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紫外線によりシミができてしまうということはみなさんご存知かと思いますが、実はしわやたるみも引き起こしてしまうとご存知だったでしょうか?
なんと加齢に伴う生理的な老化が2割に対して、紫外線を浴びることで生じる光老化は8割をも占めると『the New England Journal of Medicine』という海外の医学雑誌により論じられています。

実はこれほどまで怖い紫外線による影響についてどうして起こるのか、対策、生じてしまった肌悩みはどうやって解決していくと良いのかお話ししていきます。美容医療を受けるのであれば紫外線対策は必須ですのでぜひご一読ください。

紫外線によってお肌はどうなる?

まずは有名なインパクトの強い写真からご紹介します。

出典 https://www.nejm.org/

この方は28年間トラックの運転手さんをしており、窓側の左が過剰に紫外線に浴びてしまい光老化が進んでしまっている状態です。紫外線=シミは想像つく方も多いかと思うのですがしわやたるみも、このように紫外線によるダメージの蓄積で顕著に現れてしまいます。
どのように光老化が起こるか知って頂くことで今後の紫外線対策への意識が変わったり、美容医療を受けている方、受けたい方は施術の意義も改めて納得できると思いますので、説明していきます。

光老化の起きるメカニズム

紫外線について

紫外線にはUVA、UVB、UVCの3種類あります。UVCはオゾン層で吸収されるためほとんど地表には降り注ぎませんが、UVA、UVBはお肌に以下の影響を及ぼす可能性があります。
・UVA:光老化、色素沈着、光線過敏症、露光部皮膚癌
・UVB:色素沈着、日光皮膚炎、ドライスキン、ビタミンD合成、光老化、光線過敏症、露光部皮膚癌、光線過敏症
簡単に説明するとUVAは皮膚の真皮という深い層にまで入り、強力な酸化作用のある活性酸素を発生させます。活性酸素はDNAや細胞膜脂質、タンパク質を損傷させ慢性的な皮膚障害を引き起こします。

それに対してUVBは表皮という浅い部分に入りレジャーの後起きるような真っ赤になってしまう急性の皮膚障害の日焼けを引き起こします。日焼けを起こす力でいうとUVBはUVAに比べ600〜1000倍あるといわれています。
UVBでも生じますが、光老化はUVAへの曝露の累積時間×強さに比例して生じると考えられています。
日本国内でも秋田県と鹿児島県で暮らす女性を比較したところ、地域により降り注ぐ紫外線量が違うためしみ、しわ、毛穴の状態に有意な差があったという論文も出されています。

光老化で皮膚はどう変化するのか

表皮における変化

①角質層を含む表皮層が分厚くなる
紫外線のダメージから守るために皮膚の1番外側に位置する表皮は厚くなっていきます。そのため加齢によりごわつきが気になるようになっていきます。

②メラノサイト、メラニン産生の増加
メラノサイトはメラニンという黒色の色素を作るシミの工場のような色素細胞です。このメラノサイトが増えることでメラニンの生成量も自ずと増え、老人性色素斑、肝斑、雀卵斑(そばかす)、脂漏性角化症などのシミやいぼが誘発されます。

シミができる仕組みについてもっと知りたい方はこちら

真皮における変化

真皮層にはコラーゲンやエラスチンというお肌の弾力をつかさどる組織が存在します。紫外線のダメージによりコラーゲンやエラスチンの線維形成過程が阻害され肌の弾力が低下してしまいます。

それに加えて、マトリックスメタロプロテアーゼというコラーゲンやエラスチンを消費するタンパク質分解酵素の生成が増えるため、真皮層が薄くなりしわができてしまうようになります。ヒアルロン酸の量も光老化により顕著に減少するため水分が喪失し乾燥し、弾力性も低下します。

光老化を防ぐためにはどうするか

シミにもしわにも繋がってしまう光老化ですがどのように予防すればいいのでしょうか? 毎日、日焼け止めを塗っていても焼けてしまう方やシミがどんどん増えてしまう方は正しい紫外線対策ができていない可能性が高いです。具体的に日焼け止めをどう塗ると効果的なのか、お話ししていくのでぜひ参考にして頂き、日々のケアに取り入れてみてください。

まずは光老化、紫外線について知ること

ここまで読み進めて頂いた皆さまには知って頂けたと思いますが、美しい健康的なお肌を保つためにはまずは知識をつけて頂くことが最も重要となります。筆者は美容皮膚科の看護師としてカウンセリングなども担当させて頂いているのですが、美容クリニックに来るような美容が好きな方でも光老化について知らない方がとても多くいらっしゃいます。

