一度、始まってしまったら進行を止められないと思われてきた男性の薄毛。最近では「男性用脱毛症(AGA)」としてクリニックでの治療ができるようになりました。にもかかわらず、世間には薄毛で悩んでいる男性がまだまだたくさんいます。残念ながら、AGAの治療薬であるフィナステリドはすべての人に効果をもたらしてくれるわけではありません。でも、「フィナステリドが効かない人の薄毛に効く」という薬が。それが、アボルブ(ザガーロ)という治療薬です。ここではアボルブ(ザガーロ)について詳しく説明していきます。※厚労省は前立腺肥大治療薬として「アボルブ」を、AGA治療薬として「ザガーロ」を認可しています。成分、用量が同じですので、この記事では併記しています。

目次

  • 1.プロペシアより効くって本当? 薄毛治療薬アボルブ(ザガーロ)とは
  • 1-1.アボルブ(ザガーロ)とは
  • 1-2.アボルブ(ザガーロ)の効果
  • 1-3.アボルブ(ザガーロ)がフィナステリドより効く理由とは
  • 1-4.アボルブ(ザガーロ)はすぐに効果が出る?
  • 1-5.アボルブ(ザガーロ)の副作用や注意点
  • 1-6.アボルブ(ザガーロ)にジェネリックはある?
  • 1-7.アアボルブ(ザガーロ)が出荷停止になった理由
  • 2.アボルブ(ザガーロ)の購入方法
  • 2-1.アボルブ(ザガーロ)は通販で買える?
  • 2-2.アボルブ(ザガーロ)をクリニックで処方してもらう
  • 2-3.アボルブ(ザガーロ)は保険適用?
  • 3.まとめ

1.プロペシアより効くって本当? 薄毛治療薬アボルブ(ザガーロ)とは

1-1.アボルブ(ザガーロ)とは

アボルブカプセル0.5mg
アボルブ(ザガーロ)とは
アボルブ(ザガーロ)とは

出典 https://www.rad-ar.or.jp/

アボルブ(ザガーロ)はイギリスの製薬会社グラクソスミスクライン(GSK)が開発した医薬品。アボルブ(ザガーロ)というのは製品名で、有効成分はデュタステリドという成分です。もともとは男性の前立腺肥大の治療薬として開発されました。厚生労働省にAGA治療薬として認められてからは、日本では「ザガーロ」という名前で処方、販売されています。

男性は加齢とともに夜間の頻尿や排尿障害、残尿感などに悩まされることがよくあります。これらの症状は前立腺の肥大によって起こるもの。前立腺は男性だけにある器官で加齢とともに大きくなり、尿道を圧迫して尿のトラブルを引き起こします。55歳の男性の5人に1人は前立腺肥大症に悩んでいるといわれるほど、一般的な症状です。

前立腺の肥大は男性ホルモンのはたらきと深いかかわりがあります。アボルブ(ザガーロ)は男性ホルモンの活性を抑えて前立腺そのものを小さくする治療薬として2001年にアメリカ、2002年にヨーロッパ、2009年には日本の厚生労働省で認可を受けて前立腺肥大および男性型薄毛の治療薬として用いられています。

製造元のグラクソスミスクラインは2016年度の製薬会社売上ランキング5位のグローバル企業。世界中で認可を受け、内服している患者さんがいる治療薬なので安全性と信頼度は高いと言えるでしょう。

1-2.アボルブ(ザガーロ)の効果

アボルブ(ザガーロ)の効果

では、アボルブ(ザガーロ)はどのように男性型薄毛の症状にアプローチするのでしょうか。治療薬がどのように体に作用するかのメカニズムを作用機序と呼んでいますが、ここでアボルブ(ザガーロ)の作用機序を説明しましょう。

■男性型薄毛が起こる原因を知ろう

そもそも男性型薄毛はなぜ起こるのでしょうか。その原因は男性ホルモンの一種、テストステロンが変化してできるDHT(ジヒドロテストステロン)という物質にあります。薄毛が起きている頭頂部やいわゆるM字ハゲの部分にはこのDHTがたくさん存在しているのです。

■DHTの産出を阻害するアボルブ(ザガーロ)

5α還元酵素という酵素のはたらきによってテストステロンはDHTに変化。アボルブ(ザガーロ)はこの5α還元酵素の働きを阻害して、DHTの量が少なくなり、その結果、前立腺の縮小や薄毛の解消といった効果が現れるのです。

1-3.アボルブ(ザガーロ)がプロペシア(フィナステリド)より効く理由とは

「DHTをつくりだす5α-還元酵素のはたらきを阻害するというはたらきはプロペシアと同じなのでは?」

「同じ作用なのに、どうしてアボルブ(ザガーロ)の方が効くんだろう?」

これまでにクリニックでAGAの治療を受けたことのある方はこんな疑問を持つかもしれませんね。アボルブ(ザガーロ)とプロペシアにはどんな違いがあるのでしょうか。

■5α還元酵素は2種類あった!

5α還元酵素には1型と2型の2種類があります。プロペシアの有効成分であるフィナステリドはこのうち、2型のみに作用する成分。このため、1型が原因で起きている男性型薄毛の治療には効果が現れませんでした。
これに対し、アボルブ(ザガーロ)の有効成分デュタステリドは1型と2型の両方のはたらきを阻害。プロペシアで効果がなかったのに、アボルブ(ザガーロ)で薄毛が改善する……という理由はこの違いにあるのです。

■アボルブ(ザガーロ)はプロペシアよりも強力に5α還元酵素を抑える!

5α還元酵素についてもう少し詳しく説明しましょう。1型は皮脂腺に多く存在する酵素。ベタつくニキビ肌やその跡がクレーター状になるほど重症なニキビが男性に多いのは、1型の5α還元酵素の影響であると考えることができます。

これに対し、2型は体毛やヒゲなどを作り出す毛乳頭部分に多く存在する性質があります。男性型薄毛の治療を考えたとき、より重視すべきなのは2型。アボルブ(ザガーロ)はプロペシアよりも、この2型のはたらきを強力に抑えてくれるのです。とはいえ、量は少ないものの1型も毛乳頭に存在していることは確か。したがって、1型、2型両方の5α還元酵素のはたらきを抑えるアボルブ(ザガーロ)はより、薄毛治療の効果が高いと考えることができるのです。

1-4.アボルブ(ザガーロ)はすぐに効果が出る?

アボルブ(ザガーロ)は服用後、6カ月程度で効果が現れます。他の治療薬と比べると、効果を感じられるまで時間がかかりますが、ミノキシジルなどの外用薬も3~6カ月程度は使用しないと効果が実感できませんよね。気長に治療を続けるつもりで焦らずに続けるようにしたいもの。

ただし、症状を根本から治療して治す作用はないため、服用をやめると症状も元に戻ってしまいます。こちらもフィナステリドと同じですね。男性型薄毛の治療の多くは途中でやめてしまうと、効果もなくなってしまうということを理解しておきましょう。

1-5.アボルブ(ザガーロ)の副作用や注意点

これまでの治療薬よりも薄毛改善効果が高いアボルブ(ザガーロ)。期待が高まりますが、医薬品だけにアボルブ(ザガーロ)には以下のような副作用があります。服用後、体調に変化があった場合、速やかに服用をストップして医師に相談するようにしてください。

  • ・肝機能障害による全身倦怠感(だるさ、食欲不振、はきけ、発熱など)
  • ・性的機能の低下
  • 性欲減退や勃起力の低下など
  • ・ホルモンバランスの変化による症状
  • 乳房が大きくなる、乳首が腫れたり傷んだりする
  • ・抑うつ症状

わずかではあるものの、重い肝機能障害の症状として、白目や肌が黄色くなる黄疸が出たり、尿がウーロン茶のような色になったりする可能性があります。したがって、肝臓疾患の治療をしている方はアボルブ(ザガーロ)の服用はできません。また、服用中は献血ができないので注意してください。

■女性には効果がない

アボルブ(ザガーロ)はソフトカプセルタイプで、成分が経皮吸収されることがあります。男性ホルモンに作用する薬であるため女性には効果がありません。妊娠中の女性が触れることで胎児の健康に影響を与えることもありますので、女性やお子さんはアボルブ(ザガーロ)に触れないようにしてください。

■内服中は避妊するべき?

皮膚や精液を介しての吸収程度で男性胎児の外性器の異常や妊娠異常を起こすことは考えにくいと言われており 基本的には動物実験等でもほとんど問題ないことが知られています。しかしながら念のため、子作り期間中3カ月前から休薬することを製造元であるグラクソスミスクライン社は勧めています。それまでの間はコンドームによる避妊を行うのが無難でしょう。

1-6.アボルブ(ザガーロ)にジェネリックはある?

 

アボルブ(ザガーロ)にジェネリックはある

アボルブ(ザガーロ)のジェネリック医薬品はありません。医薬品の特許期間は承認から20年。2009年に日本の厚生労働省が認可したアボルブ(ザガーロ)のジェネリックが登場するにはまだまだ時間がかかります。

にもかかわらず、「アボルブ(ザガーロ)のジェネリック」という医薬品を個人輸入サイトなどで見かけます。これは医薬品に関する法律が異なるインドの製薬会社が製造しているものです。配合されている有効成分がデュタステリド0.5mgということで、アボルブ(ザガーロ)と同じ効果が期待できるとされていますが、製造、製剤に関する技術までまったく同じというわけにはいきません。

具体的に説明すると、たとえば薬剤のタイプ。錠剤か粉末か、ソフトカプセルかといった形状やコーティング部分が異なれば、有効成分の吸収されるスピードに差が出て、効果や副作用の現れかたが違ってくる可能性もあるのです。アボルブ(ザガーロ)のいわゆる「ジェネリック」を製造しているインドの製薬会社のなかには日本の製薬会社の傘下に入っている信頼できる企業も少なくないのですが、薬の質としてどうなのか?という点はまた別の問題です。想定されている効果が期待できないことも多いので、こうした薬は服用しないほうがいいでしょう。

1-7.アボルブ(ザガーロ)が出荷停止になった理由

2015年にアボルブ(ザガーロ)が一時、出荷停止になる騒ぎが起きました。アボルブ(ザガーロ)の製造を委託されたフランスのキャタレント社において、一製品のソフトジェルカプセルが他の製品に混入した事象が発生。これを受けたANSM(フランス国立医薬品・医療用品安全管理機構)が出荷と製造を一時、停止する指示を出したのです。

一時は軽症の患者さんに服用を中断してもらう、他の薬で対処してもらうなどして対応していましたが、アボルブ(ザガーロ)は代替薬が存在しないことからGSK社ではANSMに対し、日本におけるアボルブ(ザガーロ)の重要性を踏まえて出荷要請を行い、2016年3月には日本向けアボルブ(ザガーロ)の製造が再開されています。

現在では、同工場における再発防止策や製造・品質管理面の改善が図られており、問題は解決していますので、安心してくださいね。

2.アボルブ(ザガーロ)の購入方法

アボルブ(ザガーロ)の購入方法

男性型薄毛の治療に画期的な効果をもたらすとして、期待が高まるアボルブ(ザガーロ)。ではアボルブ(ザガーロ)はどのようにして入手すればよいのでしょうか。

2-1.アボルブ(ザガーロ)は通販で買える?

アボルブ(ザガーロ)は医薬品であるため、医師の診察を受けて処方してもらう必要があります。そのため通販では購入できません。ただし、個人輸入サイトのなかには海外向けに作られたGSK社のアボダードという同じ成分の薬を購入できるところがあります。価格は1カ月分4,980円程度。クリニックで処方されるアボルブ(ザガーロ)に比べると安価になっています。

ジェネリック扱いされているインドの製薬会社が製造しているデュタステリド0.5mgの製品が100錠6,000円程度で販売されているところもあります。3倍以上の量で価格がアボルブ1カ月分より安いという驚きの価格になっていますが、治療薬としてまったく同じ効果が期待できるとは限りません。

個人輸入のサイトで購入した医薬品はすべて自己責任で使用することになっています。万が一、副作用が出ても副作用救済制度の対象にはならず、給付金等は受けることができません。また、個人輸入サイトで売られている医薬品の中には偽薬も多く、まったく効果のないものや健康被害が出る可能性のあるものまであります。安心して男性型薄毛の治療を受けたいという方はクリニックで処方してもらうことをおすすめします。

2-2.アボルブ(ザガーロ)をクリニックで処方してもらう

アボルブ(ザガーロ)をクリニックで処方してもらう

アボルブ(ザガーロ)は医師の診察を受けてクリニックで処方してもらうのがベストです。クリニックであれば、事前に遺伝子検査を受けることで、フィナステリドやアボルブ(ザガーロ)といった5α還元酵素阻害薬の効果が出るか出ないか、また、男性型脱毛症がどのくらい進行しているかが分かります。

この検査を受けることで、アボルブ(ザガーロ)やフィナステリドの効果があるかだけではなく、ミノキシジルやパントガールなどの他の治療薬やサプリメントとの併用など、より効果的な治療方法についての提案を受けることもできます。アボルブ(ザガーロ)は安い薬とは言えませんので、最初に効果が出るかでないか確認しておくことで無駄な出費を抑えることにつながります。

■アボルブ(ザガーロ)をクリニックで処方してもらうといくらかかる?

アボルブ(ザガーロ)の価格は1カ月分で8,500~9,500円程度。これに初診料や再診料、処方料などが追加されるところもあります。若干、アボルブ(ザガーロ)の価格は高いもののこうした診察にかかる料金が0で済むクリニックもあります。
アボルブ(ザガーロ)は服用をやめてしまうと、効果もなくなってしまい、薄毛の進行が再発します。治療は長期戦になることを踏まえて、なるべく毎月の負担が少なくなるクリニックを探すとよいでしょう。

2-3.アボルブ(ザガーロ)は保険適用?

男性型薄毛の治療は自由診療となり、保険は適用されません。治療費全額を自分で負担することになります。服用中に体調の変化が現れたら、速やかに飲むのを中断すること。また、長期的にアボルブ(ザガーロ)を服用することを決めたら、年に2回は血液検査を受けて肝機能に影響がないか、調べるようにしましょう。

3.まとめ

男性型薄毛の元凶となる5α還元酵素を効率よく阻害し、薄毛の症状を改善してくれるアボルブ(ザガーロ)。これまでの育毛剤やサプリメントなどで発毛効果が感じられなかった方は一度、カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

Emiri

Emiri

美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。

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監修:

依田拓之 医師

よだ形成外科クリニック

東邦大学医学部卒業。形成外科医として経験を積み、美容外科院長を歴任。宮城県仙台市に2010年よだ形成外科クリニックを開業。2020年で開院10周年。
日本形成外科学会認定専門医の資格を持ち、現在では少なくなった総合的な美容医療を地域に提供しています。目元、鼻などの美容外科治療はもちろん、エイジングケア、美肌、男性・女性のAGA、男性診療まで幅広いメニューは安心してかかりつけ医にできそうです。

東邦大学医学部卒
東京警察病院形成外科入局
美容外科クリニック院長
よだ形成外科クリニック院長

この記事の監修ドクターが所属するクリニック

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