女子の欲望すべてを手に入れた愛沢えみりが創る“お花畑”/北条かや
2017.05.26 更新

出典 http://ameblo.jp/

もうすぐ30歳を迎え、「こじらせ女子」という流行語を冠した書籍まで出してしまった私だが、本当は「こじらせ」なんて言葉から程遠い存在になりたかった。思春期からずっと、ギャルに憧れ、キャバ嬢に憧れ、キラキラした女性経営者に憧れてきた。彼女たちが放つきらめきは、若かりし頃の自分には手に入らなかったし、これからも手に入らないだろう。私が欲しかった属性、ギャル、キャバ嬢、若きカリスマ経営者。その全てを手に入れた、愛沢えみりという女性がいる。

1週間に100万円使う「嬢王」

愛沢えみりさんが彗星のように現れたのは2011年、『小悪魔ageha』の誌面だ。agehaの全盛期を支えたカリスマ元キャバ嬢たち――今ではアパレル経営者として活躍する桃華絵里、DJ街道まっしぐらの荒木さやかなど――が卒業し、部数が減少するなか、同誌が見つけた久々の「ザ・カリスマキャバ嬢」だった。

びっくりするほど細い手足に、金髪ロング巻き髪、浜崎あゆみに似たパッチリ目、矢印型の高い鼻。彼女は歌舞伎町での「バースデー」の売上が2800万円(!)という記録をもつ「嬢王」だ。整形疑惑も出ているが、彼女くらいになればもう、自由にしたらいいと思う。高層マンションに住み、1週間の支出が100万円以上、服やカバン、時計など、身につけたものの総額が約900万円という派手な消費っぷりは、多くのギャルの心をとらえた。安カワ、現実路線にカジを切ろうとしていたagehaが、再び私たちに夢を見させてくれるようになったキッカケを、愛沢えみりは作ったのである。たった1人で。

彼女は欲しかったものを全部もっていく

『小悪魔ageha』で人気が出たモデルは、だいたいアパレルや化粧品のプロデュースをする。キャバ嬢モデルが多い同誌では、ブランドを立ち上げ、「夜」を卒業して経営者になるというのが1つの理想コースだ。絶頂期のagehaを支えた桃華絵里も、武藤静香(彼女はキャバ嬢ではないが)も、八鍬里美も、みんなアパレルで一旗揚げ、夜職からは足を洗った。

ところが愛沢えみりさんは「キャバ嬢社長」として、月商1億超えのアパレルブランド、「エミリアウィズ」をプロデュースし、今春には新宿に出店。大成功を収めながら、今も歌舞伎町のフォーティーファイブに出勤している。キャバ嬢業は、社長業の気分転換らしい。趣味として、男にちやほやされる道を選んでいる(嫌味ではない)。愛沢えみりさんは今年28歳になるはずで、キャバ嬢歴は約10年。あるキャバクラオーナーいわく、「10年続く子はそういない」世界で、これだけ続くのはすごい。キャバ嬢が天職なのだろう。ギャル、キャバ嬢、社長。女の子が憧れるすべてを手に入れたような彼女を、ある人は「カリスマ」と表現するだろうし、ある人は「まさに現代のフェミニスト」という。自由競争のネオリベ現代社会において、経営者としてカネを手に入れ、美貌で男に貢がせる強さを、彼女はもっているからだ。

愛沢えみり「エミリアウィズ」より

出典 http://emiriawiz.com/

経済資源と女性資源を手に入れた「その先」に、彼女が目指すもの

経済資源と女性資源の2つがあれば、多くの女は万能感にひたることができる。そして、そんな女が表現する世界はどんどん、他者を必要としなくなっていく。愛沢えみりがデザインする服は、ショッキングピンクの花柄に薔薇、キラキラしたビジューが満載で、多くの人に似合うものではない。むしろ愛沢えみり以外が着ると、どこか「着せられた感」が出てしまう。この柄、近くで見ると目がチカチカするが、女の子の欲望の底しれなさを見せられた気がして、夢中になってしまう。

“愛沢えみり-instagram01”

出典 https://www.instagram.com/

何かに似ていると思ったら、蜷川実花の写真だった(現代美術作家、文筆家の柴田英里氏の指摘による)。蜷川実花の世界と、愛沢えみりのフラワー柄は似ている。互いに意識はしていないと思うが、両者とも「女」であることを目一杯、かつ自然に作品へと取り込んでいる点は同じだ。そしてその世界は、男にはちょっと理解しがたい毒々しさ、生々しい欲望に満ちている。男とか女とかで世界を分けたくないが、とりあえず愛沢えみりと蜷川実花の脳内には、同じものが流れている気がしてならない。なんて言うと、どちらかのファンからバッシングが来るだろうか……。

愛沢えみり-instagram02” data-recalc-dims=

出典 https://www.instagram.com/

愛沢えみりはいつも、「私がカワイイと思うものを作る」と明言する。お城のような家に住み、浮世離れした消費をし、浮世離れした柄の服を作ってファンを集める。その世界は、すでに他者の目を気にしない領域に達している。サイケデリックな花柄に包まれた彼女は、まるで自分だけのお花畑にいるようだ。ここまでナルシシズムを追求できる女性は、そういないだろう。女からの距離感を測りかね、「こじらせ女子」と揶揄される私は、彼女が羨ましい。いつか、彼女のつくる花畑でおもいっきり、我を忘れて遊んでみたい。フェミニズムもこじらせも男目線も、何もかも忘れて。

北条かや

北条かや

1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。最新著書は『こじらせ女子の日常』(宝島社)『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。
【Twitter】@kaya_hojo
【Facebookページ】北条かや
【ブログ】コスプレで女やってますけど

この記事の施術に関するご相談は下の「無料メール相談」から承ります。
ご希望やご予算に応じて適切なクリニックやドクターをご紹介致します。
まずはお気軽にご相談ください。

※状態、診断に関する相談は受け付けておりません。

無料メール相談 24時間OK
  • この記事が気に入ったら
    いいね! しよう

おすすめの関連記事