を手に入れましょう。

ただし、難病の治療には効果がないことも多いようです。持病のある方はまず、主治医に相談してから治療を受けるようにしましょう。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込です。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

Emiri

Emiri

美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。

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監修:

福井美典 医師

福井内科医院

2010年兵庫医科大学医学部卒。沖縄中部徳洲会病院にて初期研修終了後、浦添総合病院救命救急センターで救急科チーフレジデントを務めながら、救急医療に従事。糖尿病内科を並行し、両科、専門医を取得。
その後は、救急・内科保険診療を並行しながら、美容皮膚科・美容外科診療へ踏み込んだ。
2017年から現在に至るまで、大手美容皮膚科・美容外科院長を歴任してきた。
2022年5月には、故郷広島の(医)生仁会 福井内科医院で、糖尿病専門医外来・栄養療法・美容皮膚科外来を立ち上げた。
内科・救急・美容と4つの専門医を取得しており、全身をくまなく診れる医師であることが強みである。
野菜ソムリエの知識も活かし、栄養素の大切さを広めるため、インナービューティーを追求した美容診療を展開する。

安田学園安田女子高校卒業
​2010年 兵庫医科大学卒業
2010年 沖縄中部徳洲会病院にて初期研修
2012年 浦添総合病院救命救急センター チーフレジデント、鉄蕉会亀田総合病院糖尿病・内分泌代謝科出向
2015年 浦添総合病院糖尿病内科
2016年 北部地区医師会病院 救急科・糖尿病内科勤務
2017年 大手美容皮膚科沖縄院 院長 (北部地区医師会病院救急科・糖尿病内科兼任)
2019年 大手美容外科那覇院 院長(大浜第一病院 救急科兼任)
2021年 大手美容皮膚科広島院 院長(広島共立病院 救急科・糖尿病内科兼任)
2022年 福井内科医院 糖尿病内科・美容皮膚科開設(広島共立病院 救急科・糖尿病内科兼任)