どんな美容医療のレーザーなどの施術を受けていても紫外線対策を行っていなければ治療自体も上手くいかず高額な費用を払っていても満足いく結果が出なかったり、直後は良くなっても再発してイタチごっこになってしまいます。

遮光

第一に紫外線を遮ることが重要になります。遮光には大きく3つの方法があり、この3つを上手く組み合わせることが現実的な対策となります。

物理的遮光

長袖の衣服や日傘、帽子、サングラスなど物理的に紫外線が当たらないようにします。また、家の中にいてもUVAは窓を透過してしまうと言われているので日焼け止めの塗布や、カーテンによるさらなる物理的遮光を行うようにしましょう。
実は、日傘をさしているからといってそれだけでは紫外線対策は不十分でお肌にダメージが加わってしまいます。街中のアスファルトの道路では、約80%反射光による紫外線曝露が加わり、日傘により上からの紫外線はある程度防げますが、下からの反射光があるため日焼け止めを併用することが必要なので無防備な状態での外出はご注意下さい。

化学的遮光

日焼け止めを塗ることが化学的遮光にあたります。
日焼け止めは大多数の方が必要量塗布できていないため、塗っているはずなのに日焼けしシミができてしまうという事態に陥っています。日焼け止めは表示されているSPF、PAの効果を発揮させるためには2mg/㎠塗らなければなりません。

少し柔らかめのテクスチャーの乳液タイプだと顔全体で1円玉2枚分、硬めのクリームタイプであればパール2つ分を目安にお使い頂くと良いかと思います。特に顔のなかでもおでこ、鼻、頬上、顎が出っ張っており日焼けしやすいので入念に広げましょう。

日焼け止めはよく2時間に1度塗り直しが必要だと言われていますよね。実際に、日焼け止めの1回塗布の8時間後には効果が43%減弱するとの報告もあります。どうしても汗で流されてしまったり、マスクや何気なく顔を触ると落ちてしまいますので塗り直しは行うことが大切です。

お化粧をしていると塗り直しは現実的ではないかと思うので、日常生活ではスプレータイプやパウダータイプのメイクの上からでも使える日焼け止めを併用したり、日傘や帽子などの物理的遮光も上手く組み合わせて対策して頂くと良いかと思います。

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抗酸化物質の摂取

紫外線に当たると強力な酸化作用のある活性酸素が細胞を傷つけてしまい老化が進んでしまいます。この活性酸素を分解してくれる役割があるのもを抗酸化物質といいます。
具体的に挙げるとビタミンCやビタミンE、βカロテンなどが抗酸化作用のある栄養素です。

また亜鉛や銅、セレン、マンガンなどのミネラルももともと体内に存在する活性酸素を分解する抗酸化酵素を産生したり、活性化する働きがあるため栄養のあるバランスに良い食事を心掛け、不足する分はサプリメントや内服薬で補うようにしましょう。

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起きてしまった光老化への対処法

シミ

シミと一概に言っても老人性色素斑、肝斑、雀卵斑(そばかす)など多くの種類がありそれぞれ適応となる治療は異なります。シミの治療は1度で終了するわけではないため、経過を見てくれて画像診断機などで客観的に評価してくれる美容クリニックを選ぶようにしましょう。

生じているしみの種類により異なりますが、一般的にピコスポット、ピコトーニング、IPL(光治療)といった施術がシミ治療で選択させることが多いです。ピーリングやエレクトロポレーションやイオン導入を組み合わせるとさらに高い効果実感を得られるかと思います。

ピコスポット

ピコスポットは老人性色素斑、日光性黒子、雀卵斑(そばかす)などの比較的濃い色味のシミに対して適応となります。シミを一度かさぶたのようにして剥がして落とすイメージです。2週間程度テープで保護したり、かさぶたの状態が続くのでダウンタイムが取れ紫外線対策を行える期間に施術を行うことが、炎症後色素沈着を抑えるためにおすすめです。

肝斑そのもの、肝斑の周囲にある他のシミに照射すると炎症が強く出てしまい肝斑が濃く目立ってしまう可能性が高いので一概にシミ全てが適応となるわけではないので医師へご相談下さい。

ピコトーニング

ピコトーニングはピコスポットと比較するとお肌の深部にまで入る波長でマイルドにシミの色素を砕くことで徐々に薄くしたり、お顔全体のトーンアップを目指す方法です。ピコスポットでは反応の悪い薄い色味のシミや、全体のくすみも合わせて治療していきたい方に最適です。

肝斑治療の第一選択はトラネキサム酸の内服と言われていますがピコトーニングは肝斑にも効果を期待できる施術ですので、内服を行った上でさらに改善したい方やご病気などによりお薬が飲めない方は検討して頂くと良いかと思います。

たるみ、ハリ

たるみは光老化で真皮層のコラーゲンやエラスチンといった弾力をつかさどる組織が減少することに加え、骨や筋肉の萎縮といった加齢による生理的な変化が組み合わさり生じます。
お肌に熱や化学的な刺激を加えると創傷治癒の過程でコラーゲンの産生が増えるので熱治療やケミカルピーリング(真皮層にまで到達するもの)、マイクロニードル治療を行うと良いでしょう。

ハイフ

ハイフは超音波を利用して、お肉を焼くとギュッと縮まるような仕組みを利用してたるみを改善します。お肌は60℃になるとHSP(ヒートショックプロテイン)と言って熱に反応しタンパク質産生が増えるといわれているので、タイトニング効果+弾力感アップが期待できます。機械によりますが、ウルトラセルQ+では脂肪を溶かしてくれるリニアというモードが搭載されているのも嬉しいポイントです。

ダーマペン

髪の毛よりも細い極細針でお肌の表面に穴をあけていきます。そうすることで怪我が自然に治るといった生き物が元々持つ創傷治癒過程を活かしてコラーゲン生成を促します。導入する薬剤により期待される効果は異なりますが、PRX-33(ヴェルヴェットスキン)やミラノリピール(スーパーヴェルヴェットスキン)などはダーマペンと組み合わせることで薬剤の浸透性が高まるためさらにハリ感がアップします。

ピコフラクショナル

ピコフラクショナルはお肌の表面には傷はつけず内部に微小な穴を作ることでダーマペンと同じような創傷治癒過程を活かして真皮の再構築を図ります。

このように老化は加齢による生理的老化と紫外線ダメージ蓄積による光老化が人により様々な割合で組み合わさり起きています。シミ、しわ、たるみは可能な限り起きて欲しくないですよね。光老化の割合は毎日のケアにより減らすことができるため、今回ご紹介したようにコツコツと積み重ね将来への投資をしていきましょう!

【記事の執筆・レビューに使用した参考文献等】

記事の正確性等の確保方法及び参考文献の取り扱いについては、Call to Beautyの編集プロセスをご覧ください。

『公益社団法人日本皮膚科学会,皮膚科Q&A,日焼け,Q3 UVBとUVAはどう違いますか?』(公益社団法人日本皮膚科学会)

『あたらしい美容皮膚科学』(2022南山堂)
日本美容皮膚科学会 監修
クイーンズスクエアメディカルセンター皮膚科 部長 尾見徳弥 編
みやた形成外科・皮ふクリニック 院長 宮田成章 編
静岡社会健康医学大学院大学 学長・理事長 宮地良樹 編
大阪医科薬科大学 教授 森脇真一 編

『一生役立つ きちんとわかる栄養学』(2019西東社)
お茶の水女子大学大学院教授 飯田薫子 監修
関東学院大学准教授 寺本あい 監修

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

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まいまい

都内の美容皮膚科メインで働く正看護師。新人の教育担当も経験。現在は保険診療も併設されているクリニックで勤務中。美容と保険をうまく組み合わせ患者様のお悩みを解決したいと考えている。美容について勉強したことを発信しており、Twitterでは1,000人以上のフォロワーも。医療従事者としてエビデンス(根拠)に基づいた内容を伝えることを心掛けている。

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執筆:

まいまい看護師

都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニックで働く正看護師。自身がニキビで悩み、SNSや雑誌などで知った情報を試すも良くならなかった経験からお肌の状態が自信をなくしたり、QOLを下げる原因にならないよう美容看護師になる。

また誤った情報で悲しい思いをする方を減らすため根拠に基づいた美容法をSNSで紹介している。クリニックでは前職、現職でも指導者・プリセプターを担当。施術だけでなくカウンセリングも行っている経験から現実的に実践できるような手軽な美容から幅広く発信。

愛知県の大学病院(救急病棟)
都内美容皮膚科クリニック
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニック