お顔の赤みが気になっていても、もともとの体質だから仕方ないと諦めている方も多いのではないでしょうか? 赤みには色々な原因があり、お薬やスキンケア、美容医療など選択肢がたくさんあります。今回は酒さをテーマにお伝えしていきます。

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赤みはどうして起きるのか

お顔の赤みは血流が増加することにより引き起こされます。では血流が増加するとはどのような時でしょうか。

①皮膚の炎症

炎症が起きると肥満細胞(アレルギー反応など免疫に関与する細胞)が産生するヒスタミンという物質や血管内皮細胞(血管の収縮や弛緩に関与する細胞)が産生する一酸化窒素が血管の壁にある平滑筋を緩めます。血管が緩まることにより、そこを通ることのできる血液量も増えるため毛細血管を押し広げ赤みに繋がります。

②器質的な末梢血管拡張

器質的とは構造そのものに素因があるという意味です。遺伝など様々な原因により毛細血管が広がっている状態が器質的な末梢血管拡張になります。また、もともと皮膚が薄かったり、年齢を重ね脂肪の量が減少すると皮膚の内側にある血管が透けて表面から透けて見えやすくなります。

③機能的な末梢血管拡張

機能的とは構造そのものは正常だがその働きに素因があるという意味です。精神的に緊張している状態や更年期などが機能的な末梢血管拡張にあたります。

赤みの原因は何?

今回のメインテーマは酒さですが皮膚炎を合併している方も多いのであわせて解説していきます。

酒さ

酒さとは中高年の方に起こりやすい、お顔に赤みや火照りがある疾患です。原因は不明ですが慢性的な炎症が起きている状態になります。
寒暖差や血液の循環が良くなるような激しい運動や太陽光を浴びる、洗顔、香辛料のきいた食べ物、飲酒によって症状が現れたり、悪化したりします。

症状により4つの分類があります。かつては重症度により第1度酒さ〜第3度酒さと呼ばれていましたが最近は海外の症状による分類に変わってきています。1種類だけ単独で生じている場合も、混在している場合もあります。

紅斑毛細血管拡張型酒さ(こうはんもうさいけっかんかくちょうがたしゅさ)

ETR:erythemato-telangiectatic rosacea、第1度酒さ、紅斑性酒さとも呼ばれています。紅斑毛細血管拡張型酒さは火照る感じやかゆみを主症状とします。毛細血管が拡張し、拡張していると血流も増えるので火照り感が出ます。
血管をパイプ、血液を水でイメージしてみて下さい。細いパイプより太いパイプの方がたくさんの水が流れますよね。同じような現象が起きていると考えて頂くと分かりやすいかと思います。

丘疹膿疱型酒さ(きゅうしんのうほうがたしゅさ)

PPR:Paulo-pustular rosacea、第2度酒さ、酒さ性痤瘡とも呼ばれています。痤瘡とは医学用語でニキビのことを指し、丘疹膿疱型酒さは面ぽう(ニキビの初期段階で皮脂が毛穴に詰まり白くポコっとなった状態)を伴わないがニキビのような皮疹ができます
ステロイドの塗り薬によって誘発されることもあるため、他の病気で処方されたお薬を指示された使用期間・量を使用することが前提として重要ですが、心配な場合は主治医の先生に相談してみても良いかも知れません。

腫瘤型酒さ(しゅりゅうがたしゅさ)

鼻瘤、第3度酒さとも呼ばれています。鼻を中心に腫瘤(こぶ)の形成が生じます
酒さ治療のガイドライン上、塗り薬や内服薬、レーザー、IPLなど有効性を示した治療はなく一概に推奨できるものはありません。そのため患者さんそれぞれの症状に合わせて色々な角度からアプローチしていく必要があります。

眼型酒さ

まぶたや眼球の結膜の充血や炎症を伴います。これにより目やにが増えたり、ドライアイといった眼症状を引き起こすこともあります。
腫瘤型酒さと同様に有効性を得られた治療がなく個々の状況に合わせた介入がなされます。

皮膚炎

酒さのみある患者さんよりも皮膚炎を合併している患者さんの方が一般的に多いと言われています。

接触皮膚炎

特定の物質に触れると生じるいわゆるかぶれのことです。
酒さの患者さんは多くの方が化粧品やスキンケアによる接触皮膚炎を併発していると言われています。花粉症による肌荒れも空気曝露性の接触皮膚炎のひとつです。

①刺激性接触皮膚炎

石けんやアセトン(マニキュアの除光液)、酸、植物などの刺激が原因となります。刺激物に触れるとすぐにかゆみや痛みを起こす場合も長時間の曝露により引き起こされる場合もどちらもあります。どちらかといえばかゆみよりも痛みの症状を訴える方が多いです。

②アレルギー性接触皮膚炎

化粧品やスキンケア、植物、ゴム(ラテックス)、香水、保存料、金属(ニッケル)などに免疫系が反応を起こしアレルギー症状が現れます。こちらは長年使用していたものでもある日アレルギー反応が出てしまうことがあり、かゆみを強く感じます。

酒さの治療

紅斑毛細血管拡張型酒さ

パルス色素レーザー、YAGレーザー、IPL(光治療)が選択肢として推奨されています。
レーザーやIPLは血液のヘモグロビンに吸収される性質があり、毛細血管の広がりを縮小させることができます。日本でもIPLの治療により見た目が有意に改善されたという臨床試験の結果が出ています。

レーザーとIPLはどちらも機械により波長(届く深さ、ヘモグロビン・水分・メラニン色素にどの程度吸収されるか)やスポットサイズ(照射口の大きさ)が違い、患者さんのお肌の状態により照射する出力も様々で一概に比較することができません。そのため、症例や経過などを参考にクリニックを選んで頂くことがおすすめです。

▼IPL

▼V ビームレーザー

併せてエレクトロポレーションをやるとダウンタイムの軽減に繋がるためおすすめです。エレクトロポレーションとは電気を使用することで細胞を包む細胞膜に微小な穴のような隙間をつくり、普段届かないような真皮層の下層にまで浸透させる施術です。

イオン導入であれば聞いたことがある方も多くいるのではないでしょうか。イオン導入は表皮層という真皮層より浅いところに位置する深さまでしか浸透せず、分子量の大きな成長因子やヒアルロン酸などは深くまで導入しづらいという欠点がありました。

イオン導入の進化版のようなものがエレクトロポレーションで、ケアシスSという機械ではイオン導入の約20倍の浸透力があると言われています。冷却での導入もできるためお肌の鎮静効果もあるためレーザーやIPLといったダウンタイムの生じる治療と同時に行うことがおすすめです。

▼ケアシスS

丘疹膿疱型酒さ

1番強く推奨されているのは0.75%メトロニダゾールという塗り薬による治療です。
メトロニダゾールには

  • ・抗菌、抗原虫作用
  • ・抗炎症作用
  • ・抗酸化作用

があり、炎症性皮疹の減少や皮膚のバリア機能を回復させます。
0.75%メトロニダゾールを12週間継続して1日2回外用することにより、72.3%の症例で炎症性皮疹の50%を超える減少が報告されているので適応があれば、まずこちらを試して頂くと高い満足感が得られるかと思います。

▼ロゼックス0.75%

酒さの方にあまりおすすめでない施術は?

患者さんそれぞれに酒さの程度や他の肌悩みもありますので、一様に必ずNGとなる施術はありませんがダーマペンはあまりおすすめできないケースが多いです。

ダーマペンは髪の毛よりも細い針が16本先端に付いており、これが高速回転することにより傷が治る創傷治癒の過程を生かして肌質を改善する治療です。傷の治る過程で血管も新たに作られるため赤みを増長させてしまう可能性があります。

禁忌ではないため、赤みは軽度で、毛穴や弾力のなさが気になるという方には施術を行うこともあるかと思うので、一度しっかりクリニックでお肌の状態を見てもらってから施術を受けることが良いと思います。

酒さのスキンケア

酒さは前述の通り、太陽の日差しや寒暖差、刺激のあるスキンケアや化粧品、乾燥によって悪化してしまいます。そのためこのような悪化因子を予防、軽減するようなスキンケアはとても重要になります。

紫外線対策

紫外線対策は日傘や帽子などで物理的に太陽光を遮ることと日焼け止めをぬることが挙げられます。

日焼け止めは汗やマスク、何気なく顔を触ってしまったときの摩擦などでとれてしまいます。本当は塗り直しをして頂きたいのですが特に女性の場合、お化粧をしている機会が多いのでなかなか難しいですよね。そのような時は、日傘や帽子などを上手く取り入れて頂くと良いかと思います。反対に日傘だけで紫外線を防ごうとしても地面や空気中のちりなどからの反射光を浴びてしまうことになるのでしっかり日焼け止めも塗って下さいね。

日焼け止めは紫外線散乱剤が配合されたもの、紫外線吸収剤が配合されたもの2種類あるのをご存知でしょうか。
紫外線散乱剤には酸化亜鉛や酸化チタンが含まれており、紫外線を反射させることでお肌を守ることができます。ノンケミカルと呼ばれているのは紫外線散乱剤が含まれている日焼け止めの方です。紫外線吸収剤は紫外線を熱や赤外線に変えて細胞が障害されることを防ぎます。
他の配合成分による影響もあるので一概には言えませんが、紫外線散乱剤の配合されたものの方が比較的お肌への負担が少ないと言われています。
また、アルコールフリーやアレルギーテスト済み、ノンコメドジェニックテスト済み、無香料、無着色、無鉱物油などの表記がある物もお肌へ優しいことの目安のひとつになるためお使いの日焼け止めをチェックしてみて下さい。

▼紫外線対策の詳しい記事はこちら


▼プラスリストア

保湿

バリア機能という言葉を聞いたことがありますか?
バリア機能とはお肌の表面に備わっている仕組みで①皮脂膜 ②天然保湿因子:NMF ③細胞間脂質の3つの働きによりお肌が守られています。
酒さは乾燥、刺激により悪化してしまうため、お肌が弱っているときは特にバリア機能を回復させるようなスキンケアを選択すると良いでしょう。

①皮脂膜

汗と皮脂が混ざったもので、お肌の1番外側に存在し乾燥や細菌などの外部の刺激からお肌を守る役割があります。また皮脂膜は油でふたをしているようなイメージでお肌内部の水分を逃さないようにする働きもあります。

②天然保湿因子:NMF

半分以上がアミノ酸、アミノ酸の代謝物で水分を保持する働きがあります。

③細胞間脂質

おもにセラミドのことを指します。セラミドは細胞と細胞の間を埋めるのりのような成分です。セラミドが少なく細胞と細胞の間に隙間があるような状態だとお肌の内部の水分が外に出ていってしまいます。そのためセラミドは乾燥肌、敏感肌の方の強い味方になります。

▼もっと知りたい方はこちらもご覧ください!

▼NOV

▼AK

アゼライン酸

アゼライン酸は特に丘診膿疱型酒さの方に使っていただきたい成分です。酒さの生じる仕組みが解明されていないのですが、アゼライン酸が持つニキビダニに対する殺菌作用、抗炎症作用、抗酸化作用が酒さのお肌に合っていると考えられています。アゼライン酸は酸という名前の通り最初は刺激感、かゆみを感じやすい性質があります。そのため、お肌の状態に合わせた量をしっかり保湿を行った上で使い始めてみて下さい。

▼AZAクリア

酒さといっても色々な種類があります。皮膚炎などを合併している場合、原因をまずは取り除いてあげることが大切です。
また酒さ以外にも膠原病などお肌に赤みを生じる疾患もあるので、セルフケアも重要ですが一度医師に相談してみてください!

【記事の執筆・レビューに使用した参考文献等】

記事の正確性等の確保方法及び参考文献の取り扱いについては、Call to Beautyの編集プロセスをご覧ください。

『尋常性痤瘡・酒さ治療ガイドライン2023』
日本皮膚科学会
尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン策定委員会
山﨑研志、幸野健、宮地良樹、赤松浩彦、大森遼子、小林美和、谷岡未樹、林伸和、上中智香子、川島眞、黒川一郎、古村南夫、山﨑修、山本有紀

『新しい美容皮膚科学』(2022南山堂)
日本美容皮膚科学会 監修
クイーンズスクエアメディカルセンター皮膚科 部長 尾見徳弥 編
みやた形成外科・皮ふクリニック 院長 宮田成章 編
静岡社会健康医学大学院大学 学長・理事長 宮地良樹 編
大阪医科薬科大学 教授 森脇真一 編

『看護学生のための病理学教室〜病気の仕組みを学びにゆく〜 第4回 炎症論③』(2012)
井上泰 東京厚生年金病院病理診断科部長

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

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まいまい

都内の美容皮膚科メインで働く正看護師。新人の教育担当も経験。現在は保険診療も併設されているクリニックで勤務中。美容と保険をうまく組み合わせ患者様のお悩みを解決したいと考えている。美容について勉強したことを発信しており、Twitterでは1,000人以上のフォロワーも。医療従事者としてエビデンス(根拠)に基づいた内容を伝えることを心掛けている。

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執筆:

まいまい看護師

都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニックで働く正看護師。自身がニキビで悩み、SNSや雑誌などで知った情報を試すも良くならなかった経験からお肌の状態が自信をなくしたり、QOLを下げる原因にならないよう美容看護師になる。

また誤った情報で悲しい思いをする方を減らすため根拠に基づいた美容法をSNSで紹介している。クリニックでは前職、現職でも指導者・プリセプターを担当。施術だけでなくカウンセリングも行っている経験から現実的に実践できるような手軽な美容から幅広く発信。

愛知県の大学病院(救急病棟)
都内美容皮膚科クリニック
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニック