出典 http://www.sanoeyeclinic.jp/

みなさん、眼瞼下垂(がんけんかすい)って、聞いたことありますか?
時々、目の開きが悪く、眠そうな目をした人を見かけます。でも、本当に眠たいってわけではない人も多数います。この眠そうな目に見えてしまう理由が、眼瞼下垂。まぶたが垂れ、目があけにくくなるという症状なんです。
今回は眼瞼下垂の施術効果、失敗例など美容外科医の見解をまとめています。

目次

  • 1.眼瞼下垂とは
  • 1-1.眼瞼下垂ってどんな症状?
  • 1-2.そもそも、なんで眼瞼下垂になるの?
  • 1-3.眼瞼下垂の手術が必要なケース
  • 1-4.眼瞼下垂の目だけではなくこんなところにも負担が……
  • 1-5.ちょっとしたクセや習慣が眼瞼下垂を招く?
  • 2.眼瞼下垂の手術とは
  • 2-1.眼瞼下垂の施術効果、失敗例紹介の前に~眼瞼下垂術はこんな手術!
  • 2-2.眼瞼下垂術のメリット・デメリット
  • 2-3.眼瞼下垂術は、切らない方法もある!
  • 2-4.眼瞼下垂手術のダウンタイムと所要時間
  • 2-5.保険が適用される手術と美容外科での手術の違い
  • 2-6.眼瞼下垂の失敗例について
  • 3.眼瞼下垂術は、目元の印象がぐっと変わる!

1.眼瞼下垂とは

1-1.眼瞼下垂ってどんな症状?

眠そうな表情とひとことで言っても、その原因はさまざま。例えばまぶたの脂肪が多く腫れぼったい目の場合も目がしっかり開いていないような印象を受けますが、これは眼瞼下垂ではありません。

鏡を見てチェックしてみましょう。自然な状態で目を開いたとき、皆さんの目の黒目部分はどのくらい見えていますか? 黒目部分の3分の2くらいが見えている状態が一番、美しい状態だと言われています。眼瞼下垂が起こると見えている黒目部分が3分の2以下、あるいは半分程度になってしまうことも。まぶたのふちが瞳孔にかかっている場合も眼瞼下垂が起きている可能性が大です。

眼瞼下垂イコール目が半開きになったような状態を想像しますが、実はこれはかなり進行した症状。初期段階では以下のような症状がみられます。いくつか当てはまる、あるいは以下の症状が続いているなどの場合は眼科または形成外科の診察を受けてみることをお勧めします。

  • ・黒目の見えている部分が少なくなる。ただし、二重の場合、初期の段階では目が大きく見えることも
  • ・下まぶたに力が入り、涙袋ができる
  • ・二重のラインが崩れてくる
  • ・おでこにしわが寄る
  • ・眉毛が上がってくる
  • ・上まぶたがへこんだようになる
  • ・頭痛や肩こりが起こりやすくなる
  • ・睡眠障害が起こる

先天性眼瞼下垂とは?

眼瞼下垂の多くは年齢とともにまぶたの筋肉が衰えるなどして症状が出ますが、生まれつき眼瞼下垂と診断される「先天性眼瞼下垂」という症状もあります。これは生まれつき、まぶたを開ける筋肉の動きが悪かったり、筋肉そのものが欠損していたりすることで起こる病気です。

この先天性眼瞼下垂が子供の頃に見つかると手術を勧められることが多くなっています。ただ医師に指摘されることもありますが、気がつかずに成長することも少なくありません。片目だけに起こることもあり、その場合、眼瞼下垂が起きているほうだけ一重ということも。お子さんのおでこに何本もシワが寄っている、目が大きく開いていないように見えるなどの場合も眼科の診察を受けたほうが安心でしょう。

1-2.そもそも、なんで眼瞼下垂になるの?

眼瞼下垂が起こる原因を筋肉や目の構造から考えてみましょう。六本木境クリニックの境隆先生による分かりやすい解説を見つけました。

眼瞼下垂には、生まれつき下垂している「先天性眼瞼下垂」と「後天性の眼瞼下垂」があります。先天性眼瞼下垂は、生まれつき目が開きにくい状態で、左右差がある場合が多く見られます。また、「真性眼瞼下垂」「偽性眼瞼下垂」という分類もあるようです。

出典 http://www.skincare-univ.com/

後天性の眼瞼下垂は、大きく分けると大多数の「腱膜(けんまく)性眼瞼下垂」とその他の眼瞼下垂に分けられます。腱膜性眼瞼下垂は、眼瞼挙筋(がんけんきょきん)と瞼板(けんばん)の接合部分が伸びたり、ゆるんだりして、瞼板が正常に持ち上がらず、まぶたが開きづらくなっている状態です。

出典 http://www.skincare-univ.com/

眼瞼下垂_原因図解01

出典 http://www.skincare-univ.com/

腱膜性眼瞼下垂の原因としては、挙筋腱膜が薄くなったり、断裂したり、瞼板との付着部分が離れてしまうことなどが推定されています。腱膜性眼瞼下垂は、加齢やコンタクトレンズ・花粉症やアトピーなどで目をこすることにより生じるとされています。近年、ハードコンタクトによると思われる若い人の腱膜性眼瞼下垂が増えていると言われています。

後天性の眼瞼下垂には、上述の腱膜性眼瞼下垂の他、その数は少ないのですが、けがによる「外傷性眼瞼下垂」、神経の命令がまぶたの筋肉に伝わりづらくなる重症筋無力症、目を動かす筋肉に炎症が発生する甲状腺眼症(バセドウ病眼症)、まぶたに腫瘍ができ、重みで下垂する眼瞼腫瘍などがあります。

出典 http://www.skincare-univ.com/

眼瞼下垂_原因図解02

出典 http://www.skincare-univ.com/

偽性眼瞼下垂

眼瞼挙筋などに直接異常が生じる「真の眼瞼下垂」とは異なり、「偽性眼瞼下垂」と呼ばれる病態もあります。顔面神経麻痺やまぶたのけいれんが原因で発生することもありますが、圧倒的に多いのが眼瞼皮膚弛緩症(まぶたの皮膚のたるみ)です。

眼瞼挙筋などに直接異常が生じる「真の眼瞼下垂」とは異なり、「偽性眼瞼下垂」と呼ばれる病態もあります。顔面神経麻痺やまぶたのけいれんが原因で発生することもありますが、圧倒的に多いのが眼瞼皮膚弛緩症(まぶたの皮膚のたるみ)です。

出典 http://www.skincare-univ.com/

1-3.眼瞼下垂の手術が必要なケース

近年、テレビ番組で眼瞼下垂の症状がどんなものか紹介されたことがきっかけで、眼瞼下垂に対する認知度が高まっています。「私も眼瞼下垂かも?」と心配になった方もいるかもしれませんね。では、どんなときに眼瞼下垂の手術を考えるべきなのでしょうか。

  • ・目が開きにくいことで視野障害が起きている場合
  • ・小さなお子さんで視力の低下が予測される場合
  • ・肩こりや頭痛がひどく、おでこにしわがよっている

もちろん、これらの症状以外でも審美的な理由で手術を考える人もたくさんいます。「片方の目だけが一重でアイプチをしていたけれど眼瞼下垂を解消するために二重にしたら、ものが見えやすくなって、頭痛などの不快な症状もなくなった」という例もあります。

1-4.眼瞼下垂の目だけではなくこんなところにも負担が……

頭痛や肩こりは眼瞼下垂の二次的な症状として現れやすくなっています。これはまぶたの筋肉が衰えて目を開けづらくなると、私たちの体はおでこの筋肉を使ってまぶたを持ち上げようするから。するとおでこに余計な力が入り、頭痛や肩こりを引き起こすことがあるのだそう。影響は全身の症状にまで発展することもあるようです。

ただ、眼瞼下垂の手術をしたからといって、100%頭痛や肩こりなどが改善するというわけではありません。まずは眼科か形成外科で相談してみることをお勧めします。小室先生が院長を務めるコムロ美容外科に、こんなことが書かれていました。

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眼瞼下垂は、眠そうに見られたり老けた印象を与えるだけでなく、肩こり、腰痛、頭痛、猫背などの原因にもなります。
それではなぜ、眼瞼下垂によって肩こりや腰痛などが引き起こされるのでしょうか?

眼瞼下垂の人は、狭くなった視野をもとに戻すため、下がってくるまぶたを上げようとして、無意識のうちに額の筋肉にチカラが入っています。
同時に後ろの後頭筋も一緒に収縮し、後頭筋から首の筋肉、そして肩への筋肉へと硬直して肩こりが生じます。
そして、肩こりの症状により肩が前方に移動し、猫背になるのです。
眼瞼下垂の人は、この方が楽なのです。
これを続けていくと腰に負担が掛かり、腰痛症や腰部椎間板ヘルニアになりやすくなります。

出典 http://566.or.jp/

あなたの肩こり・腰痛の一因も、眼瞼下垂にあるかも?

・眼瞼下垂とうつ病の関係とは?

意外なことに眼瞼下垂は心にまで影響を及ぼすことがあるのだそう。理由はまぶたを持ち上げる2つの筋肉、眼瞼挙筋とミュラー筋の関係にあるようです。大阪の美容外科つかはらクリニックの塚原先生はブログでこうおっしゃっています。

「必ずではありませんが眼瞼下垂症の手術をすることで、うつ病が改善することがあります。眼瞼下垂症がある人は眼瞼を上げる筋肉の一つ眼瞼挙筋が弱っています。そのため、もう1本の眼瞼を上げる筋肉であるミュラー筋が常に収縮している状態になります。このミュラー筋は交感神経に支配されているので、眼瞼下垂症があると常に交感神経が興奮している状態になります。ですから、無意識に眼瞼下垂症の人は、常に緊張状態が続いていることになります」

出典 つかはらクリニック院長のブログ

眼瞼挙筋は意識して動かすことができますが、ミュラー筋は自律神経に支配されているため、自分の意思で動かすことができません。眼瞼挙筋が衰えてまぶたが開けづらくなると、脳は交感神経を働かせて常にミュラー筋を収縮させ目を開かせようとするのです。この動きは私たちの意識でコントロールできません。このような状態が長く続くと自律神経失調症のような症状が現れ始めます。

「ミュラー筋に交感神経が指令を出しすぎると、首や肩凝りだけでなく、動悸やイライラ、不眠といった自律神経失調の症状を招くことがあります。(中略)交感神経の興奮が続きますと、全身の疲労・倦怠感を感じるようになります。さらに疲れが進行すると、燃え尽きてうつ状態になります」

出典 ヴェリテクリニック

1-5.ちょっとしたクセや習慣が眼瞼下垂を招く?

二重であるか一重や奥二重であるかどうかによっても眼瞼下垂になりやすいかどうかは変わってきます。一重や奥二重の人は二重の人よりまぶたが目にかぶさっている分、目を開けるのに力が必要になります。このため、二重の人より眼瞼下垂になりやすいのです。

その他にも花粉症やアレルギーのために目をこする、濃いアイメイクを落とすためのクレンジングで力が入る、コンタクトレンズを毎日つけ外しする……といった習慣も少しずつ眼瞼下垂を引き起こす原因になります。

目元の皮膚は顔の他の部分の肌と違って支えがなく、眼窩に浮いた状態。さらに厚さもゆで卵の薄皮くらいしかありません。眼瞼下垂だけではなく、シワやたるみ、摩擦による色素沈着も起こりやすいパーツなので「目はこすらない、触るときは超ソフトタッチで」を心がけるようにしたいものです。

2.眼瞼下垂の手術とは

近年、ブームになっているとまで言われる眼瞼下垂の手術。具体的にどんな方法があるのか、またメリットやデメリットについても詳しくご説明します。

2-1.眼瞼下垂の施術効果、失敗例紹介の前に~眼瞼下垂術はこんな手術!

高須クリニックの高須幹弥先生は、このように説明しています。

目の大きさの印象は、目を開けたときにどれくらい黒目が見えるかに大きく左右されます。黒目が7割程度見えると、一般的な大きな目に。9割だと、いわゆる“デカ目”という印象に。反対に、5割程度だと、眠たそうな目に見えてしまいます。
細い目や眠たそうな目を、パッチリとした大きな目にしたい場合、上まぶたを上に大きく開くようにするのが効果的。これを実現するのが、『眼瞼下垂(がんけんかすい)』の手術です。
会社や学校などでダウンタイムが取れない方には、片目の手術後に眼帯をして腫れが引いた後にもう片方の目の手術をする、柔軟な対応もできます。

出典 http://www.takasu.co.jp/

2-2.眼瞼下垂術のメリット・デメリット

プリモ麻布十番クリニックの大場先生は、眼瞼下垂術のメリット・デメリットをこのように語っています。

治療のメリット

プリモ麻布十番クリニックの大場先生
まぶたがパッチリ開きやすくなり、おでこの筋肉を使わなくなるので、しわが減り、眉毛の位置が下がります。まぶたのくぼみも改善し、老けた印象が若々しい印象に変わります。

手術により、黒眼の面積が大きくなり、三白眼も改善します。眉毛が下がり、おでこのシワも減ります。

出典 https://www.primo-clinic.jp/

治療のデメリット・リスク

腫れ
手術後およそ2~4日で大きな腫れは引いていきます。浮腫みは1~2週間気になる場合があります。完成は約6か月です。

内出血
稀に出現することがあります。1~2週間で消失していきます。

傷跡
術後1~2か月は赤みが分かります。経過とともに目立たなくなっていきます。

出典 https://www.primo-clinic.jp/

切開する眼瞼下垂手術の方法には表側の皮膚を切開する方法と、目の裏側の結膜を切開する方法の2つがあります。結膜で切開する方法は傷口が内側になるため、見た目はキレイですが皮膚を切開する方法よりもダウンタイムが長く、手術の難易度が高いというデメリットもあります。

結膜側から切開して手術を行うというのは、どの医師でもできるわけではありません。あびこ駅前クリニックの院長、石川先生はご自身のブログでこのように指摘されています。

「まぶたの裏から負担を最小限にして腱膜を目で確認するにはそれなりの経験が必要になります。
皮膚からの切開眼瞼下垂症手術を100例、200例と行ったとしても裏から行うことはできるようにはなりません。
それほどまぶたの裏から腱膜を確認して瞼板に固定することは難しいことです。(中略)
『皮膚を切らずに眼瞼下垂症手術』を行いますと言ったものの、そもそも瞼の裏から腱膜を固定することができない美容外科医や形成外科医が存在することも事実です。(割合的には半分以上だと思います。いや、8~9割以上かも知れません)

出典 まぶたのブログ

クリニック選びには慎重になる必要がありそうですね。

2-3.眼瞼下垂術は、切らない方法もある!

切らない方法として有名なのは二重埋没法に似た埋没タッキング法という手術です。真崎医院の真崎先生が、切らない眼瞼下垂手術について紹介していました。

切らない眼瞼下垂症の治療は切開法とは違う手術方法で傷跡なく瞼の開きを良くすることが可能です。 そのためダウンタイムも大幅に少なく手術直後より外出が可能です。

出典 http://www.dr-masaki.com/

切らない方法は傷が残らず、ダウンタイムも短いため、適応となればメリットが大きい方法ですが、治療方法として限界があるとも言われています。

「埋没タッキング法とは瞼の裏からある程度の深さに糸を通してギュッと結膜を縫い縮める方法です。この方法はのびきってしまっている、あるいは外れかかっている腱膜を糸がすくってくれているであろうという予想のもとに結膜ごと縛る方法です。
軽度の眼瞼下垂症の方であれば改善が望めますが、病的と判断される中等度以上のレベルの眼瞼下垂症にはほとんど効果がないということもよくあります。また、眼瞼下垂症が軽度の方であっても実際に外れかかった腱膜を瞼板に固定しているわけではないのである一定の割合でもとに戻ってしまうことがあります」

出典 まぶたのブログ

2-4.眼瞼下垂手術のダウンタイムと所要時間

・切る手術によるダウンタイムと所要時間

牧野皮膚科形成外科内科医院(美容外科・形成外科)の牧野先生によると、切る眼瞼下垂の手術はダウンタイムが長めのようです。

【ダウンタイム】
数日で抜糸が可能です。腫れが強いのは1週間程度です。腫れが引くまでは2~3カ月程度です。
【手術時間】
2時間程度です。

出典 http://biyougeka-m.com/

切らない手術によるダウンタイム

東京皮膚科形成外科の池田先生は、切らない手術のダウンタイムについてこのように説明しています。

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個人差はありますが泣き腫らした程度の腫れが2~3日。落ち着くのに1週間程度です。傷跡はありません。コンタクトレンズやメイクは3日後から可能です。

出典http://www.anosora.jp/

2-5.保険が適用される手術と美容外科での手術の違い

眼瞼下垂の手術には保険が適用される場合もあります。ただし、保険適用の場合、あくまで不快な症状の緩和が目的ですから、仕上がりの美しさが二の次になることも。その結果、思うような見た目にならず、後日美容外科で再手術を希望する人が増えているのです。
アイリス美容外科の桐原先生は保険適用の手術について、こんな風におっしゃっています。

眼瞼下垂の状態によっては、保険が適用されることもあるんですよ。保険適用は、主として、その疾患が原因で生活に支障がある人や明らかに病気と認められる人です。
単に一重をどうにかしたい、パッチリ二重になりたい、といった場合は美容目的となりますから、残念ながら保険の適用はできません。

例えば、眼瞼下垂が原因で頭痛や肩こりがひどい場合などは保険適用の可能性もあります。まぶたが重くなることで視界が狭まると、目を見開こうとして眉毛を上に上げる癖がつきます。
目を開けようとするためにはいろいろな筋肉を使っているため、筋肉が疲労し、それにより頭痛や肩こりを引き起こすことがあります。

また、重症筋無力症や脳梗塞、脳動脈瘤といった疾患の一症状として眼瞼下垂が起こることもありますので、まずは医師に相談してみてください。

出典 http://doctorsfile.jp/

これに対し、美容外科で手術を行うと見た目の美しさが重視されます。自由診療なので費用は高くなるのがデメリットですが、美容外科ならではのメリットもたくさんあります。左右の目のバランスが整う、きれいな二重になるなど見た目が美しく整い、好みの二重に仕上げてもらうことも可能です。

美容外科できれいな目元に仕上げてもらうことが心のケアにつながることも。先天性眼瞼下垂が起きているお子さんの場合、目の大きさがアンバランスなことでからかわたりすることもあります。大人の女性でも眼瞼下垂による目のアンバランスが解消されることで自分の容姿に自信を持てるようになったと感じている人もいます。

ただ、美容外科で手術を受けた場合であってもまれに「寝ているときに目が完全に閉じない」という報告もあるようです。もちろん、起きているときはきれいな状態に仕上がっていますし、自然に力を入れて閉じようとすれば閉じますが、眠っているときに手術を受けた方の目だけ半開きになっていたり、洗顔やシャンプーのときに目の中に洗顔料やシャンプーが入りやすくなったりすることもあります。その場合、目が乾燥して結膜炎やドライアイなどの症状を起こしやすくなる可能性があります。

形成外科や眼科でも眼瞼下垂の治療を取り扱っているところは多くありますね。先生にもよるのですが、それらの科ではまず第一に症状を治すことや機能を回復することが優先されることが多いように思います。

もちろんそれは重要なことです。でも、傷痕が残るとかいったことは二の次になる傾向があると感じますね。一方で美容外科の場合は、機能回復はもちろんのこと、同時にできあがりも重視しています。
僕の個人的な考えとしては、自分の娘を手術するならどうするってことをベースに治療していて、やはり患者さんのお顔に傷が残らないようにするのも大事だと考えているんです。

軽度の場合であれば、先ほども言ったように、美容外科ならではの埋没法という切らない治療法もあり、できあがりと治療法の選択肢の幅広さが美容外科での眼瞼下垂の治療のメリットだと思います。

出典 http://doctorsfile.jp/

2-6.眼瞼下垂の失敗例について

眼瞼下垂の手術が一般的になるほど、弊害として起きているのが、手術の失敗例増加です。特にテレビ番組で紹介されてから、手術を希望する人は急増。当然、手術する側にとっては儲かりますよね。そのため、多くの美容外科で手術に対応するようになり、技術的に未熟な医師が執刀するケースも増えているのだそう。「切らない手術なら簡単だから」と考えがちですが、実は眼瞼下垂は難しい手術でもあるということを忘れないようにしたいですね。

仙台中央クリニックの大倉先生によると、眼瞼下垂術の失敗が増えているそうです。

眼瞼下垂手術の失敗による修正手術が増加しています。眼瞼下垂はコンタクト使用や老化などで出現します。
コンタクト使用人口が増えたこと、高齢者人口が増えたことから眼瞼下垂症状を呈する方が増え、手術総数が増えたこと、今まで眼瞼下垂の手術を行っていなかった先生も手術するようになったことなどが原因と考えられます。

眼瞼下垂の手術は経験ある医師が行えば効果のあるすばらしい方法なのですが、経験の少ない医師により行われると悲惨な結果になる場合があります。
手術後左右の目の大きさが合わない、過剰に開きすぎてびっくり目になっている、手術したのに目の開き具合が変わらない、ラインが太すぎる二重になってしまったなどの訴えにより御来院いただいています。

眼瞼下垂の手術症例は、再手術が難しく、引き受けてくれる先生が少ない手術です。「手術後すぐには再手術できません。」、「もう少し様子を見た方が良いでしょう。」、「最初の状況を考えるとこれが限界です。」と言われ、やんわりと断られることもあるようです。

出典 http://www.kirei-kirei-sendai.jp/

手術後に視力が変わることがある

手術の失敗とは言えませんが、眼瞼下垂の手術を受けることで視力が変わることもあります。これは視界の広さや目のピントを合わせる機能が変化するため。大人になってから手術を受ける場合、保険適用の手術でも美容外科での手術でも起こることがあります。

とはいえ、手術を受ける前に医師から眼瞼下垂の手術を受けると視力低下や乱視が起こる可能性があると説明を受けるのが一般的です。このようなデメリットを事前にきちんと説明してくれるところが常識的なクリニックと言えます。逆にリスクやデメリットをまったく説明せずに手術を勧めるようなクリニックで手術を受けるのは避けるべきでしょう。

札幌美容形成外科の本間先生によると、40歳以降の方が眼瞼下垂の手術を受けると、視力が下がる傾向にあるようです。

強度近視で、
 長い間ハードコンタクトを使っていらした、
 40歳以降の方に手術をすると……
 ほぼ例外なく……
 手術後に見えにくくなったと言われます。
 眼瞼下垂症手術の後は、
 原則として眼鏡です。
 コンタクトはしばらくできません。

出典 http://s-bi.com/

複数の眼科専門医の意見は、
 強度近視+眼瞼下垂症で……
 もともと目を細めてものを見ていた。
 下垂を治して……
 目が大きくなったので、
 絞りを開いたカメラのように……
 ピントが合わなくなった。
 …という結論でした。

出典 http://s-bi.com/

「目を細めると見えるようになる」という人は視野を狭くすることによってピントが合い、見やすくなっていたということ。眼瞼下垂によって視野が広がるとピントが合わなくなり見えづらくなったと感じることがあるのです。

ただし、視力の低下は術後の一時的なものである場合も少なくありません。京都の山本耳鼻咽喉科・形成外科の山本先生は以下のようにアドバイスしていらっしゃいます。

「視力の異常、目のコロコロ感、瞼のつっぱり感は、術後短期間に見られる現象です。 徐々に軽快してくると思われますが、3カ月から半年は様子を見てください。 特に目を使われる方は、しばらく焦点が合いにくくなり、術後生活が辛いことがあるかもしれませんが、今は、色々考えないで、自然治癒を待つ方がいいと思われます」

出典 山本耳鼻咽喉科・形成外科

3.眼瞼下垂術は、目元の印象がぐっと変わる!

眼瞼下垂の手術はデメリットもありますが、眠そうに見えた目元がはっきりして若々しく見られるようになる、自分に自信が持てるようになるといったメリットもたくさんあります。眼瞼下垂の手術を受けるなら、視力低下のリスクが少ない40歳より前に受けたほうが良さそうですね。年齢が若いうちであれば、切らない手術が適応になりやすく、ダウンタイムも短くてすみます。まずはカウンセリングに行って、じっくり話を聞いてみるのも良いでしょう。

眼瞼下垂術が受けられるクリニック

■湘南美容外科クリニック

湘南美容外科クリニックの目元施術ページ

■プリモ麻布十番クリニック(東京都港区)

プリモ麻布十番クリニックの目元施術ページ

■品川美容外科

品川美容外科の目元施術ページ

■聖心美容クリニック

聖心美容クリニックの目元施術ページ

■よだ形成外科クリニック(宮城県仙台市)

よだ形成外科クリニックの目元施術ページ

※なお、本コラムにて紹介した内容は、あくまでも医師の見解です。目や瞼の状態は個人差があり、上記見解がすべてあてはまるわけではないことをご了承ください。本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

yuki

yuki

美容医療系ライター

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監修:

依田拓之医師

よだ形成外科クリニック

東邦大学医学部卒業。形成外科医として経験を積み、美容外科院長を歴任。宮城県仙台市に2010年よだ形成外科クリニックを開業。2020年で開院10周年。
日本形成外科学会認定専門医の資格を持ち、現在では少なくなった総合的な美容医療を地域に提供しています。目元、鼻などの美容外科治療はもちろん、エイジングケア、美肌、男性・女性のAGA、男性診療まで幅広いメニューは安心してかかりつけ医にできそうです。

東邦大学医学部卒
東京警察病院形成外科入局
美容外科クリニック院長
よだ形成外科クリニック院長