寒いときやお酒を飲んだときのように顔が赤くなる赤ら顔(毛細血管拡張症)。痛みやかゆみなどが伴わない症状ですが、女性にとっては深刻な悩みとなるトラブルです。これまで、赤ら顔の治療は難しいとされてきましたが、近年美容外科、美容皮膚科ではさまざまな治療によって赤ら顔が改善できるようになっています。ここでは、赤ら顔の原因や最新の治療方法などについて詳しくお話していきます。

目次

  • 1.メイクで隠せない赤ら顔(毛細血管拡張症)を治す方法とは?
  • 1-1.赤ら顔とは
  • 1-2.赤ら顔の原因
  • 1-2-1.毛細血管が拡張することで起こるもの
  • 1-2-2.皮膚が薄くなることが原因となっているもの
  • 1-2-3.ニキビや脂漏性皮膚炎などの炎症が原因となるもの
  • 1-2-4.ステロイド外用薬の副作用として起こるもの
  • 1-2-5.酒さ(しゅさ)
  • 2.赤ら顔の治療方法
  • 2-1.通常の皮膚科での治療
  • 2-2.レーザー治療
  • 2-3.光治療(フォトフェイシャル)
  • 2-4.イオン導入、エレクトロポレーション
  • 2-5.赤ら顔のためのスキンケアと生活習慣の見直し
  • 3.まとめ

1.メイクで隠せない赤ら顔(毛細血管拡張症)を治す方法とは?

赤ら顔は男女問わず起こりやすい症状です。メイクで隠すことが難しく、悩んでいる人も多い症状です。男性の場合はメイクをすることもできないため、さらに悩みが深刻化してしまうこともあるでしょう。まずは赤ら顔の原因について考えてみましょう。

1-1.赤ら顔とは

赤ら顔とは毛細血管拡張症とも呼ばれることがあります。その名の通り、何らかの原因で毛細血管が透けて見えるようになって顔が赤く見えたり、肌が炎症を起こしたことが原因で顔が赤く見えたりする症状を総合して赤ら顔と呼んでいますが、その原因はさまざま。
正しい治療を行うには赤ら顔の原因と重症度を見きわめることが大切になります。頬や鼻などが部分的に赤くなることもあれば、顔全体が赤くなることもあります。

1-2.赤ら顔の原因

赤ら顔の原因は多岐にわたります。ひとつひとつ見ていきましょう。

1-2-1.毛細血管が拡張することで起こるもの

毛細血管が拡張することで起こるもの

人間の肌は表面から「表皮」「真皮」「皮下組織」という3つの層に分かれています。このうち、毛細血管は真皮に集中しています。毛細血管は人間の体中に張り巡らされていますが、顔の毛細血管は皮膚から近い部分にあるため、何らかの原因で血流が滞ったり、過剰になったりすると毛細血管が拡張され、表皮から透けて見えるようになります。

では、毛細血管の拡張はどのようなときに起こるのでしょうか。ひとつの要因として「気温の差」が挙げられます。毛細血管は伸縮と拡張を繰り返して、体温を一定に保つ役割を持っています。寒いときは毛細血管を拡張して、体温を上げ、温かくなると毛細血管は自然に収縮します。

冬の寒い時期や寒冷地などで、寒暖差の差が大きい場所で移動を繰り返すと、毛細血管が拡張したままになり、顔に赤みが残ることも。寒い地方のお子さんの頬がリンゴのように赤いことがありますが、これは寒暖差が背景にあると考えられます。

1-2-2.皮膚が薄くなることが原因となっているもの

普通、毛細血管は外側から見えません。しかし、なんらかの原因で表皮が薄くなったり、毛細血管が新生されて増えて、透けて見えるようになることがあります。特に小鼻の周りや鼻の頭などは皮膚がもともと薄いので赤みが強くなることもあるでしょう。

健康な肌は表皮層にしっかりとした厚みがあるため、毛細血管が透けて見えるようなことはありません。皮膚が薄くなることは「菲薄化(ひはくか)」とも呼ばれ、肌の老化を促進してしまう現象として問題視されています。「なにをつけてもヒリヒリして、顔がいつも赤い」というような方は皮膚が薄くなっていることが考えられます。

1-2-3.ニキビや脂漏性皮膚炎などの炎症が原因となるもの

赤ら顔はさまざまな皮膚病に起因する炎症が長期にわたって続くことで起こるものもあります。
ひとつ目がニキビです。炎症や化膿を伴うような赤ニキビは繰り返すことによって、炎症した状態が長引いて赤ら顔になってしまうことがあります。ニキビそのものがよくなっても色素沈着として長期間残ってしまうことも。

また、脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が多い箇所に起こる症状で、かゆみや赤みを伴うことが多く、カサカサになって粉をふくこともあります。マラセチアという真菌の一種が原因と考えられていますが、詳しいことは分かっていません。

1-2-4.ステロイド外用薬の副作用として起こるもの

脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎では炎症を抑えるためにステロイド外用薬が処方されます。ステロイドには毛細血管を拡張する副作用があるため、治療後に赤ら顔になってしまうケースもあるのです。また、副腎皮質ホルモン剤であるステロイドを長期間使用すると、ホルモンバランスが崩れてしまうため、このことも赤ら顔の原因になるようです。

脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎のように慢性化しやすい症状の場合、炎症を繰り返している肌は免疫が低下していると考えられます。赤みを抑えるだけではなく炎症がない状態になるまで、根本的な治療をしない限り些細なきっかけで再発してしまう可能性があるので体質改善するつもりでじっくりと治療に取り組む必要があります。

1-2-5.酒さ(しゅさ)

酒さとはお酒を飲んだときのように顔が赤くなる症状です。体質的な病気で原因は分かっていません。酒さは特に頬に出ることが多く、ストレスや飲酒、日に当たったり、気温の変化などによって熱感を伴う赤みが出るのが特徴です。毛細血管の拡張や腫脹(むくみ)、やニキビのようなぶつぶつを伴うことも。

初期段階では一時的な症状ですが、次第に持続的に症状が出るようになります。多くの場合、アトピー性皮膚炎やアレルギー、ニキビなどを併発しているため、酒さであると気づきにくいのですが実はかなりの数の患者さんがいると考えられています。

2.赤ら顔の治療方法

赤ら顔の治療方法

赤ら顔とひとことで言っても、さまざまな原因があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。赤ら顔はいくつかの原因が重なって起こることもあります。放置せず、赤ら顔の治療に力を入れている皮膚科や美容皮膚科でケアするのが改善の近道です。ここからは赤ら顔の治療方法についてお話していきます。

2-1.通常の皮膚科での治療

赤ら顔の症状が長引くようであれば、まずは皮膚科で診察を受けるようにしましょう。症状が軽い場合は食事の見直しやストレスの除去、漢方薬の処方などで改善するケースもあります。
処方される漢方薬は十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、温経湯(うんけいとう)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)など、体質や皮膚の症状に合ったものが処方されます。

その他、洗顔やスキンケアの見直しなども指導されます。皮膚科によっては肌に合った医療用のスキンケア用品を紹介してくれることもあるでしょう。なにをつけても肌がヒリヒリするというような方はこうしたスキンケア用品を使ってみるのもひとつの方法です。

2-2.レーザー治療

レーザー治療

出典 http://candelakk.jp/

赤い色に反応するレーザーを使用して治療を行う方法です。シネロン・キャンデラ社のVビームシリーズは色素レーザーの一種で毛細血管内の血液にだけ反応するように作られています。異常な血管だけを選択的に塞いでいくことで赤ら顔を目立たなくすることができます。

「Vbeam II(Vビーム II)から発振される波長595ナノメートルのレーザー光は、血液中のヘモグロビンに選択的に吸収される特徴があります。毛細血管が凝集した病変部では、ヘモグロビンがレーザーの光エネルギーを吸収し、熱変換することで血管内壁が熱破壊されて血管を閉塞させます。
(対象疾患)単純性血管腫、乳児血管腫、毛細血管拡張症の治療」

出典 http://candelakk.jp/

1回の施術ですべての毛細血管にアプローチすることはできないため、3~8週間のペースで複数回施術を受けることで徐々に赤ら顔が解消されていきます。

Vビームレーザーで治療し、毛細血管が消失することで肌のコンディションそのものがよくなったり、毛穴が目立たなくなったと感じる人が多いようです。毛細血管拡張症と診断された場合は保険適用で施術を受けることができます。保険適用の場合、費用は治療箇所の大きさによって決まり10センチ四方で6,500円程度から。
自由診療の場合、顔全体で22,000円~60,000円程度までが相場となっています。初回トライアルとして顔全体1回の施術が1万円以下で受けられるところもあります。

2-3.光治療(フォトフェイシャル)

ルミナス社のフォトフェイシャルマシンM22

出典 http://lumenis.co.jp/

※画像はルミナス社のフォトフェイシャルマシンM22

光の力で毛細血管を縮小させて、肌の赤みを減らしていく方法です。IPLフォトフェイシャルや光とRF(高周波)を組み合わせたフォトRFを使用します。
光エネルギーのみの場合、メラニンが多い肌ではエネルギーが吸収されてしまうことがありますが、肌の色に関係なく働くため、効率的に肌の奥へエネルギーを届けることができるというメリットがあります。
施術費用は顔全体で1回当たり23,000~30,000円程度。1回の施術で赤ら顔が解消するわけではないため、1カ月に1回、トータルで5回程度施術を受けるのが目安と言われています。

2-4.イオン導入、エレクトロポレーション

アプレシエをはじめとするビタミンC誘導体や美白、炎症鎮静効果のあるトラネキサム酸などを導入することで赤みの軽減を目指します。
ターンオーバーを促進するビタミンAを導入することで、肌のコラーゲン生成機能をサポートし、健康な肌に整えていくことで毛細血管が透けて見えにくくなります。クリニックによってはレーザーやフォトフェイシャルなどの治療と並行して施術を受けることを勧められることもあるでしょう。

エレクトロポレーションはイオン化できないビタミンAをはじめ、ヒアルロン酸やコウジ酸、成長因子などをしっかり肌の奥に届けることができます。費用はイオン導入が1回5,400~7,000円程度、エレクトロポレーションが10,000~17,000円程度となっています。

2-5.赤ら顔のためのスキンケアと生活習慣の見直し

赤ら顔のためのスキンケアと生活習慣の見直し

赤ら顔を悪化させないためには、家庭でのスキンケアや生活習慣を見直す必要があります。それぞれ注意すべき点は以下の通りです。

■赤ら顔のためのスキンケア

赤ら顔は皮膚が薄くなる菲薄化によって悪化します。菲薄化を避けるためには、まず肌への摩擦を減らす必要があります。以下のようなお手入れをしていないか、見直してみましょう。

  • ・ゴシゴシこする洗顔や過度の洗顔(1日2回で十分)
  • ・刺激の強いクレンジングを繰り返す
  • ・SPFの高い日焼け止めを頻用する
  • ・プロセスの多いスキンケアによる摩擦の増加
  • ・家庭用美顔器の頻用
  • ・ピーリング石鹸の使用

こうした行為はすべて肌の菲薄化の原因となります。肌が薄くなると、赤ら顔が悪化しやすくなるだけではなく、老化のスピードを早めたり、肌のバリア機能を低下させて敏感肌になったりといいことはありません。こすらないケアで角層の厚みをしっかりと育てるようにしましょう。

赤ら顔の治療はまず皮膚科での診察が第一歩となります。クリニックによっては医療機関だけで購入できる刺激が少ないスキンケアラインを販売しているところも多いので、相談してみてはいかがでしょうか。
おすすめの成分としてあげられるのはビタミンC誘導体です。浸透性の高いアプレシエなどは毛穴の開きやニキビ跡、ニキビの改善にも効果が期待できるうえ、刺激も強くありません。

菲薄化を避けるためには、保湿が基本的なケアになりますが、酒さの症状で顔の赤みに熱感があるという場合、保湿剤を使用するとかえって肌の水分が蒸発し、熱がこもったような状態になって乾燥が悪化することもあるようです。クリニックで肌にあったスキンケアアイテムを紹介してもらうようにするといいでしょう。

■生活習慣の見直し

生活習慣の乱れも赤ら顔を悪化させる一因になります。ストレスや睡眠不足の解消や食物繊維、ビタミンB2、B6などを豊富に含んだバランスの取れた食事を心がけるようにしましょう。また、香辛料やアルコール、タバコ、カフェインなどを摂りすぎている傾向のある人は減らすようにしましょう。

3.まとめ

赤ら顔は男女を問わず、悩んでいる人が多い症状です。「顔が赤いだけで病気ではないから……」と考えて放置していると、症状が長引いて治療に時間がかかってしまうこともあります。毛細血管拡張症と診断されれば保険適用で治療を受けることもできるので、悩んでいる方は一度、皮膚科や美容皮膚科などで相談してみてはいかがでしょうか。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

Emiri

Emiri

美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。


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監修:

稲葉岳也 医師

いなばクリニック

東京慈恵会医科大医学部卒業。大学病院にて経験を積み、横浜市でいなばクリニックを開院する。一般皮膚科をメインにしつつも、美容皮膚科治療も積極的に行っています。
特に、多くの機器を導入しているレーザー治療、光治療においては地域の美容かかりつけクリニックとしてリピーターが多い。HIFUテクノロジーのウルトラセルQプラスなど話題の機器も抑えています。

東京慈恵会医科大医学部卒
慈恵医大附属病院
聖路加国際病院
いなばクリニック院長

この記事の監修ドクターが所属するクリニック

形成外科 美容外科 皮膚科 美容皮膚科
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