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美魔女の間で話題になった美容液並みの効果があると言われる保湿剤、ヒルドイド。皮膚科で処方してもらえるので使ったことのある方も多いと思いますが、このヒルドイドが、一部保険適用外になる可能性が高まっています。そもそも、ヒルドイドとはどんな薬なのでしょうか? また、保険適用外となると患者さんにどんな影響があるかについて詳しく説明していきます。
目次
- 1.効果抜群のヒルドイドが保険適用外になるってホント?
- 1-1.ヒルドイドとは?
- 1-2.ヒルドイドの保険適用範囲
- 1-3.ヒルドイドの副作用
- 1-4.ヒルドイドの口コミ
- 2.ヒルドイドが保険で処方されなくなる?
- 2-1.厚生労働省と健保連の見解
- 2-2.こんな風になる
- 2-3.ヒルドイドの代わりになる市販保湿剤
- 3.まとめ
1.効果抜群のヒルドイドが保険適応外になるってホント?
美容系の雑誌や美容ブロガーの間でも話題になったヒルドイド。今では難しくなっていますが、人によっては1回の診察で10本以上処方してもらっていたという人もいるほど、一部で人気が沸騰し、またその行為の問題点も指摘されたお薬です。化粧品代わりに医薬品を処方してもらうことの問題点とはなんでしょうか。
まずは、ヒルドイドがどんなお薬なのかから説明していきます。
1-1.ヒルドイドとは?
ヒルドイドとは製薬メーカー、マルホ株式会社の製品。主成分は保湿効果のあるヘパリン類似物質。尿素やワセリンと並んで一般的に使用されている保湿成分です。
ヘパリン類似物質は乾燥した角質に水分を与える効果と持続性のある保湿効果があるのが特徴。皮膚の状態によっては刺激を感じる尿素やベタつきや蒸れが気になるワセリンに対し、使用感がよく刺激を感じることがほとんどないという点も人気が高まった大きな理由となっています。
ヘパリン類似物質には保湿効果の他にも以下のような効果があるとされています。
- ・血行促進、血栓予防
- ・傷あとの治療
- ・筋肉痛、関節炎、腱鞘炎や外傷後の腫れ、アザなどの改善
■肌に優しい? ヒルドイドの成分・分量
- 「ヒルドイドは肌に優しい」
- 「肌が弱いからヒルドイド以外、使えない」
ネット上でよくこんな意見を目にしますが、ヒルドイドにはヘパリン類似物質以外にどんな成分が含まれているのでしょうか。ここでは、一般的に処方されることが多いヒルドイドのローションとクリームの成分表をチェックしてみます。
・ヒルドイドローション0.3% ローション
- ヘパリン類似物質3.0mg
- グリセリン
- 白色ワセリン
- スクワラン
- セタノール
- 還元ラノリン
- セトマクロゴール1000
- モノステアリン酸グリセリン
- パラオキシ安息香酸エチル
- パラオキシ安息香酸プロピル
- カルボキシビニルポリマー
- ジイソプロパノールアミン
・ヒルドイド 0.3%クリーム
- ヘパリン類似物質3.0mg
- グリセリン
- ステアリン酸
- 水酸化カリウム
- 白色ワセリン
- ラノリンアルコール
- セトステアリルアルコール
- セトステアリルアルコール・セトステアリル硫酸ナトリウム混合物
- ミリスチルアルコール
- パラオキシ安息香酸メチル
- パラオキシ安息香酸プロピル
- イソプロパノール
肌に優しいと言われていますが、パラベンや界面活性剤、防腐剤、アルコールなども使用されていることが分かります。なかには旧表示指定成分も含まれていて、添加物が多いという点では一般的な敏感肌用化粧品と比べると肌に優しいとは言えないでしょう。
1-2.ヒルドイドの保険適用範囲
上の図を見ても分かる通り、ヒルドイドが保険で処方される適応はかなり広範囲です。肌の乾燥(皮脂欠乏症)やしもやけ、進行性指掌角皮症(美容師さんなどに多い深刻な手荒れ)といった皮膚の症状から、関節痛、赤ちゃんの首にしこりができることによって首が傾いてしまう筋性斜頸(きんせいしゃけい)まで効果があるとされています。
また、コラーゲンなどの繊維芽細胞の増殖を抑える作用があるため、傷あとが盛り上がるケロイドや瘢痕(はんこん)の治療と予防なども保険で処方されます。
もっとも一般的なのは皮脂欠乏症でアトピー性皮膚炎の患者さんに処方されるケースでしょう。アトピーの患者さんの中には体の広範囲、あるいは全身に症状が出ている方もいるため、1回に処方されるヒルドイドの量も多くなっています。
1-3.ヒルドイドの副作用
ヒルドイドは副作用が少ないお薬でもあります。マルホが行った試験によると、2471例のうち、副作用があったのは全体の0.93%。100人に1人にも満たない数字です。症状は皮膚炎やかゆみ、赤み、ぶつぶつができるといった症状で、血行が促進されることによって赤みやかゆみが起こるケースや添加物が原因で起こる接触性皮膚炎、いわゆるかぶれが大半だと考えられます。重篤な副作用はありません。
「総投与症例2471例中、23例(0.93%)に副作用が認められ、主なものは皮膚炎9件(0.36%)、そう痒8件(0.32%)、発赤5件(0.20%)、発疹4件(0.16%)、潮紅3件(0.12%)等であった」
血行促進によってかゆみが起こるということは、皮膚が乾燥している状態でもかゆみを伴う症状には合わないこともあります。アトピーの患者さんでもヒルドイドがつけられないという方もいるので注意してくださいね。
酷い乳児湿疹で悩んでる全お母さんに、もしヒルドイドソフト(ビーソフテン)使ってるなら一度やめてみてって伝えたい。
うちはヒルドイドで血行促進されて痒くなり湿疹が酷くなってた。ステロイドもヒルドイドと混合のものからプロペトと混合のものに変えたらよくなったよ。こういう子もいる。— のほ (@269nohoh) December 2, 2017
■ヒルドイドの禁忌症状
以下の患者さんは使用することができません。
「出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)のある患者〔血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある〕
僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者〔血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある〕」
■ヒルドイドの価格、保険制度を圧迫している理由
ヒルドイドの薬価(お薬の価格)は1g当たり23.7円。よく処方されているローションやクリームは50gなので、ひとつ当たりの価格は1,185円となります。保険で処方してもらえれば、3割負担で約355円。残りは保険でまかなわれることとなり国の負担となります。
健康保険連合会によると、美容目的で処方されているヒルドイドの費用は90億円を超えていると言われています。これが健康保険制度を圧迫しかねないと懸念されているのです。
高齢者が増え続けている日本では医療費の増加が問題となっており、ヒルドイドのように化粧品代わりに医薬品が処方され、その費用を医療保険制度でまかなわなければならないとすれば、制度そのものが揺らいでしまう危険も十分に考えられるのです。
■ヒルドイドをタダで処方してもらっている人も?
自治体の中には中学生までの子どもは医療費が無料という制度を設けているところがあります。こうした自治体では、子どもに処方してもらうように見せかけて親が使うヒルドイドを無料で処方してもらおうとする人もいるようです。
なかには、下記のツイートのように全額無料でかつ、先発品でより価格が高いヒルドイドをわざわざ指定してくるケースも。これでは医療保険制度だけではなく、自治体の子育て支援制度まで揺るがすことになりかねませんね。価格の安いジェネリックではなく、先発品であるヒルドイドを指定しているというのも悪質ですね。
眼科からの問合せでヒルドイドクリームって「一本何グラム?」「何本まで出せる?」とのこと。眼科だから患者から頼まれたパターンが想像できる。ヒルドイドたくさん出してくださいってたのんだのだろう。案の定、公費で全額無料の先発希望。頼まれたからっていちいちださないでいいのに。
— 玄徳@社畜薬剤師 (@GentokuPPP) November 29, 2017
■ヒルドイドのジェネリックの価格は?
後発品(ジェネリック)であるビーソフテンローションはg当たりの価格が9円となり、1本当たりの価格は450円となります。なお、後発品のなかで最も安い製品はg当たり6.3円。50gになると315円となります。ニプロや日東メディック、東光薬工といった製薬メーカーの製品がこれに当たります。
保険適用の場合でもジェネリックを選ぶだけで、これだけ価格に差が出るというのも知っておきたい事実ですね。ジェネリックは添加物などの配合が違うものもありますが、主成分がヘパリン類似物質であることには変わりありません。
1-4.ヒルドイドの口コミ
最近、ヒルドイドの処方が問題視されるようになってきているため、口コミは減っていますが、以前はかなり人気がありました。美白やアンチエイジングに効果があるという間違った意見も。
ヒルドイドをたっぷり着けて寝たら、次の日の肌がとても調子良いんだよね。
パックするようにたっぷり着けてる。
ヒルドイドだーいすきっ。
保湿を徹底してからニキビが出来なくなった。
やっぱり乾燥はニキビとシワと肌トラブルの原因っ。— ひとりみ (@Dddddddddookk) April 24, 2016
2.ヒルドイドが保険で処方されなくなる?
ネット上ではアトピーの患者さんを中心に「本当に必要な患者まで、ヒルドイドを処方してもらえなくなるのでは?」「ヒルドイドを美容目的で処方してもらうのは違法」といった意見も見かけます。では、今後、ヒルドイドの処方についてはどう変わっていくのでしょうか。
2-1.厚生労働省と健保連の見解
医療費を圧迫しているヒルドイドの処方について、健保連では他の外用皮膚治療薬(ステロイドなど)や抗ヒスタミン(かゆみ止め)が処方されておらず、ヒルドイド単独で処方される場合は保険適用外にするべきと提案しました。
ただし、この場合、アトピーの患者さんが寛解(状態がよくなっていること)しているときに使用するなど、美容目的以外で単独処方されている患者さんに不利益があるとして皮膚科学会では処方制限は慎重にすべきと判断しています。
2-2.ヒルドイドの処方の今後
今後は美容目的で処方される場合は全額自己負担となることが予想されます。もともと先発品であるヒルドイドはそれほど安い薬でもないため、初診料を支払い、全額自己負担してまで使用すれば市販の化粧品の方が安くなることも考えられます。
また、現時点でも1回で処方できる量には制限があるため、今後はこの量がさらに少なくなることが予想されます。
今日アレルギー通院だったんだけど、ヒルドイドの処方が一回につき200㌘までに制限されたそうで怒り心頭です。ヒルドイドが治療の柱となるアトピーでも特例はなしだってよ。
— 木村ことり (@kimurakotori) December 1, 2017
2-3.ヒルドイド騒動で分かる保湿の大切さ
「美白効果がある」
「最高のアンチエイジングクリーム」
などと言われることもありますが、ヒルドイドをはじめとするヘパリン類似物質の処方薬に美容成分は含まれていません。
にもかかわらず、使用することで肌がキレイになったと感じる人がこれだけいるというのは裏を返せば、「美肌の維持にとって保湿することがいかに大切か」ということにつながります。肌が保湿され、水分量が正しく維持されれば、新陳代謝が正常化されます。これこそが、美肌を維持するカギとなるのです。
■保湿&美容皮膚科のクリームがコスパNO.1?
新陳代謝がスムーズに行われれば、シミや色素沈着を含む古い角質がはがれ落ちやすくなって、肌の透明感がアップしたように感じます。また、新しい肌の細胞がスムーズに作り出されるようになることで、しわが改善したように感じたり、ハリがアップしたと感じたりする人もいるでしょう。
ヘパリン類似物質に美白効果やアンチエイジング効果があるのでは?と思わせる理由はまさにここにあります。でも、それなら使用する保湿成分は必ずしもヘパリン類似物質である必要はないわけです。
確かに、市販の化粧品には効果があるのかないのか分からない商品もたくさんあります。本当になるべく費用をかけずに、結果を出してくれる美白やアンチエイジングケアをしたいというのであれば、肌にあった保湿剤と日焼け止めを使用しながら、美容皮膚科でトレチノインクリームやハイドロキノンクリームを自費で処方してもらうのが一番、コスパがいいと言えるのではないでしょうか。
2-4.市販されているものも! ヘパリン類似物質を使用した保湿剤
それでも「ヒルドイドを使いたい」という方は、ヘパリン類似物質を配合した市販の保湿剤を使用してみてもいいでしょう。使用感のいいものが多いですし、処方箋なしで買えるというメリットがあります。
ただ、どの製品も申し合わせたようにヒルドイドと同じ価格帯であるのがネック。決して安いとは言えません。これだけ騒動になっているのですから、今後はもう少し安いOTC医薬品としてヘパリン類似物質を使用した製品が増えるといいですね。
・小林製薬 さいき
出典 https://www.kobayashi.co.jp/
肌に浸透しやすいローションタイプ。価格は30g 1,045円。
・ロート製薬 ヘパソフトプラス
ヘパリン類似物質の他、クロタミトン、ジフェンヒドラミンといったかゆみを抑える成分も配合。乾燥肌がかゆい……という方に。メーカー希望小売価格は50g 1,210円。
・新新薬品工業 ピアソンHP
出典 http://www.shinshin-yakuhin.co.jp/
価格は50g1,100~1,800円程度。
3.まとめ
保湿効果の高いヒルドイドですが、どんな人の肌にでも合うというわけではありませんし、美白やアンチエイジング作用はありません。また、ヒルドイドに限らず、ワセリンや尿素のように肌に優しいと言われる成分でも肌に合わない人はいます。医療制度を維持するためにも、ヒルドイドを妄信しないこと、美容目的で大量に処方してもらうような行為は慎むことが大切と言えそうですね。
*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込です。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

Emiri
美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。
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監修:
この記事の監修ドクターが所属するクリニック
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