エステで脱毛をしたあと、またムダ毛が生えてきてしまったという経験はありませんか? 脱毛効果の高さを求めるなら、医療機関でのレーザー脱毛の方がオススメですが、ムダ毛が濃い人の場合、レーザーでも効果がでにくいことがあります。このようなガンコなムダ毛に悩んでいる人に検討してほしいのがYAGレーザーです。

目次

1.YAGレーザーとは?

医療機関で脱毛に使用されるレーザーには、アレキサンドライトレーザー、ダイオードレーザー、YAGレーザーの3種類があります。導入例が多いのはアレキサンドライトレーザーやダイオードレーザー。脱毛ができる医療機関のほとんどがこの2つのいずれかを導入しています。では、YAGレーザーはどんなレーザーで、どのようなケースに適しているのでしょうか。

1-1.YAGレーザーのメリット

YAGレーザーとは?

■どんなムダ毛に効果があるの?

今や女性としてのマナーになりつつあるVIO脱毛。勇気を出してトライしたのに、なかなか効果が現れない……。そんな風に感じたことはありませんか? もしかしたら、レーザーのタイプがあなたのムダ毛に合っていないのかもしれません。

YAGレーザーは肌の奥まで作用しやすいので、VIOゾーンや男性のヒゲなど、皮膚の深いところに毛根がある体毛に効果を発揮してくれます。また、表皮のメラニンに反応しにくいので、日焼けした肌やもともと肌色が濃い方、色素沈着している部分などの脱毛にも適しています。VIOゾーンの色素沈着が気になるという方にもオススメです。

■毛のう炎や硬毛化も起こりにくい?

その他にもYAGレーザーは毛のう炎を起こしにくく、ムダ毛が硬く太くなる硬毛化もしにくいと言われています。また、YAGレーザーには肌を引き締める効果が期待できるというメリットも。もともと、脱毛だけではなくレーザートーニングという美顔目的で使用されることもあるタイプのレーザーなので、脱毛と同時に肌が引き締まり、ハリを取り戻すような感覚が得られます。

■レーザーの波長とパルス幅とは

レーザーで脱毛をするときには、ムダ毛のタイプに合ったレーザーを選ぶことが大切です。といっても、自分のムダ毛にどんなレーザーが合っているか判断することは難しいですよね。まず、レーザーのタイプについて把握しておきましょう。

レーザーのタイプを表すときに「波長が長い」「波長が短い」と表現されているのを目にしたことがある方も多いでしょう。レーザーの種類は「波長」と「パルス幅」という2つの要素によって表されています。

波長というのは光の長さのこと。波長が短いと肌表面にしか作用せず、波長が長いと肌の奥までレーザーを到達させることができます。

パルス幅はレーザーを照射させる時間を表します。パルス幅を短くすると、照射時のピークのパワーがより高くなりますが、表皮のメラニンに反応しやすくなるため、肌へのダメージは大きくなります。反対にYAGレーザーのようにパルス幅を長くすると、表皮のメラニンの温度を上げることなく、皮膚内部の毛根までレーザーを到達させることができるのです。

医療脱毛によく用いられるアレキサンドライトレーザーは波長が短いので、毛根が皮膚の浅い部分にある薄く、細い体毛に効果が出やすくなっています。同時に肌表面に反応しやすく、表皮のメラニンに反応しやすいので、日焼け肌や色素沈着した肌には適していませんが、肌表面にあるシミの除去には効果が出やすくなっています。

■顔の産毛にも効果が出やすい

顔の産毛にも効果が出やすい

YAGレーザーなら、アレキサンドライトレーザー(代表的な機器はGentle LASE)では抜けにくい顔の産毛にも効果があります。

■こんな症状にも効果が! 浅い層と深い層をカバーするQスイッチYAGレーザー

シミや肝斑の除去に用いられるQスイッチYAGレーザーは波長を切り替えることができるタイプのYAGレーザーです。波長を切り替えることで、肌の浅い層と深い層にある両方の色素にアプローチできます。ひとつの機種で肌表面にある薄いシミや、根の深い濃いシミまで対応できて効率的な施術が可能になります。

レーザートーニングとして使用すれば、シミや毛穴の開きにアプローチしながら、顔の産毛を除毛してくれ、一石二鳥です。

■YAGレーザーでタトゥーやアートメイクも除去できる

YAGレーザーでタトゥーやアートメイクも除去

タトゥーや刺青、アートメイクは肌の深い層に色素が入っているため、除去にはYAGレーザーが適しています。
また、タトゥーはその色によって、除去に適したレーザーの波長が異なります。波長を切り替えることができるQスイッチYAGレーザーは、これまで消しにくいと言われていた緑や青、黄色の色素を含んだタトゥーや刺青も、効果的に除去できるようになってきました。

施術回数はタトゥーの状況によって異なり、1~2年程度期間がかかりますが、かなり薄くすることが可能です。プールやスパなどで入場を断られた経験のある方は、QスイッチYAGレーザーを導入しているクリニックで相談してみてはいかがでしょうか。

1-2.YAGレーザーのデメリット

脱毛効果が高く、肌への影響も少なそうなイメージのあるYAGレーザー。デメリットもしっかり把握しておきましょう。

■他のレーザーと比べて、痛みは強め?

痛みの感じ方はかなり個人差がありますが、肌の深いところまで到達するYAGレーザーは他のレーザーよりも痛みが強め。また、皮膚の奥に作用するので、肌の表面に塗るタイプの麻酔が効かないというデメリットがあります。ただし、施術回数が増えて、ムダ毛が少なくなってくるにつれ、痛みも軽くなります。

比較的、痛いが少ないアレキサンドライトレーザーでもVIOゾーンの脱毛は他のパーツと比べ、痛みが強くなりますが、YAGレーザーの場合、人によってはかなり痛い!と感じることもあるようです。その場合、医師、施術者と相談して出力を下げてもらうようにしましょう。

痛くても確実にムダ毛が抜ける方を選ぶか、脱毛効果が実感するまでに施術回数を要しても痛みが少ない方を選ぶか、どのレーザーを選ぶかは、あなたがなにを優先するかによっても変わってきます。

■導入しているクリニックが少ない?

脱毛のためのレーザーとしてもっとも普及しているのが、アレキサンドライトレーザーです。脱毛施術のためだけにYAGレーザーを導入しているクリニックはそれほど多くありません。ただし、アレキサンドライトとYAGの両方を照射できるサイノシュアー社のエリート・プラスのような機種を導入しているクリニックもたくさんあります。

エステで効果がなかったという方や、脱毛を終えたのに、また生えてきてしまったのでYAGレーザーを試してみたいという方はあらかじめYAGレーザーの施術に対応しているか電話で確認してから、カウンセリングを受けるとよいでしょう。

1-3.YAGレーザーの最新機種

YAGレーザーは脱毛ができるものとシミや肝斑の治療、肌の引き締めなど、レーザートーニングに用いられる2つのタイプの機種があります。代表的な機種を紹介しましょう。

■脱毛に用いられる機種

エリート・プラス

エリート・プラス

出典 http://www.cynosure.com/

波長の異なる2種類のレーザーをひとつの機種で照射できるのが、アメリカ・サイノシュアー社のエリート・プラスです。腕や顔の細いムダ毛にはアレキサンドライトレーザー、VIOやヒゲなどの濃いムダ毛にはYAGレーザーと2つのレーザーを使い分けながら照射できる優れた機種。冷却ガスを噴射しながら施術できるので、痛みも少ないのが特徴です。

クールグライド(CoolGlide)

脱毛しながら、肌のタイトニング効果も期待できるのが、アメリカのキュテラ社が製造するヤグレーザー、クールグライドです。アメリカで開発・製造されたこの機種はFDA(米国食品医薬品局)に永久脱毛効果が認められています。アフリカ系の方の濃い色の肌の方でも使用可能なので、日焼けした日本人でもまず問題なく使用できると考えていいでしょう。日本ではヒゲの脱毛に使用されることが多くなっています。

■レーザートーニングに用いられる機種

スペクトラ

スペクトラ

出典 https://jp.lutronic.com/

韓国のメーカー・ルートロニック社のQスイッチYAGレーザーがスペクトラです。韓国の機種というと、アメリカの機種より劣るという先入観をもってしまいますが、ルートロニック社はアメリカにも法人をもつ優秀なメーカー。スペクトラは日本の厚生労働省にあたる米国の機関、FDAの認可も受けています。

実はこうした先入観は私たち一般の消費者だけではなく、美容外科医でも同じなのだそう。そのため、ルートロニック社の機種はアメリカのものに比べると導入数が少なくなっているようです。

顔の左右対称に表れる肝斑もアジア人に起こりやすい肌トラブルです。肝斑はこれまでレーザーを照射すると、濃くなってしまうと言われてきました。このスペクトラは主にシミや肝斑の除去に使用されます。韓国のメーカーだけあってアジア人特有の肝斑に関する研究に関しては欧米のメーカーより一歩進んでいると言えるでしょう。

トライビーム

トライビーム

出典 http://www.jeisys.com/2016/

ジェイシス社のQスイッチYAGレーザーがTRI-BEAM(トライビーム)です。最適なエネルギーのレーザーを最大限の出力で照射しながら、肌にダメージを与えず、シミや肝斑、アザなどの小さなターゲットに効果的に作用させることが可能な機種。

刺青の除去や赤ら顔の治療にも用いられ、短い施術時間で効果が得られると評判です。また、肌を引き締める効果が高く、毛穴の開きや目の下のたるみにも効果があるそう。

メドライトc6(レーザートーニング)

メドライトc6(レーザートーニング)

出典 https://www.cynosure.com/

サイノシュア社のQスイッチYAGレーザー、メドライトC6は肝斑の治療に広く用いられている機種です。顔全体に照射することができるので、くすみやニキビ跡といった広範囲にわたる肌トラブルやタトゥーの除去、毛穴の開きやほうれい線の改善などにも役立つと言われています。

2.YAGレーザーの施術例とその内容

YAGレーザーの施術例とその内容

YAGレーザーとひとことで言っても、いろいろなタイプがあることがお分かりいただけたのではないでしょうか。では、実際にYAGレーザーを使用した施術について詳しく紹介しましょう。

2-1.YAGレーザーの施術回数、治療後の経過

脱毛の場合、施術回数は5回程度と他のレーザーと違いはありません。女性の場合、比較的変化は実感しやすく1回目の施術から2週間程度でムダ毛がポロポロと抜けるようになってきます。

男性のヒゲの場合は完全に脱毛するまでには、一般的に8~12回程度施術する必要があります。10回以上かかる人も多いので、ヒゲが濃い方や完全になくしたい方は回数無制限プランが用意されているクリニックを選ぶといいでしょう。

2-2.YAGレーザーのダウンタイム

YAGレーザーのダウンタイム

YAGレーザーのダウンタイムの有無は施術の目的によって異なります。脱毛に使用した場合や、顔全体に照射するレーザートーニングに使用した場合、ダウンタイムはほとんどありません。ポツポツと赤くなる人もいますが、クリニックであればすぐに治療が受けられるため、あまり心配する必要はないでしょう。治療を受ければ、すみやかに症状も改善することがほとんどです。

ただ、まれに脱毛をした箇所がかゆくなることがあるようです。処方されている薬をつけてもかゆみが止まらない場合は施術を受けたクリニックで診察を受けるようにしましょう。

ただし、シミの治療などでピンポイントに照射した場合は、ダウンタイムが長くなります。施術後数日でかさぶたができ、1週間程度は紫外線から保護しながら、触らないようにしなければならないため、患部にメイクはできません。イベントの前など大切な予定があるときに施術を受けるのは避けるようにしましょう。

2-3.YAGレーザーのアフターケア

アフターケアも施術の目的によって変わってきます。

■脱毛のアフターケア

YAGレーザーで脱毛した場合は、肌が乾燥しやすくなるので、丁寧に保湿を行うようにしてください。クリニックによっては保湿用の軟膏を処方してくれるところもあります。ヒーターの風やナイロンストッキングやタイツ、合成繊維のスパッツなども肌を乾燥させるので注意しましょう。

また、脱毛後の肌はデリケートになっているので、紫外線からしっかり保護してあげることも大切です。外出時は日焼け止めを使用し、肌が露出しないような服装を選ぶと安心でしょう。

■シミ取りの治療のアフターケア

YAGレーザーをピンポイントで照射するシミ取りの場合、施術後はしっかりと患部を保護してあげる必要があります。1週間程度でかさぶたができてきますが、かさぶたは無理にはがしたりしないこと。かさぶたが取れたあとはハイドロキノンのクリームなどで色素沈着を防ぐケアをプラスします。術後、3カ月程度は日焼け止めを使って、しっかりと紫外線対策を行ってください。

3.YAGレーザーの適応

YAGレーザーの費用と適応

肌にやさしく、脱毛効果の高いYAGレーザー。費用がどのくらいかかるのか気になりますよね。エステの脱毛で効果がなく、YAGレーザーを受けたい!というようなケースでは、あまりお金をかけられないという人もいるでしょう。また、導入しているクリニックがそれほど多くないことからも、費用が高いようなイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。施術を受けられないケースと合わせてチェックしておきましょう。

3-1.YAGレーザーを受けられない人っているの?

YAGレーザーは肌への負担が少ないレーザーですが、光アレルギーや過敏症のある方、妊娠中や授乳中の方、ペースメーカーを使用されている方など、心臓に持病のある方は施術を受けることができません。心臓以外にも治療中の疾患や気になる症状がある方は、必ず事前に医師に相談するようにしましょう。また、日焼けの度合いによっては施術を断られることもあるようです。

4.まとめ

なかなか脱毛の効果が出ない、濃いムダ毛に適しているYAGレーザー。肌の奥までレーザーが浸透することで、VIOゾーンや男性のヒゲなどの脱毛にも効果を発揮してくれます。YAGレーザー単独の機種よりも、YAGレーザーとアレキサンドライトレーザーを切り替えることができる機種を導入しているクリニックが多いので、興味のある方は、まずは電話で問い合わせてみてはいかがでしょうか。

【記事の執筆・レビューに使用した参考文献等】

記事の正確性等の確保方法及び参考文献の取り扱いについては、Call to Beautyの編集プロセスをご覧ください。

「Skin Treatment Machine | Elite+」
Cynosure

「Hollywood Spectra」
Lutronic

「Medical Laser – Cosmetic Lasers」
Jeisys

「Laser Tattoo Removal Machine | MedLite C6」
Cynosure

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

Emiri

Emiri

美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。

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監修:

鈴木稚子 医師

六本木スキンクリニック

東京慈恵会医科大学医学部卒業。大学病院にて皮膚科医として勤務後、六本木スキンクリニックを開院する。
不自然になるような施術は行わないことをモットーに自然な美しさを意識しているそうです。学生時代から美しいものに対する意識を高く持ち、人の見た目をきれいにしたい、ハッピーにしたいという気持ちから、エイジング治療、美肌治療には力を注ぎ、様々な角度から治療のアプローチをおこなっています。

医学博士
日本医師会スポーツ認定医など

東京慈恵会医科大学医学部卒
同大皮膚科
国立大蔵病院皮膚科
六本木スキンクリニック院長