美肌効果のあるレーザー治療のなかでも人気が高いのがフラクショナルレーザーです。美容皮膚科、美容外科で行われるレーザーの治療はいくつか種類がありますが、フラクショナルレーザーにはどのような特徴があるのでしょうか。ここではフラクショナルレーザーの基本的な知識から最新の施術情報まで詳しくお伝えしていきます。

【監修医師からのワンポイント】

フラクショナルレーザーはレーザー治療の中では、ほかの治療に比べて少しダウンタイムがありますが、その分効果も実感しやすいです。ダウンタイムが気になる方は、まずはノンアブレイティブのレーザーからはじめるのがいいです。 ニキビ跡や毛穴でお悩みのかたには​是非おすすめです。

目次

1.フラクショナルレーザーの基礎知識

1-1.フラクショナルレーザーとは

Fractional(フラクショナル)とは小部分の、断片的な、またはわずかなという意味。フラクショナルレーザーはその名の通り点状に少しずつレーザーを照射することによって肌へのダメージを最小限に抑えながら、美肌効果を得られる治療方法です。単純にレーザーの照射方法を点状にしただけではなく、より肌の深い部分にまでレーザーが届くようになっているのも特徴です。

レーザーで肌にダメージを与えて、肌が自らダメージを回復するときの作用(創傷治癒効果と言います)によってコラーゲンやエラスチンなどの成分が作られやすくなり、肌がキレイになるという原理は他のレーザーと変わりません。

通常のレーザーは肌に対して面で照射している分、肌へのダメージが大きくなります。そのため冷却しながら照射を行わなければならなかったり、高い出力パワーでの施術ができなかったりするのです。

フラクショナルレーザーを当てるとちょうど、剣山で肌を押したように点々のあとがつきます。レーザーを当てた部分と当てていない部分が混在することで、肌の回復が早く、かつ部分的に照射するためより強いレーザーを当てることができ、その分、高い効果が得られることになります。

1-2.フラクショナルレーザーの効果

フラクショナルレーザーの効果

フラクショナルレーザーはそのタイプによっていろいろな効果があります。

■傷跡やニキビ跡、開いた毛穴

肌の内側からコラーゲンやエラスチンが再生されることによって、肌が内側からふっくらします。このことで穴が開いたようになったニキビ跡や毛穴が目立たなくなります。また、傷跡を目立たなくする効果も。男性の方が施術を受けることも多いようです。

深いニキビ跡やクレーター状になったニキビ跡などの治療にフラクショナルレーザーは用いられています。
フラクショナルレーザーのレーザー光は、たくさんのごく小さな光を表皮の奥まで届けます(穴を開けます)。これによりコラーゲンの再構築、皮膚の収縮による傷跡の凹の押し上げを促し、皮膚の新陳代謝を加速させるため、傷跡やクレーターの治療にも効果的です。

■しわやたるみの改善、タイトニングといったアンチエイジング効果

肌の生まれ変わりを促すことで、新しい健康な肌が手に入ります。傷跡やニキビ跡の治療に加え、上記の説明にもあったように、レーザー照射により、コラーゲンの生成が活性化し、リフトアップ・引き締め効果が現れます。

創傷治癒のプロセスで肌が引き締まれば、小顔になるというメリットも。加齢とともにフェイスラインが緩んで顔が大きくなってきたように感じることがありますが、フラクショナルレーザーはそんな悩みにも応えてくれます。

■毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)

二の腕などにある毛穴のブツブツを毛孔性苔癬と呼んでいます。フラクショナルレーザーは肌の深部にレーザーを照射することで、肌の生まれ変わりを促し、症状を改善してくれます。従来、毛孔性苔癬の治療に用いられていたダーマローラーよりも痛みやダメージの少ないフラクショナルレーザーを勧めているクリニックもあります。

毛孔性苔癬は、皮膚疾患ではなく体質という見解もあります。二の腕のブツブツはケミカルピーリングや外用薬では効果が薄く、フラクショナルレーザーのような内面から肌を入れ替える治療が適応になる場合があります。

1-3.フラクショナルレーザーの種類

フラクショナルレーザーには大きく分けて2つの種類があり、それぞれ適応する肌トラブルも若干異なります。

・近赤外線領域の波長を用いたnon ablative(ノンアブレイティブ)

・皮膚を削り取るような作用のあるablative(アブレイティブ)

皮膚を削り取ると言うと怖いイメージがありますが、創傷治癒の段階で新しく健康な肌が再生されるので、安心してくださいね。アブレイティブタイプはダウンタイムも若干長くなる分、効果は高め。

深いニキビ跡や傷跡にはアブレイティブタイプを、肌質改善や毛穴縮小にはノンアブレイティブタイプを選ぶなど、肌トラブルや、どの程度までダウンタイムを受け入れられるかによって複数種のレーザーのなかから最適なものを選択してもらい受けられるクリニックもあります。

1-4.1回でも効果があるの?

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フラクショナルレーザーは1回でも効果が実感できると言われています。ただし、点状にレーザーを当てている分、照射されていない部分が残っていることになるので、複数回施術を受けて肌にまんべんなく照射するのがベストです。

ただし、ダウンタイムは短いが、効果も比較的弱いノンアブレイティブタイプは1回ではあまり変化を感じられないこともあるので、より長く複数回の治療が必要で、強いほうのアブレイティブタイプは2カ月間隔で、2〜3回の治療を推奨されている場合があります。

1-5.フラクショナルレーザーのダウンタイムや痛み

ダウンタイムが短いと言われているフラクショナルレーザーですが、ダウンタイムは3日程度。照射した部分がかさぶたになって落ちるまでは2週間程度かかるようです。また、ノンアブレイティブかアブレイティブであるか、レーザーの種類によって若干ダウンタイムの長さは変わってきます。
またフラクショナルレーザーの中でも強力な機器であるエコツーの場合は、強力で、効果が高い分ダウンタイムが長くなります。

1-6.デメリットや副作用は?

続いてフラクショナルレーザーで起こり得るデメリットや副作用について考えてみましょう。

■色素沈着が起こる

他のレーザー治療と同様、フラクショナルレーザーでも照射レベルや肌質によって色素沈着やシミが残ることがあります。特に治療後、紫外線を浴びたり、刺激の強い化粧品を使ったりすると色素沈着が起きやすいようです。施術後はマスクや帽子をかぶるなどして徹底的に紫外線を避け、刺激の少ない保湿剤を使用するようにしましょう。

■効果が実感できない

副作用とは異なりますが、フラクショナルレーザーを受けても効果が感じられないという人もいます。クレーター状になったような深いニキビ跡では治療に時間がかかるため、施術回数が少ないうちは「変化がない」と感じる人もいます。また、ダウンタイムや赤みを恐れるあまり、照射パワーを低くしているというケースも考えられます。

1-7.アトピーでも受けられる?

アトピー性皮膚炎だけれど、毛穴の開きが気になる……。そんな場合、フラクショナルレーザーの治療を受けることはできるのでしょうか。アトピーの症状がどのくらいなのかによりますが、レーザーの治療後は肌が乾燥するもの。アトピー肌にとって肌の乾燥は大敵なので、避けた方が賢明でしょう。肌の状態や症状によっては施術を受けられるところもあるようですが、慎重になるようにしてくださいね。

2.フラクショナルレーザーのタイプ

フラクショナルレーザー施術の現状

ここからはフラクショナルレーザーの機種や費用についてお話していきます。

フラクショナルレーザーはクリニックによって導入されている機種が異なります。また、複数の機種を導入して肌の状態にあったものを選べるところも。ここで一般的な機種を3つ紹介しましょう。

■炭酸ガスレーザー(Co2レーザー) 機種名CO2RE(コア)、eCO2(エコツー)など

現在主流となっているのは炭酸ガスレーザーと呼ばれるフラクショナルレーザーです。出力を上げると、効果も期待できる反面、ダウンタイムが長くなるデメリットもあります。

■スターラックス1540

ニキビ跡や傷跡、水疱瘡の後、リストカットや根性焼きなどの傷をぼかして気にならない状態にしたいという方に適したフラクショナルレーザー。ノンアブレイティブタイプなので術後の赤みは少なく、ダウンタイムも短いのが特徴。フラクショナルレーザーのなかではパワーが低いので、ダウンタイムが不安という方にお勧め。

■pixel2940

韓国で評価を得たフラクショナルレーザー。肌の表面を浅く削り取るアブレイティブタイプです。術後5日間程度は色素沈着のような状態になりますが、時間がたつと肌がツルツルに。

3.まとめ

ニキビ跡や傷跡などの気になる肌トラブルやアンチエイジングまで幅広い美肌効果をもたらしてくれるフラクショナルレーザー。高い効果を得るためにはそれなりのダウンタイムを覚悟する必要があるとも言えます。フラクショナルレーザーは費用とダウンタイム、赤みの強さと「どの程度まで効果を期待するか」のバランスが大切。分からないことがあれば、カウンセリングで納得のいくまで質問しましょう。また、間違いなく医師が施術を行ってくれるところを選んでくださいね。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込です。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

Emiri

Emiri

美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。

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監修:

岩﨑理恵 医師

ヴェルトラクリニック

日本形成外科学会専門医・指導医、日本レーザー医学会専門医、日本形成外科学会レーザー指導医、日本形成外科学会皮膚腫瘍外科指導医。富山大学医学部卒業。形成外科医として20年にわたり大阪市立大学医学部附属病院や総合病院で勤務し、レーザー治療、乳癌切除後の乳房再建、眼瞼下垂などの眼瞼形成など幅広い疾患の治療に従事。特に目元の治療に力を入れる。
好きな施術は、眼瞼手術、注入、糸治療。

2003年 富山大学医学部 卒業
2003年 大阪市立大学医学部附属病院 形成外科
2006年 八尾徳洲会総合病院 形成外科
2009年 石切生喜病院 形成外科
2010年 大阪市立大学医学部附属病院 形成外科
2018年 多根総合病院 形成外科
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