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傷跡やケロイドを治したいと思っている方は多いのではないでしょうか?
ケガや水ぼうそう、ニキビ、手術、帝王切開、火傷、リストカットなどみなさんどこかに程度の差はあれ傷跡があるかと思います。そもそも傷跡とケロイドの違いってなんだろう、治療法はどんなものがあるのかといった疑問に対して全てお答えしていきます。
また美容医療は自分の外見に自信を持たせてくれたり、より綺麗になることで嬉しい効果が沢山あります。しかし医療行為であり施術を受けるにあたってどうしてもリスクとして傷跡やケロイドは上がってくるかと思います。施術の効果とリスクどちらも知って選択することが大切なため美容医療を検討している方はぜひご一読頂けると有難いと思います。
【監修医師からのワンポイント】
瘢痕(傷跡)なのか、ケロイドなのか。近年、連続した病態であることが示唆されていますが、その治療方法や難易度から臨床的には区別した方が正しく診療することが可能です。
傷跡とは
傷跡とはいわゆるクレーターである萎縮性瘢痕、ミミズ腫れのように盛り上がった状態の肥厚性瘢痕・ケロイドなどの総称となります。
以下でそれぞれの傷跡の特徴や原因について述べていきたいと思います。
萎縮性瘢痕(クレーター状の傷跡)
原因
ニキビや水ぼうそうなどの急性の炎症がお肌に起き、十分な量のコラーゲンが生成されなかった場合クレーターのように陥没した傷跡が形成されてしまいます。
この限りではありませんが十分な量のコラーゲンが生成されない原因のひとつにステロイドの薬剤の局所的な投与があげられます。
ステロイドとは副腎皮質ホルモンで炎症を抑える作用や、免疫を抑制させる作用、炎症を引き起こす細胞の増殖を抑えるなどの作用があります。そのため、周囲の皮膚と同じ高さまでコラーゲンが増えず先に炎症が収まることで、コラーゲンの生成もストップしてしまいクレーターになってしまうというメカニズムになっています。
種類
クレーターにも種類があり大きく①ローリング型②ボックスカー型③アイスピック型に分類されています。
- ①ローリング型
- ②ボックスカー型
- ③アイスピック型
なだらかな凹凸があるタイプです。
箱型に陥没しているタイプです。
アイスピックで刺されたように穴が空いて見えるタイプです。
萎縮性瘢痕の治療法
フラクショナルレーザー
フラクショナルレーザーとはお肌に細かい点状の熱損傷を与えて真皮層の再構築を促進することで毛穴の再生を目的とする治療です。フラクショナルレーザーは表面に傷を作らず肌の内側に作用するノンアブレイティブタイプとかさぶたのようになり表面にも作用するアブレイティブタイプの2種類があります。ダウンタイムが大きい分アブレイティブタイプの方が表面の凸凹には効果的と言われていますが、どちらもコラーゲンの生成を増やして毛穴を目立たなくできる施術になります。
ダーマペン
ダーマペンとは髪の毛よりも細い針が先端に16本付いており、高速回転させることで毎秒約1,920個もの小さな穴をお肌につけます。その傷を治そうとする創傷治癒を活かしてコラーゲン生成を促し、毛穴の開きや瘢痕(クレーター)、小じわ、色素沈着を改善していく施術で、導入する美容液やピーリング剤によりそれぞれ違った相乗効果を期待することができます。下記で説明するポテンツァと比較するとRFという高周波を流さない分痛みが少ないことが利点です。
ポテンツァ
ポテンツァとは極めて細い針であるマイクロニードルの先端からRFという高周波を流す治療で、導入する薬剤やチップにより毛穴治療やタイトニングなど様々な効果が期待できる施術です。極細針によって開けられた穴を皮膚本来が持つ創傷治癒の機転でコラーゲンを生成する効果に加え、RFも真皮層へ熱エネルギーを与えるため相乗的な効果が期待されます。またダーマペンに比べるとダウンタイムの赤みなどが少ないことも特徴のひとつです。
TCAクロス
トリクロロ酢酸(TCA)という高濃度の酸をクレーター部分のみに塗布することで、皮膚の組織を作り直し凹みを目立たなくさせる治療です。炎症後色素沈着や炎症後紅斑のリスクもあり1回で改善を目指すのではなく、複数回施術を重ねることでだんだん凹みを浅くしていくしていくというイメージになります。
肥厚性瘢痕・ケロイド
原因
ケガや火傷などの強い炎症が長く続くことで肥厚性瘢痕やケロイドを発生させる可能性が高くなります。また浅い層では基本的に肥厚性瘢痕やケロイドが生じず、真皮などの深い層の炎症でリスクが高くなります。また、皮膚が動きやすい箇所も肥厚性瘢痕、ケロイドのできやすい箇所となります。
肥厚性瘢痕とケロイドの違い
両者とも傷の部分がコラーゲンや毛細血管が過剰に生成され盛り上がるという点は共通しています。
肥厚性瘢痕は傷ができていた範囲内で盛り上がり白ぽっくなり治っていく、ケロイドはもともとの傷を越えて水平に広がって赤みを帯びた傷跡となるという点で違いがあります。
