美容皮膚科で施術を受けるお肌の生まれ変わりを助けるケミカルピーリングですがマッサージピール(コラーゲンピール)、ミラノリピール(バイオリピール)、リバースピール、ウーバーピールなど沢山の種類があります。

それぞれどのような効果があり、どのような肌悩みの改善が期待できるのかご存じですか?美容皮膚科で勤めている経験を活かし、レーザーやダーマペンなど他の施術との相乗効果が高い組み合わせについてもお話ししていきます。

【監修医師からのワンポイント】

ピーリングには様々な種類があり、さらに他の施術と組み合わせることもできるので、お肌のお悩みに合わせた施術が可能です。1回でもピーリング効果を感じられますが、 肌質改善を実感するためには、定期的に複数回の施術をおすすめします。

市販品と美容皮膚科で受けられるピーリングの違いとは

そもそも薬局やデパートで売っている市販のピーリングやスクラブ、エステで受けるピーリングと美容皮膚科・美容外科といったクリニックで受けるピーリングはどんな違いがあるでしょうか?

市販品やエステのピーリング

まず市販品やエステのピーリングの効果は角質層のみになります。角質層とはお肌の1番外側にあり、角化細胞といういずれ垢として剥がれ落ちる細胞で構成されています。お肌のざらつきを整える程度であれば良いと思いますが、摩擦によりお肌のバリア機能が低下しダメージを受けてしまったり、肝斑という炎症性のシミがある場合は濃くなってしまうリスクがあるため注意が必要です。また化粧品として配合できる成分や濃度は限られています。

美容皮膚科などのクリニックのピーリング

ピーリング剤により深達度は異なりますが、クリニックで受けられるピーリングは角質層・表皮層・真皮層の一部まで効果を発揮します。
シミやくすみなどの色調トラブルの原因となっているメラノサイトは表皮と真皮の境界に存在します。シワやたるみも真皮層の線維芽細胞といういわゆるコラーゲンが減少することが原因となります。このような悩みがある場合、市販品やエステで改善することはないのでお肌の深い層でのお悩みはクリニックでの施術が適応となります。
またクリニックのピーリング剤は医薬品扱いのため強力な効果が期待できます。

個人輸入でクリニックと同様のピーリングを販売しているサイトがありますが、医療従事者が状態をみて施術を行えば強力な効果が期待できる反面、化学反応による熱傷やアレルギー反応などリスクもある製剤です。また適切な温度管理を行なっていないと成分の活性が失われてしまい効果も出ません。危険なため個人輸入でのピーリングの使用はしないようにして下さい。

ピーリングの種類

マッサージピール(コラーゲンピール)

クリニックにより名称が異なりますがマッサージピールもコラーゲンピールも同様のピーリングです。ダウンタイムは少なく、お肌を若々しく保ちたい方に向いています。

効果

  • ①ハリ、弾力アップ
  • ②シワの改善
  • ③シミ、くすみ、色素沈着の改善

主成分

トリクロロ酢酸(TCA)33%+過酸化水素、コウジ酸5%

特徴

トリクロロ酢酸は真皮層にまで深達し刺激することでコラーゲンのもととなる線維芽細胞を活性化させます。コラーゲンがたくさん生成されることによりお肌のハリ感がアップし、弾力が出ます。また、シワは真皮層のコラーゲンの減少により肌の弾力が低下し、皮膚が溝のように窪むことで発生します。マッサージピールでコラーゲンの生成が促進されることにより溝がだんだんと浅くなっていくため、施術の回数を重ねる毎にシワが目立ちづらくなります。

トリクロロ酢酸は単体だと剥離作用が強力すぎるため従来まで高濃度での配合が難しい成分でした。トリクロロ酢酸と過酸化水素を組み合わせることで炎症反応を調整し、皮剥けなどのダウンタイムを少なく施術することが可能となりました。

コウジ酸はチロシナーゼ阻害作用があり、美白効果や炎症後色素沈着の防止効果があります。チロシナーゼとはシミやくすみの原因となるメラニンという色素を作るメラノサイトという細胞に含まれている酵素です。このチロシナーゼという酵素の活性を阻害することによりメラニンの生成が抑制され、お肌がトーンアップします。

リスク・ダウンタイム

  • ・赤み
  • ・乾燥
  • ・稀に皮剥け
  • ・かぶれや腫れ(ごく稀ですがコウジ酸にアレルギーを持っている方がいるため美白化粧品で肌トラブルがあった方はクリニックに相談してください)

費用

10,000〜20,000円/回

ミラノリピール(バイオリピール)

クリニックにより名称が異なりますがミラノリピールもバイオリピールも同様のピーリングです。皮剥けは起きてもしっかりハリつやを手に入れたい方、ニキビ、ニキビ跡どちらも気になる方、毛穴の開きや毛穴詰まりが気になる方に向いています。

効果

  • ①ハリ、弾力アップ
  • ②シワの改善
  • ③シミ、くすみ、色素沈着の改善
  • ④ニキビ跡の色素沈着、ニキビの改善
  • ⑤開き毛穴、たるみ毛穴の改善

主成分

トリクロロ酢酸(TCA)35%、ガンマアミノ酪酸、ビタミン、アルギニン、スクワラン

特徴

トリクロロ酢酸はマッサージピールで述べたように、お肌の真皮層を刺激することでコラーゲンの生成を増加させ、お肌のハリ感や弾力、ひいてはシワの改善効果が期待できます。また、マッサージピールはトリクロロ酢酸の濃度が33%なのに対し、ミラノリピールは35%とより高濃度で配合されています。ミラノリピールは薄皮が剥けてしまいますが1週間程度のダウンタイムが許容でき、よりしっかりとお肌のシワを改善したい方はこちらを選択すると良いと思います。

トリクロロ酢酸の他にも4種類(サリチル酸、タルトル酸、クエン酸、ラクトビオン酸)の補助的な酸が配合されているのも特徴です。

タルトル酸は角質溶解作用があるため詰りを解消し、サリチル酸が菌の増殖を抑制する作用があるためニキビの原因となる菌にとって好ましくない環境を整えます。

スクワランがお肌の潤いを保ち皮膚のバリア機能を改善する効果があるためニキビがちなお肌の方に最適なピーリングです。

ニキビは角栓という毛穴の蓋のようなものが毛穴の出口を塞いでしまいその中で菌が増殖してしまい発症するというメカニズムのためニキビ肌、油性肌の方におすすめです。

ミラノリピールを施術することによりお肌のターンオーバー(新陳代謝による細胞の生まれ変わり)が促進されるためメラニンの排出が進み、シミやくすみ、色素沈着の改善も期待できます。

ボディ用にトリクロロ酢酸50%のピーリングもあります。体は顔よりも皮膚が分厚いためより高濃度で配合されているミラノボディという専用のピーリングの取り扱いがあるクリニックを選ぶと良いでしょう。

リスク・ダウンタイム

  • ・赤み
  • ・乾燥
  • ・皮剥け
  • ・かぶれや腫れ

費用

15,000〜25,000円/回

リバースピール

リバースピールという名称はお肌の内側(真皮層)から外側(表皮層)にかけて働きかける特徴のピーリングのためこの名前が付けられています。

効果

  • ①肝斑の色調改善
  • ②ニキビ跡などの色素沈着の改善
  • ③ハリ、弾力アップ
  • ④シワの改善

主成分

  • Rsp1(1剤目):マッサージピールと同様。トリクロロ酢酸(TCA)33%+過酸化水素、コウジ酸5%
  • Rsp2(2剤目):高濃度乳酸(78%)、フィチン酸
  • Rsp3(3剤目):ヒドロキシ酸、フィチン酸、コウジ酸

特徴

マッサージピールに深達度の異なるピーリングを2種類組み合わせた3ステップの施術です。マッサージピールのハリ感が出たり、お肌のトーンがアップする効果に加え、表皮の深いところまで美白作用があるためお肌の全ての層のシミにアプローチできます。肝斑は通常表皮の色素沈着なので浅い層にも効果の出せるリバースピールが最適です。

2剤目は表皮深層にまで到達し78%の高濃度乳酸がメラニンを破壊し、フィチン酸が鉄と結合することでメラニンの生成を抑制し美白に導きます。続いて3剤目では表皮浅層に作用し、コウジ酸のチロシナーゼ阻害作用によりメラニンの生成を抑制し、ターンオーバーを整えることでメラニンを排出させていきます。

リスク・ダウンタイム

  • ・赤み
  • ・乾燥
  • ・稀に皮剥け
  • ・かぶれや腫れ(ごく稀ですがコウジ酸にアレルギーを持っている方がいるため美白化粧品で肌トラブルがあった方はクリニックに相談してください)

費用

20,000〜30,000円/回

ピーリングとダーマペンとの組み合わせ

ダーマペンとは16本もの髪の毛より細い針を高速で回転させることで肌表面に穴を開ける施術です。その穴を治すために皮膚の内部の線維芽細胞が活性化され、コラーゲンが生成されます。それによりハリ感アップ、色素沈着の改善、毛穴の開きが改善できる治療です。

ダーマペンによって開いたお肌表面の穴から薬剤を浸透させるとドラッグデリバリー効果が高くなるのでピーリングの効果の実感もただ塗るだけよりも高くなります。
場合によりダーマペンとのコンビネーションの治療を検討すると良いでしょう。

ダーマペンとピーリングと組み合わせる場合は通常出血しない程度の深さである0.2〜0.5mm程度(※個人差あり)で行います。ピーリングのピリピリ感はありますが、麻酔によりダーマペンで針をお肌に刺しているときの痛みはほとんどありません。動画などを見ると勇気のいる施術のように見えますが、私が働いている経験から患者様に痛くて施術ができないと言われたことは1度もないので痛みに関して不安になる必要はないかと思います。

アクティブな施術のため、ダウンタイムの赤みは1〜3日目をピークに1週間程度、皮剥けは2〜4日目をピークに1週間程度あります。施術後12時間程度はお肌の表面に穴が空いている状態と言われています。そのため、洗顔、スキンケアなどお顔を濡らすことやメイクは出来なくなってしまうのでご注意下さい。

ヴェルヴェットスキン (ダーマペン×マッサージピール)

ダーマペンで開けた穴を通してマッサージピールを浸透させていく施術です。

効果

  • ①ハリ、弾力アップ
  • ②シワの改善
  • ③シミ、くすみ、色素沈着の改善
  • ④毛穴開きの改善

リスク・ダウンタイム

  • ・赤み
  • ・乾燥
  • ・皮剥け
  • ・かぶれや腫れ(ごく稀ですがコウジ酸にアレルギーを持っている方がいるため美白化粧品で肌トラブルがあった方はクリニックに相談してください)

費用

15,000〜30,000円/回

スーパーヴェルヴェットスキン (ダーマペン×ミラノリピール)

ダーマペンで開けた穴を通してミラノリーピール を浸透させていく施術です。
炎症性のニキビ(赤く硬くなっているもの、痛みの強いもの、白く膿を持っているもの)には直接は色素沈着になってしまう可能性が高く、ニキビの菌を他の箇所にまで拡げてしまう可能性が高いためダーマペンの施術ができません。スーパーヴェルヴェットスキンを選択する場合も炎症性のニキビの治療を先に行なってからの施術がおすすめです。

効果

  • ①ハリ、弾力アップ
  • ②シワの改善
  • ③シミ、くすみ、色素沈着の改善
  • ④ニキビ跡の色素沈着、ニキビの改善
  • ⑤開き毛穴、たるみ毛穴の改善

リスク/ダウンタイム

  • ・赤み
  • ・乾燥
  • ・皮剥け
  • ・かぶれや腫れ

費用

25,000〜45,000円/回

ウーバーピール (ダーマペン×ウーバーピール)

ウーバーピールとはダーマペン専用のピーリングでニキビ、ニキビ跡に効果の高いものです。

効果

  • ①ニキビ、ニキビ跡の改善
  • ②毛穴の開き改善
  • ③ハリ、弾力アップ

主成分

マンデル酸(25%)、乳酸(5%)、レゾルシノール(5%)

特徴

マンデル酸にはお肌の古くなった角質を取り除き、炎症を抑える作用があります。ニキビの原因は過剰な皮脂の分泌と毛穴の詰まりです。そこに菌が増殖して炎症を起こすと、いわゆる赤ニキビの状態になります。マンデル酸は毛穴の詰まりを改善し、既にできてしまったニキビの炎症、ニキビ跡の炎症を抑えてくれるので、ニキビ肌の方にぴったりな成分です。

また乳酸はお肌を柔らかくする作用があり、薬剤がより浸透しやすくなります。レゾルシノールは高い抗酸化作用を持つため、美白に導く効果が期待できます。
スーパーヴェルヴェットスキンと同様、炎症性のニキビに直接は施術できないのでご注意下さい。

リスク・ダウンタイム

  • ・赤み
  • ・乾燥
  • ・皮剥け
  • ・かぶれや腫れ

費用

15,000〜25,000円/回

レーザー、IPLといった他のシミ治療とピーリングの併用

年を重ねるごとに新陳代謝が落ちてしまいお肌の生まれ変わりであるターンオーバーが遅くなっていきます。そうするとレーザーやIPLでシミの元であるメラニンを粉砕したり変性させてもうまく排出ができず効果の実感があまりない場合があります。
ピーリング自体の美白効果だけでなく、ターンオーバーを促してくれる作用があるためこのようなシミ治療とピーリングのコンビネーションも効果的です。

ご紹介したマッサージピール、ミラノリピール、リバースピールは真皮層にアプローチするピーリングで、レーザーやIPLも真皮層にアプローチする施術です。同じ層に働きかけるため、効果的ではあるもののお肌の弱い方には若干刺激が強くなってしまう可能性があるためクリニックの医師にお肌の状態を見てもらい、相談するのがよいと思います。

まとめ

このようにピーリングはそれぞれ効果が違い、組み合わせ方もお肌の悩みにあった選択が必要です。
ピーリングは若々しいお肌の維持だけでなく、他の施術の効果を高めてくれる優秀な施術になります。しっかりとカウンセリング、診察を受けお肌に合ったものを試してみて下さいね!

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

MarkeTech

まいまい

都内の美容皮膚科メインで働く正看護師。新人の教育担当も経験。現在は保険診療も併設されているクリニックで勤務中。美容と保険をうまく組み合わせ患者様のお悩みを解決したいと考えている。美容について勉強したことを発信しており、Twitterでは1,000人以上のフォロワーも。医療従事者としてエビデンス(根拠)に基づいた内容を伝えることを心掛けている。

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監修:

下里柚季 医師

ウェンデルクリニック

日本大学医学部医学科卒。大学病院、市中病院で皮膚科医として幅広い皮膚疾患治療に携わり研磨を積む。大学病院勤務時代に、日本皮膚科学会総会で優秀演題賞を受賞。 2022年ウェンデルクリニック 入職。
趣味・特技は、バレーボール、旅行、スキューバダイビング、料理。

日本大学医学部医学科卒業
信州大学医学部附属病院
まつもと医療センター
信州大学医学部附属病院皮膚科
ウェンデルクリニック 入職

執筆:

まいまい看護師

都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニックで働く正看護師。自身がニキビで悩み、SNSや雑誌などで知った情報を試すも良くならなかった経験からお肌の状態が自信をなくしたり、QOLを下げる原因にならないよう美容看護師になる。

また誤った情報で悲しい思いをする方を減らすため根拠に基づいた美容法をSNSで紹介している。クリニックでは前職、現職でも指導者・プリセプターを担当。施術だけでなくカウンセリングも行っている経験から現実的に実践できるような手軽な美容から幅広く発信。

愛知県の大学病院(救急病棟)
都内美容皮膚科クリニック
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニック