美容外科・美容皮膚科で行うシミ取りと言えば、レーザー。でも、頬にもやもやとシミのように見える肝斑や炎症後の色素沈着は通常のシミ取りレーザーを使用すると、むしろ悪化してしまう可能性があります。しかし、これらの通常のレーザーがNGな色の悩みを改善してくれると言われているのが、レーザートーニングです。レーザートーニングとは、通常のレーザーよりも弱めの出力で反復照射します。そのためダウンタイムが少なく、内服薬などと並行して治療することで、なかなか改善しなかった肝斑やシミが気にならなくなるという魅力的な施術です。ここではレーザートーニングについて詳しく説明していきます。

【監修医師からのワンポイント】

レーザートーニングは、肝斑や色素沈着など肌の様々な色の悩みを徐々に改善させることができる施術です。痛みもダウンタイムもないですが、1回の施術で劇的な変化には乏しいので、何回か繰り返しの治療は必要です。今回、肝斑の正しいスキンケアにも注目していますので、是非最後まで読んでみてくださいね。

目次

1.肝斑や色素沈着、色むらに有効! レーザートーニングとは?

1-1.レーザートーニングとは

レーザートーニングとは低出力のQスイッチYAGレーザーを数回にわたって照射することで、熱変性や炎症を最小限に抑えながらメラニンを徐々に減らすことができる施術です。通常のシミ取りレーザーが強力掃除機だとしたら、レーザートーニングはクイックルワイパーのようなイメージで考えていただくと、少しイメージしやすいかと思います。

メラニンへ強くアプローチするレーザーを通常の出力で照射すると、いったんメラニンは破壊されるものの、レーザーによって一時的に炎症が起こることに。この炎症によってメラニンを作り出すメラノサイトが刺激され、炎症後の色素沈着が出たり、肝斑がむしろ濃くなってしまうことがありました。

そのため、「肝斑にレーザーはNG」という認識が長くありましたが、レーザートーニングという治療法の出現で、これまでレーザーでの治療が適さないと考えられていた肝斑の症状を改善することができるようになりました。

1-2.レーザートーニングの効果

レーザートーニングでは以下のような効果が期待できます。メラニン色素の影響で起こるさまざまな肌トラブルにまとめてアプローチすることができます。色素沈着やシミやくすみなどの色ムラも改善でき、更には毛穴の収縮やキメ・ハリの向上、肌質の改善にも効果的です。複数回の治療により、総合的な美肌効果が得られる画期的な方法と言えそうです。

■肝斑

レーザートーニングを受ける人の中で一番多いのは、やはり肝斑に悩まされている方でしょう。以前は肝斑にはレーザーはよくないとされていましたが、レーザートーニングによって肝斑の治療が可能となりました。トラネキサム酸の内服と正しいスキンケアなどを並行して行うことで、より高い治療効果が得られます。

■摩擦による色素沈着

摩擦による色素沈着

レーザートーニングは顔だけではなく、体に照射してもらうことも可能です。ムダ毛の自己処理によるワキの色素沈着や下着の締めつけによるデリケートゾーンの黒ずみなどにも効果が期待できます。こちらも美容液などで改善しにくい症状なので、悩んでいる方は試してみる価値がありそうです。但し部位により施術可能かどうかは、事前に各クリニックへお問い合わせください。

■ニキビ跡

凹凸のないシミのようなニキビ跡は、ニキビによる炎症後の色素沈着の可能性が高いです。以前ニキビができていた部分にあるシミのようなもので、顎やおでこに出やすいです。それには、レーザートーニングが効果的です。トレチノインやハイドロキノンと合わせて色素沈着を薄くするケアを行う場合もあります。
凹凸のあるニキビ跡には効果が乏しいでしょう。

■くすみ・色むら改善

肝斑やシミといったピンポイントの悩みはもちろん、肌全体のトーンアップも可能。顔全体がくすんでいるという方、年齢とともにくすみが気になる、なにをしてもくすみが改善しないという方にも最適です。同様に色むらのお悩みにも最適です。

■ハリ、キメ、毛穴の開き改善などの美肌効果

ハリ、キメ、毛穴の開き改善などの美肌効果

レーザートーニングを受けることで肌が本来持っているコラーゲンやエラスチンを生成する作用が促進されます。このことで、肌が内側からふっくらしてハリがアップ、キメが細かくなり毛穴の開きも目立たなくなります。

■後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)にはあまり効果がない

後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)

後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)とはアザのようにも見える左右対称のシミのこと。肝斑やシミの原因が表皮近くの浅い層にあるのに対し、ADMはそれよりも深い層に原因があります。そのためレーザートーニングでは、あまり効果は期待できません。

1-3.どのくらいの間隔で受ける? 

レーザートーニングではQスイッチYAGレーザーを低出力で照射していきます。そのため、肝斑やシミ、色素沈着が薄くなったと感じるまでには複数回施術を受ける必要があります。施術の間隔は1〜2週ごとに1回が目安です。肝斑やシミの濃さ、肌トラブルの状態によっても必要な回数は決まりますが、照射回数は5〜10回が目安です。

レーザートーニングは麻酔は不要で痛みもほぼなく、施術時間も短く(10〜30分程度)、ダウンタイムもなく直後からメイクが可能なので気軽に施術を受けることができるのも魅力のひとつと言えるでしょう。

1-4.レーザートーニングの副作用

通常のレーザーと異なり、炎症を起こさずにメラニンを減らすことができるレーザートーニングですが、副作用がまったくないわけではありません。起こりうる副作用はメラニン色素がなくなることで肌の色が白く抜けてしまう色素脱失、そして肝斑の悪化です。色素脱失は一度色が抜けてしまうとなかなか改善が難しい症状。もし肌の色に異変を感じたら、すぐに施術を受けたクリニックに相談するようにしましょう。

また、まれに肝斑がレーザートーニングにより、むしろ濃くなってしまうことがあります。その場合は、レーザートーニングの治療継続はできず中止すべきでしょう。

■肝斑治療をするときにまず考えるべきこととは

肝斑の改善にはまずトラネキサム酸などの内服薬や紫外線ケア、こすらないスキンケア、ホルモンバランスの改善など生活習慣の見直しを行い、それでも効果がなければレーザートーニングを考える……というプロセスを踏むべきと言えるでしょう。ですので「肝斑だから、レーザートーニング!」と、美容クリニックへ予約を入れる前に、一度自分のスキンケア等を見直しましょう。

また、レーザートーニングを受けたあとでも、適切なスキンケアと生活習慣の継続を心がけましょう。いくら美容医療でレーザートーニングを受けていても、肝斑の悪化原因となる生活習慣(紫外線予防をしない、皮膚をこするなど)を繰り返していたのでは肌の状態は改善しません。

■肝斑への正しいスキンケア

「こすらないスキンケア」と一言で言っても、どれがOKでどれがNGなのか分からないこともありますよね。シャワーを顔に直接当てたりしていませんか?タオルでごしごしと顔を擦ってはいませんか?

今回監修をしていただいた山東医師は、こすらないスキンケアの目安として「むきたての桃だと思って、顔に触れる」と、提唱しています。皮を剥いた後の柔らかいナイーブな桃を扱うように、自分のお顔もスキンケアを。そうすれば、こすらないスキンケアマスターの近道です。是非、実践してみてくださいね。

2.レーザートーニングの現状

レーザートーニングの現状

ここからは実際にクリニックで行われている施術について紹介していきます。レーザートーニングは単独で施術をするケースの他、さまざまな治療や施術を組み合わせてレーザートーニングの効果を高めるためのケアが行われることが多いようです。

2-1.レーザートーニングの効果を高めるためのケア

■美白効果のある内服薬を処方されるケース

トラネキサム酸、シナール(ビタミンC)、血行促進効果のあるユベラ(ビタミンE)などのシミや肝斑に効果的な内服薬が処方されます。レーザートーニングと併用することにより、肝斑への治療効果も早く現れます。

2-2.レーザートーニングの費用

レーザートーニング治療を行う主な機種として、メドライトC6、ルートロニック社(韓国)製のスペクトラ、スペクトラ・ヘリオスなどがあります。
一般的な美容クリニックの費用として、初回トライアルを設けているところは、ほほで約3,000円弱、全顔で約5,000円弱、2回目以降の通常価格でほほ1回、5〜6,000円、全顔1回で約8、9,000円程度になります。

コース価格を設定している場合は、5〜6回のコースで4〜5万弱といったところです。機種による価格の幅はそれほど見受けられません。
特に部位ごとの価格は決めてなく、照射の範囲により変動するクリニックもあります。

3.まとめ

いかがでしたか? 通常のレーザーよりも刺激が少なく、気になる肝斑やシミ、体の色素沈着、顔全体のトーンアップやアンチエイジングケアまで幅広い効果が期待できるレーザートーニング。トラブルが少ない施術ですが、事前に口コミなどをチェックして価格のみで選ばないようにすることも忘れないようにしてくださいね。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込です。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

Emiri

Emiri

美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。

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監修:

山東優 医師

中切パークサイドクリニック

大阪医科薬科大学医学部卒業。大学病院等皮膚科勤務を経て、中切パークサイドクリニック勤務。皮膚科専門医。
元々祖父母が鈴木医院として開院。その後父へ世代交代し「中切パークサイドクリニック」と変わる。
2023年3月内科、消化器内科、眼科、皮膚科、美容皮膚科のあるクリニックへリニューアル。
皮膚科、美容皮膚科を担当。シミ、シワに限らず幅広く肌の悩みを診療する。

平成25年 大阪医科薬科大学医学部 卒業
平成25年 春日井市民病院
平成27年 名古屋大学医学部附属病院 皮膚科
平成31年 名鉄病院 皮膚科
令和1年 小牧市民病院 皮膚科
令和4年 中切パークサイドクリニック