実際には両者の性質を併せ持つ中間の病態も病理学的には存在しどちらかに分類することが難しいため連続した病態の可能性が示唆されています。
またケロイドの発症には体質による影響も考えられケロイド体質とはどういったものか説明させて頂きます。
ケロイド体質
遺伝的な要因やホルモンバランスの影響によりケロイドができやすい体質の方がいます。親族に肥厚性瘢痕やケロイドになりやすい方がいる場合、火傷やハンコ注射(BCGワクチンの跡)でケロイドが生じている人は遺伝的な要因でケロイドになりやすい体質の可能性があります。
エストロゲンという女性ホルモンの分泌が多い妊娠中などの時期もケロイドになりやすいのではないかと示唆されています。エストロゲンには血管を拡げる作用があり、血流が良くなることで傷の炎症が助長されてしまうためです。
以上のことに踏まえ、重力に対し垂直方向のキズであるため帝王切開の跡が肥厚性瘢痕、ケロイドになっている方が多くいます。妊娠中に美容医療を受けることは滅多にないかと思いますが、遺伝的にケロイドになりやすい方はカウンセリング時医師にしっかり相談して施術を受けられるか、リスクはどの位か聞いてみると良いと思います。
肥厚性瘢痕やケロイドができやすい美容医療施術
体に傷をつけたり、機械で熱を加える施術では程度の差はあれ肥厚性瘢痕、ケロイドのリスクがあります。以下にその中でも肥厚性瘢痕やケロイドが発生してしまいやすい施術について理由とともに紹介していきます。
美容医療は効果だけでなくリスクも知って受けるか決めることが大切です。リスクを知っていることで治療効果がでやすいダウンタイムの過ごし方が分かったり、もし副作用が出てしまったらどのような治療を行うのか、費用はどのくらい掛かるのかなど後から後悔することもなくなるかと思うので施術前に他のリスクについてもしっかり確認して下さいね。
切開系の手術
具体的には切開リフト(耳の周りや髪の毛の生えている箇所から余分な皮膚を切除してたるみを解消する施術)やタトゥー除去の削皮術(タトゥーが入っている部分の皮膚を切除して除去を行う施術)などです。切開は文字通りメスで皮膚を切る行為のため皮膚の深いところで強い炎症がどうしても起きてしまいます。
胸や肩甲骨のレーザー治療
脱毛で火傷が生じた場合やスポット照射でシミ取りを行った場合など、胸や肩付近は腕を動かすことにより絶えず力が加わる箇所であるため肥厚性瘢痕やケロイドのリスクが高くなってしまいます。
肥厚性瘢痕、ケロイドの予防
施術後は肥厚性瘢痕、ケロイドが生じる可能性が高まる要因を排除していくことがおすすめです。
皮膚が伸展したり力が加わることで肥厚性瘢痕、ケロイドができやすくなるため固定して安静を保つと傷が治る過程がスムーズに行われリスクが減らせます。
また医師の判断にはなりますが、抗アレルギー剤や炎症を抑える漢方の内服、ステロイドの軟膏やテープといった外用薬を使用し肥厚性瘢痕やケロイドが出来る前にアプローチするといった方法もあります。
肥厚性瘢痕、ケロイドの治療
内服薬
抗アレルギー剤のトラニラストの内服や炎症を抑える漢方薬の内服が推奨されています。トラニラストはTGF-β1という線維芽細胞(コラーゲン)を作る細胞を抑制し、過剰なコラーゲンが生成されてしまうことを防ぎます。炎症の程度によって、内服薬の効果が限られ全ての場合で有効ではないという特徴もあります。
外用薬
肥厚性瘢痕やケロイドは炎症であるため、炎症を抑える作用の副腎皮質ステロイド薬が使用されます。軟膏やテープは患者さん自身で使用しやすいため治療として選択されることが多いかと思います。
コルチゾン(ステロイド製剤)を外用したことで20%症状が改善されたという研究結果が出ています。ステロイド製剤の注射に比べると緩やかな効果ですが、注射による副作用が心配な方、肥厚性瘢痕やケロイドの重症度によっては有効な治療法となっています。
注射
注射でも炎症を抑える役割のあるステロイド製剤が使われます。ケロイド皮内へのステロイド製剤の局所注射を行うと概ね70%以上ケロイドの症状が改善したと報告されています。ステロイド製剤を塗る、貼るといった外用では症状の改善が20%程であったためそれと比べると注射は高い効果が期待できます。
しかし、肥厚性瘢痕やケロイドへのステロイド製剤の注射は表面麻酔や局所麻酔が必要と、疼痛を伴うものとなっています。また、ステロイド製剤の一種であるケナコルト(トリアムシノロン)を注射する場合、萎縮性瘢痕といってクレーターのように凹んでしまうといったリスクがあります。
他のステロイド製剤の副作用として毛細血管が拡がったり、皮膚が薄くなってしまう可能性があるため、症状改善効果が高いからといって注射を希望するのではなく、症状や副作用と効果のバランスを考え治療していくことが重要となります。
レーザー
パルス色素レーザー(PDL)が一般的です。クリニックよってはロングパルスNd:YAGレーザー、高/低反応レベルレーザー治療(HLLT/LLLT)など同じように赤みにアプローチできる機械を使用して肥厚性瘢痕、ケロイドの治療を行っているクリニックもあります。レーザーは照射により過剰に拡大した毛細血管を減らすことができるため厚みの少ない薄めの肥厚性瘢痕やケロイドで赤みの色調を改善するといった目的で選択されます。「日本創傷外科学会 ケロイド•肥厚性瘢痕診療ガイドライン」では炭酸ガスレーザーは推奨されていないため選択しない方が無難かと思います。
シリコンジェルシート
肥厚性瘢痕、ケロイドの切除手術後の再発を予防のための使用では発生率を低下させる可能性があるとされていまが、どのようにしてシリコンジェルシートが肥厚性瘢痕、ケロイドに作用しているのかなど科学的根拠が薄く解明されていないため、シリコンジェルシート単独での治療は推奨されていません。
しかしシリコンジェルシートによる副作用はほとんどありません。肥厚性瘢痕やケロイドは摩擦などの外的刺激を受けると悪化してしまいます。そのためシリコンジェルシートにより保湿効果や、衣服など外的刺激からの保護といった炎症を悪化させない環境を作ることが可能な治療方法となっています。
手術
炎症が収まった肥厚性瘢痕であれば手術により切除する場合もあります。瘢痕のできる真皮という層には可能な限り刺激が加わらないように、適切に縫合を行います。ケロイドの範囲や部位、形や大きさにより単純切除、W形成術、Z形成術などの切開方法が選択されます。しかし再発する可能性もあり、術後もアフターケアや経過観察が必要になります。
放射線
手術での切除後に放射線治療を行うと有意に肥厚性瘢痕、ケロイドの再発率を低下させるとされています。放射線治療により照射箇所に癌の発現を認めたという報告はないものの、放射線の特徴として発癌性があるためこの点は施術前にしっかりと確認しておく必要があります。
まとめ
瘢痕やケロイドは完全に根治することが難しいです。そのためどこまで目立たなくしたいか、再発の可能性もありますがどこまで治療を行いたいかなど施術の効果や副作用だけでなく総合的に考え医師と相談することをおすすめします。
*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。
まいまい
都内の美容皮膚科メインで働く正看護師。新人の教育担当も経験。現在は保険診療も併設されているクリニックで勤務中。美容と保険をうまく組み合わせ患者様のお悩みを解決したいと考えている。美容について勉強したことを発信しており、Twitterでは1,000人以上のフォロワーも。医療従事者としてエビデンス(根拠)に基づいた内容を伝えることを心掛けている。
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監修:
岩田勇児 医師
TRUE.ginza
整形外科専門医。東海大学医学部を卒業後、聖路加国際病院やがん研有明病院で外科を中心に勤務し、その後都内大手美容外科スキンクリニックの院長として従事。
2023年4月東京銀座にTRUE.ginza 開設。誠実に患者さんに寄り添い、エビデンスに基づいた美容医療を提供し、安心と信頼のクリニックを目指す。
二重整形、クマ取りなど目元の治療、ボトックス注射、ヒアルロン酸注入、糸リフトなどエイジングケア治療が得意。
クリニックのカウンセリングルームには、院長自ら製作した絵画が飾られているそう。
2012年 東海大学医学部卒
2012年 聖路加国際病院 初期臨床研修(外科系プログラム)
2014年 聖路加国際病院 整形外科 入局
2016年 聖路加国際病院 形成外科 国内留学
2017年 がん研有明病院 整形外科 国内留学
2017年 聖路加国際病院 整形外科 チーフレジデント就任
2019年 日本整形外科学会専門医 取得
2021年 大手美容外科 銀座院スキン院長 就任
2023年 TRUE.ginza 開設
執筆:
まいまい看護師
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニックで働く正看護師。自身がニキビで悩み、SNSや雑誌などで知った情報を試すも良くならなかった経験からお肌の状態が自信をなくしたり、QOLを下げる原因にならないよう美容看護師になる。
また誤った情報で悲しい思いをする方を減らすため根拠に基づいた美容法をSNSで紹介している。クリニックでは前職、現職でも指導者・プリセプターを担当。施術だけでなくカウンセリングも行っている経験から現実的に実践できるような手軽な美容から幅広く発信。
愛知県の大学病院(救急病棟)
都内美容皮膚科クリニック
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニック
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