みなさん、眼瞼下垂(がんけんかすい)って、聞いたことありますか?
時々、目の開きが悪く、眠そうな目をした人を見かけます。でも、本当に眠たいってわけではない人も多数います。この眠そうな目に見えてしまう理由が、眼瞼下垂。まぶたが垂れ、目があけにくくなるという症状なんです。
今回は眼瞼下垂の施術効果、失敗例などをまとめています。

目次

  • 1.眼瞼下垂とは
  • 1-1.眼瞼下垂ってどんな症状?
  • 1-2.眼瞼下垂の手術が必要なケース
  • 1-3.眼瞼下垂の目だけではなくこんなところにも負担が……
  • 1-4.ちょっとしたクセや習慣が眼瞼下垂を招く?
  • 2.眼瞼下垂の手術とは
  • 2-1.眼瞼下垂術は、切らない方法もある!
  • 2-2.眼瞼下垂手術のダウンタイムと所要時間
  • 2-3.保険が適用される手術と美容外科での手術の違い
  • 2-4.眼瞼下垂の失敗例について
  • 3.眼瞼下垂術は、目元の印象がぐっと変わる!

1.眼瞼下垂とは

1-1.眼瞼下垂ってどんな症状?

眠そうな表情とひとことで言っても、その原因はさまざま。例えばまぶたの脂肪が多く腫れぼったい目の場合も目がしっかり開いていないような印象を受けますが、これは眼瞼下垂ではありません。

鏡を見てチェックしてみましょう。自然な状態で目を開いたとき、皆さんの目の黒目部分はどのくらい見えていますか? 黒目部分の3分の2くらいが見えている状態が一番、美しい状態だと言われています。眼瞼下垂が起こると見えている黒目部分が3分の2以下、あるいは半分程度になってしまうことも。まぶたのふちが瞳孔にかかっている場合も眼瞼下垂が起きている可能性が大です。

眼瞼下垂イコール目が半開きになったような状態を想像しますが、実はこれはかなり進行した症状。初期段階では以下のような症状がみられます。いくつか当てはまる、あるいは以下の症状が続いているなどの場合は眼科または形成外科の診察を受けてみることをお勧めします。

  • ・黒目の見えている部分が少なくなる。ただし、二重の場合、初期の段階では目が大きく見えることも
  • ・下まぶたに力が入り、涙袋ができる
  • ・二重のラインが崩れてくる
  • ・おでこにしわが寄る
  • ・眉毛が上がってくる
  • ・上まぶたがへこんだようになる
  • ・頭痛や肩こりが起こりやすくなる
  • ・睡眠障害が起こる

先天性眼瞼下垂とは?

眼瞼下垂の多くは年齢とともにまぶたの筋肉が衰えるなどして症状が出ますが、生まれつき眼瞼下垂と診断される「先天性眼瞼下垂」という症状もあります。これは生まれつき、まぶたを開ける筋肉の動きが悪かったり、筋肉そのものが欠損していたりすることで起こる病気です。

この先天性眼瞼下垂が子供の頃に見つかると手術を勧められることが多くなっています。ただ医師に指摘されることもありますが、気がつかずに成長することも少なくありません。片目だけに起こることもあり、その場合、眼瞼下垂が起きているほうだけ一重ということも。お子さんのおでこに何本もシワが寄っている、目が大きく開いていないように見えるなどの場合も眼科の診察を受けたほうが安心でしょう。

1-2.眼瞼下垂の手術が必要なケース

近年、テレビ番組で眼瞼下垂の症状がどんなものか紹介されたことがきっかけで、眼瞼下垂に対する認知度が高まっています。「私も眼瞼下垂かも?」と心配になった方もいるかもしれませんね。では、どんなときに眼瞼下垂の手術を考えるべきなのでしょうか。

  • ・目が開きにくいことで視野障害が起きている場合
  • ・小さなお子さんで視力の低下が予測される場合
  • ・肩こりや頭痛がひどく、おでこにしわがよっている

もちろん、これらの症状以外でも審美的な理由で手術を考える人もたくさんいます。「片方の目だけが一重でアイプチをしていたけれど眼瞼下垂を解消するために二重にしたら、ものが見えやすくなって、頭痛などの不快な症状もなくなった」という例もあります。

1-3.眼瞼下垂の目だけではなくこんなところにも負担が……

頭痛や肩こりは眼瞼下垂の二次的な症状として現れやすくなっています。これはまぶたの筋肉が衰えて目を開けづらくなると、私たちの体はおでこの筋肉を使ってまぶたを持ち上げようするから。するとおでこに余計な力が入り、頭痛や肩こりを引き起こすことがあるのだそう。影響は全身の症状にまで発展することもあるようです。

ただ、眼瞼下垂の手術をしたからといって、100%頭痛や肩こりなどが改善するというわけではありません。まずは眼科か形成外科で相談してみることをお勧めします。あなたの肩こり・腰痛の一因も、眼瞼下垂にあるかも?

・眼瞼下垂とうつ病の関係とは?

意外なことに眼瞼下垂は心にまで影響を及ぼすことがあるのだそう。理由はまぶたを持ち上げる2つの筋肉、眼瞼挙筋とミュラー筋の関係にあるようです。眼瞼挙筋は意識して動かすことができますが、ミュラー筋は自律神経に支配されているため、自分の意思で動かすことができません。眼瞼挙筋が衰えてまぶたが開けづらくなると、脳は交感神経を働かせて常にミュラー筋を収縮させ目を開かせようとするのです。この動きは私たちの意識でコントロールできません。このような状態が長く続くと自律神経失調症のような症状が現れ始めます。

1-4.ちょっとしたクセや習慣が眼瞼下垂を招く?

二重であるか一重や奥二重であるかどうかによっても眼瞼下垂になりやすいかどうかは変わってきます。一重や奥二重の人は二重の人よりまぶたが目にかぶさっている分、目を開けるのに力が必要になります。このため、二重の人より眼瞼下垂になりやすいのです。

その他にも花粉症やアレルギーのために目をこする、濃いアイメイクを落とすためのクレンジングで力が入る、コンタクトレンズを毎日つけ外しする……といった習慣も少しずつ眼瞼下垂を引き起こす原因になります。

目元の皮膚は顔の他の部分の肌と違って支えがなく、眼窩に浮いた状態。さらに厚さもゆで卵の薄皮くらいしかありません。眼瞼下垂だけではなく、シワやたるみ、摩擦による色素沈着も起こりやすいパーツなので「目はこすらない、触るときは超ソフトタッチで」を心がけるようにしたいものです。

2.眼瞼下垂の手術とは

眼瞼下垂の手術は具体的にどんな方法があるのか、またメリットやデメリットについても詳しくご説明します。切開する眼瞼下垂手術の方法には表側の皮膚を切開する方法と、目の裏側の結膜を切開する方法の2つがあります。結膜で切開する方法は傷口が内側になるため、見た目はキレイですが皮膚を切開する方法よりもダウンタイムが長く、手術の難易度が高いというデメリットもあります。

結膜側から切開して手術を行うというのは、どの医師でもできるわけではありません。クリニック選びには慎重になる必要がありそうですね。

2-1.眼瞼下垂術は、切らない方法もある!

切らない方法として有名なのは二重埋没法に似た埋没タッキング法という手術です。瞼の裏から糸を通して、結膜を縛る方法です。切らない方法は傷が残らず、ダウンタイムも短いため、適応となればメリットが大きい方法ですが、あと戻りがおこるなど治療方法として限界があるとも言われています。

2-2.眼瞼下垂手術のダウンタイムと所要時間

切る眼瞼下垂の手術はダウンタイムが長めのようです。切る方は術後5日程度で抜糸、1週間程度の腫れ、完全になじむまで3カ月程度という感じです。
切らない方は、強い腫れが3日程度、なじむのに7日間程度のダウンタイム期間になります。

2-3.保険が適用される手術と美容外科での手術の違い

眼瞼下垂の手術には保険が適用される場合もあります。ただし、保険適用の場合、あくまで不快な症状の緩和が目的ですから、仕上がりの美しさが二の次になることも。その結果、思うような見た目にならず、後日美容外科で再手術を希望する人が増えているのです。

これに対し、美容外科で手術を行うと見た目の美しさが重視されます。自由診療なので費用は高くなるのがデメリットですが、美容外科ならではのメリットもたくさんあります。左右の目のバランスが整う、きれいな二重になるなど見た目が美しく整い、好みの二重に仕上げてもらうことも可能です。

美容外科できれいな目元に仕上げてもらうことが心のケアにつながることも。先天性眼瞼下垂が起きているお子さんの場合、目の大きさがアンバランスなことでからかわたりすることもあります。大人の女性でも眼瞼下垂による目のアンバランスが解消されることで自分の容姿に自信を持てるようになったと感じている人もいます。

ただ、美容外科で手術を受けた場合であってもまれに「寝ているときに目が完全に閉じない」という報告もあるようです。もちろん、起きているときはきれいな状態に仕上がっていますし、自然に力を入れて閉じようとすれば閉じますが、眠っているときに手術を受けた方の目だけ半開きになっていたり、洗顔やシャンプーのときに目の中に洗顔料やシャンプーが入りやすくなったりすることもあります。その場合、目が乾燥して結膜炎やドライアイなどの症状を起こしやすくなる可能性があります。

2-4.眼瞼下垂の失敗例について

眼瞼下垂の手術が一般的になるほど、弊害として起きているのが、手術の失敗例増加です。特にテレビ、SNSなどで紹介されてから、手術を希望する人は急増。当然、手術する側にとっては儲かりますよね。そのため、多くの美容外科で手術に対応するようになり、技術的に未熟な医師が執刀するケースも増えているのだそう。「切らない手術なら簡単だから」と考えがちですが、実は眼瞼下垂は難しい手術でもあるということを忘れないようにしたいですね。術後に目の開きがあまり変わらない、目の左右差、びっくり目になるなどが報告されています。

手術後に視力が変わることがある

手術の失敗とは言えませんが、眼瞼下垂の手術を受けることで視力が変わることもあります。これは視界の広さや目のピントを合わせる機能が変化するため。大人になってから手術を受ける場合、保険適用の手術でも美容外科での手術でも起こることがあります。

とはいえ、手術を受ける前に医師から眼瞼下垂の手術を受けると視力低下や乱視が起こる可能性があると説明を受けるのが一般的です。このようなデメリットを事前にきちんと説明してくれるところが常識的なクリニックと言えます。逆にリスクやデメリットをまったく説明せずに手術を勧めるようなクリニックで手術を受けるのは避けるべきでしょう。

また40歳以降の方が眼瞼下垂の手術を受けると、視力が下がる傾向にあるようです。「目を細めると見えるようになる」という人は視野を狭くすることによってピントが合い、見やすくなっていたということ。眼瞼下垂によって視野が広がるとピントが合わなくなり見えづらくなったと感じることがあるのです。
ただし、視力の低下は術後の一時的なものである場合も少なくありません。

3.眼瞼下垂術は、目元の印象がぐっと変わる!

眼瞼下垂の手術はデメリットもありますが、眠そうに見えた目元がはっきりして若々しく見られるようになる、自分に自信が持てるようになるといったメリットもたくさんあります。眼瞼下垂の手術を受けるなら、視力低下のリスクが少ない40歳より前に受けたほうが良さそうですね。年齢が若いうちであれば、切らない手術が適応になりやすく、ダウンタイムも短くてすみます。まずはカウンセリングに行って、じっくり話を聞いてみるのも良いでしょう。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

yuki

yuki

美容医療系ライター

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監修:

依田拓之 医師

よだ形成外科クリニック

東邦大学医学部卒業。形成外科医として経験を積み、美容外科院長を歴任。宮城県仙台市に2010年よだ形成外科クリニックを開業。2020年で開院10周年。
日本形成外科学会認定専門医の資格を持ち、現在では少なくなった総合的な美容医療を地域に提供しています。目元、鼻などの美容外科治療はもちろん、エイジングケア、美肌、男性・女性のAGA、男性診療まで幅広いメニューは安心してかかりつけ医にできそうです。

東邦大学医学部卒
東京警察病院形成外科入局
美容外科クリニック院長
よだ形成外科クリニック院長