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美容医療業界には様々なレーザー治療があります。その数は膨大で、一般の方では、そもそも治療名なのか機械名なのかさえもわからないといった場合が多くあるのではないでしょうか?

肌の悩みで調べてみても多くの治療法や機械の種類から、どれを選択したら良いのか迷ってしまいますよね。
そのような中で、毛穴の開きや肌の質感、ニキビ跡、特にクレーターが気になっている方はフラクショナルレーザーという言葉を聞いたことはないでしょうか? CO2フラクショナル、パールフラクショナル、フラクセルなど……さまざまな単語を目にすると思います。

今回はこのフラクショナルレーザーについて、機器、施術の概要から気になるダウンタイム、痛みにフォーカスして、解説していきます。

フラクショナルレーザーってどんなレーザー?

微細なレーザー光(マイクロビーム)を1cm2あたり数百から数千発照射することにより、正常な皮膚を多く残しながら、点状(立体的には円柱状)に真皮深くにまで蒸散または凝固を行い、その後の上皮化や真皮内の創傷治癒機能によって表皮および真皮の再構築(リモデリング)を促す治療方法のことです。簡単にいうと剣山のような形状でレーザーが照射されているということです。

フラクショナルレーザーの種類によっては、照射後に皮膚にドット状の跡が見られます。皮膚に直接的なダメージを与えて、真皮のコラーゲン組織の新生やタイトニングによりさまざまな肌の効果が現れます。

フラクショナルレーザーの種類

現在フラクショナルレーザーとして1,440、1,540、1,550、1,927、2,790、2,940、10,600nmなどの波長のレーザー機器が使用されています。
使用するレーザーの波長の、水やタンパク質への吸収の違いから各マイクロビームによる生体反応(反応の程度や深達度)に違いがあります。

フラクショナルレーザーは大きく二つの種類に区別されます。
一つは組織蒸散を伴わない凝固層を形成するのみの反応、non-ablative(非蒸散型)。

もう一つは組織蒸散を伴い蒸散層と凝固層とを形成する反応、ablative(蒸散型)です。

非蒸散型フラクショナルレーザーは1,440、1,540、1,550、1,927nmなどの波長を用いており、蒸散型フラクショナルレーザーは2,790、2,940、10,060nmを用いている場合が多いです。

最近ではピコレーザーによるピコフラクショナルも登場しており、波長は755や1,064nmで光音響作用による照射も行われています。ピコフラクショナルは、基本的には非蒸散型のフラクショナルレーザーではありますが、機器によっては出力を上げることで蒸散型で照射可能なものもあります。

フラクショナルレーザーによる治療では、レーザーの波長、照射時間、照射出力(エネルギー密度)、マイクロビーム径、マイクロビーム密度の設定次第で、レーザーの深達度や皮膚の蒸散・凝固層の厚さが異なってくるため、設定によって肌に対する効果が変わって来ます。

一般的には出力を強くして組織の損傷が強いほど新しい皮膚への入れ替わりの効果は高くなりますが、非照射部(正常な皮膚の部分)が少なくなるため、炎症後色素沈着や瘢痕形成などの合併症のリスクは高くなります。非蒸散型よりも、蒸散型の方がこの傾向にあります。

フラクショナルレーザーを使用する治療

  • ・肌のキメを整える
  • ・肌を滑らかにする
  • ・毛穴を改善する
  • ・小ジワを改善する
  • ・ニキビ跡(特にクレーター状のもの)を改善する

主にこのような治療に使用します。

フラクショナルレーザーを照射することで、コラーゲンが造成されるため肌のハリ感やキメ、小ジワが改善されます。また、目立つ毛穴も小さくなります。

クレーターのような皮膚の凹凸が大きい場合は、先に蒸散型のフラクショナルレーザーを行い粗く整え、その後に非蒸散型のフラクショナルレーザーで細かく整えていくことで効率的にぼかし効果が得られ、滑らかな肌に近づきます。1回の治療での改善は難しいため、必ず複数回の治療が必要になります。基本的には少なくとも5回は治療を行ってもらうことが多いです。

▼医師監修のフラクショナルレーザー基本知識はこちらの記事も

ニキビ跡、傷跡の治療とフラクショナルレーザー

すっかり治った傷跡のことを医学用語では瘢痕といいます。

線状瘢痕に対する治療

外科的な処置を行うほどではない線状瘢痕に対しては、線状の瘢痕内で蒸散型フラクショナルレーザーを行うことで、瘢痕幅を狭くします。線状瘢痕が目立たなくなった時点で正常な皮膚を含めて、非蒸散型フラクショナルレーザーを行うと瘢痕のぼかし効果が得られやすく、綺麗に治療しやすいです。

面状瘢痕に対する治療

ざ瘡後瘢痕(ニキビ跡のこと)は、炎症性のニキビが軽快した後に生じ、皮膚の陥凹や隆起や色素沈着を伴った瘢痕のことです。従来はパンチ切除、ダームアブレージョンなどの外科的治療やケミカルピーリングなどが行われてきましたが、特に陥凹性瘢痕(クレーター)に対しては効果的な治療法がありませんでした。

フラクショナルレーザー治療の開発・登場以降、色素沈着が人種的に起こりやすい東洋人においても、ダウンタイムの少ない効果的な治療として普及するようになりました。

ざ瘡後瘢痕(ニキビ跡、クレーター)は表面的な真皮浅層までの浅い面状瘢痕が主である場合と、真皮深層まで陥凹性瘢痕が主である深いクレーターの場合があります。真皮浅層までの面状瘢痕であれば、非蒸散型 のフラクショナルレーザーから治療を始めて、満足が得られなければ蒸散型に変更します。

真皮深層までの陥凹性瘢痕が主である場合には、ざ瘡性瘢痕をアイスピック型、ローリング型、ボックスカー型の3種類に分類して、それぞれに対する照射方式や出力、深達等を適切に選択して治療を行います。

フラクショナルレーザーのリスク

フラクショナルレーザーのリスクは

  • ・赤みや腫れ
  • ・色素沈着
  • ・シミが濃くなる、肝斑が悪化する
  • ・火傷
  • ・ニキビが悪化する

などが挙げられます。

赤み・腫れ

照射の出力によって赤みや腫れの出方は変わります。しかし、赤みは必ず出るものと考えておきましょう。照射時の出力によって、ほんのりとした赤みだったり、顔全体が真っ赤になって腫れてしまうこともあります。

蒸散型のフラクショナルレーザーの場合、照射した側から赤みが出てきます。最終的には出血まで伴うこともあります。非蒸散型の場合、人によっては照射直後はあまり赤みを感じないこともありますが、数分経ってから顔が真っ赤になっていきます。

少しキツめの治療を行いたいのであれば1週間程度は顔の赤みが続くと考えておいた方が良いです。個人差があるため、皮膚の状態やこれまでの治療歴、その時の施術の出力によって1週間以上赤みが続いたという方もいます。

色素沈着

レーザーの出力によって変わりますが、強く当てた場合、炎症による色素沈着が起こってしまう可能性があります。これはクレーターなどの瘢痕治療時に頻度が高くなります。色素沈着が起こってしまったとしても、基本的には肌のターンオーバーによって自然に薄くなっていきますが、稀に強く色素沈着が残ってしまうパターンもあります。

なるべく色素沈着を起こさないように、またなってしまったとしてもなるべく早く改善するためには普段からの保湿やUVケアをしっかり行うことが必要です。また炎症を抑える内服も行っておくとより安心して治療を受けることができます。

色素沈着が起こってしまった場合は施術の間隔を十分に取り、肌の状態が改善してから次の施術を行うことが安心です。

シミや肝斑の悪化

肝斑は紫外線の曝露や物理刺激、ホルモンバランスが複雑に絡み合って発症すると言われているシミの一種です。女性の割合が多く、左右対称で頬にベタッとしたように現れるシミが特徴的です。

肝斑は普段の洗顔やスキンケアの摩擦でも悪化してしまうデリケートなシミです。ですから、フラクショナルレーザーのように強い炎症を起こす施術では濃くなってしまう場合があります。元々肝斑があるけれど、どうしてもフラクショナルレーザーによる治療もしたい場合は、肝斑に対する内服を継続し、様子を見ながら施術を行っていく必要があります。肝斑が悪化する前提の心構えが必要です。

火傷

レーザーを当てるとどうしても火傷のリスクはつきものになります。どのレーザーを当てても同じです。特に非蒸散型は出力が強くなくとも、照射時に照射口が肌から離れたり、擦れたりすることで火傷してしまう場合もあります。

ニキビが悪化するリスク

レーザーの照射後は熱作用の影響で、一時的にニキビが悪化してしまうことがあります。しかし治療を継続することで皮脂分泌や炎症が抑制され、最終的にはニキビができにくくなり改善する可能性が高いです。治療途中のニキビの悪化にはめげずに、しばらくは継続しましょう。

フラクショナルレーザーの治療中の痛み

フラクショナルレーザーの痛みは蒸散型と非蒸散型で感覚が少し変わります。

蒸散型のフラクショナルレーザーの場合

弱い出力ですとチリチリとした刺さるような痛みが強いです。強く照射すると出血を起こすほどなので、刺さるような痛みがどんどん強くなります。例えるなら剣山で顔中を刺されているような感覚です。

照射後は強いヒリヒリ感もあります。このひりつきは砂利に顔を擦り付けられたような感覚で、顔全体が燃えるような熱さを感じます。
筆者は出血するほどの出力では照射した経験がないため、もっと強く照射したら我慢できるかなぁという感想です。

非蒸散型フラクショナルレーザーの場合

熱が入ってくる感覚が強いため照射中はとにかく熱いです。そして照射が進んでいくと熱くて痛いという感覚になります。筆者は鉄板に顔を押し付けられているのかと思いました。照射が進むにつれて熱さや痛みの強さが強くなるため、途中から早く施術が終わってほしいと思いました。照射後のひりつきは蒸散型と同じく顔全体が燃えるように熱いです。

上記は筆者の個人的な主観が入った痛みの感覚ですが、多くの方が似たようなことをおっしゃいます。痛みを伴う治療のため表面麻酔は必ず行うのですが、それでもこのような感覚になります。

フラクショナルレーザーのダウンタイム

フラクショナルレーザーは蒸散型と非蒸散型でもやや経過が違ったりしますが、おおよそは照射後に赤みや点状出血、もしくは(蒸散型の場合)出血があり、おおよそ1週間程度で赤みがひきます。

治癒の過程でカサブタや皮膚のざらつきも出ますが、1週間程度でおおよそ落ち着きます。皮膚がざらついている間は化粧ノリが悪いのが難点です。そのためダウンタイムの間は、日焼け止めとパウダーの簡単なメイクで過ごす方が多いです。

以下、比較的出力は抑えめでCO2フラクショナルレーザーを照射した際の筆者のダウンタイムの経過をご紹介します。

フラクショナルレーザーの実際のダウンタイム経過の体験談

施術当日

照射後は照射した部位が全体的に赤くなります。また数時間ヒリヒリ感が続きますが、うちわであおいで風を当てることで少し楽になります。時間の経過でひりつきは改善していき、1日経つ頃には気にならなくなっていきます。

翌日

相変わらず顔全体に赤みはありますが、ひりつきは落ち着いてきているため気にならなくなっています。朝の洗顔で水が当たると少しひりつきを感じますが、そこまで辛い感覚ではありません。

化粧水をつけるのも少しピリピリしていますが、クリームまで塗ると落ち着きます。メイクができないわけではないのですが、あまりメイクしたい気分にはならないです。しかし顔が赤いのもやはり気になるので、薄くファンデーションを載せてみますが赤みが少し透けるのは致し方がない状態です。

3〜5日目

赤みは落ち着いて来る頃ですが、カサブタができるため肌がザラザラとします。化粧ノリが一番悪い時期で何を塗ってもよれてしまいます。肌の乾燥を感じるようなパリパリ感があり、人によってはこの時期に少し皮むけもします。筆者は肌のツッパリを感じ、とにかく保湿を心がけていました。日に日にカサブタが自然に剥がれていき、少しずつ楽になっていきました。

7日目以降

カサブタはほとんどなくなり、通常の肌状態に戻ります。完全に肌が回復すると、治療前と比較して肌のツルッと感が実感でき、化粧ノリもよくなった感じがしました。むき卵のようなツルツル肌が得られ、1回の照射でもある程度満足感がありました。劇的な変化ではありませんが、肌触りやキメは少しよくなったように感じられます。さらにしっかり肌質を改善したい場合は数回施術を行うと良いと思いました。

※この経験談はあくまでも比較的出力はおさえめで照射した場合の話ですので、出力を強めて照射すると、このダウンタイム経過日数が延びていくと考えてください。

フラクショナルレーザーの施術間隔

基本的にはおよそ1〜2カ月間隔で照射していきます。前回照射時のダウンタイムが思ったよりも長引いたり、肌の色素沈着の状況によっては一旦照射をお休みし、照射の間隔をさらに延ばすこともあります。

フラクショナルレーザーの治療回数

瘢痕に対するフラクショナルレーザー治療は、複数回の治療を必要とします。顔の治療では、おおむね5回前後の施術によって、周辺皮膚と瘢痕部の表面のギャップの改善や瘢痕表面部の平坦化の効果が得られます。また、皮膚表面の若干の凹凸による光の乱反射が抑制されることにより、いわゆる「てかり」が見えづらくなり、また質感の改善が得られます。

おわりに

フラクショナルレーザーは肌治療にしては長めのダウンタイムがありますが、ダウンタイムさえ終われば肌が滑らかになり受けてよかったなと思えます。また、なかなか改善が難しいクレーター状のニキビ跡にも効果がある施術であり、お悩みの方は一度クリニックにご相談に行かれると良いかもしれません。

【記事の執筆・レビューに使用した参考文献等】

記事の正確性等の確保方法及び参考文献の取り扱いについては、Call to Beautyの編集プロセスをご覧ください。

『あたらしい美容皮膚科学』(2022南山堂)
日本美容皮膚科学会 監修
クイーンズスクエアメディカルセンター皮膚科 部長 尾見徳弥 編
みやた形成外科・皮ふクリニック 院長 宮田成章 編
静岡社会健康医学大学院大学 学長・理事長 宮地良樹 編
大阪医科薬科大学 教授 森脇真一 編

『美容皮膚科ガイドブック第2版』(2017中外医学社)
川田暁 編著

『Derma.No.321イチから始める美容皮膚科マニュアル』(2022全日本病院出版会)
古村南夫 編

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

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YuNi

都内で働くフリーランス美容ナース。美容皮膚科、脱毛専門、痩身クリニックにて勤務経験あり。クリニックの立ち上げに関わり、師長を務めていたことも。現在はいくつかの美容皮膚科にて勤務しており美容皮膚施術とアートメイクを担当している。Twitterでは同名義で4000人以上のフォロワーがおり、正しい美容医療の知識の普及に努めている。飛鳥塾という講習会にて講師を務め、美容看護師の知識や技術の向上に尽力している。

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YuNi看護師

都内で働くフリーランス美容ナース。美容皮膚科、脱毛専門、痩身クリニックにて勤務経験あり。クリニックの立ち上げに関わり、師長を務めていたことも。現在はいくつかの美容皮膚科にて勤務しており美容皮膚施術とアートメイクを担当している。

X(旧Twitter)では同名義で4,000人以上のフォロワーがおり、正しい美容医療の知識の普及に努めている。飛鳥塾という講習会にて講師を務め、美容看護師の知識や技術の向上に尽力している。

大学病院勤務(血液内科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科勤務)
大手美容皮膚科
個人美容皮膚科
大手脱毛専門クリニック
脱毛専門クリニック
脱毛専門クリニック立ち上げ協力
個人美容皮膚科(保険診療込み)
バイト勤務含め10院以上のクリニック勤務経験あり