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出典 http://thisisenglish.jp/

※この記事は2015年に発表されたものです。
北川景子(29)は美人だ。どこから見ても完璧で、残念なパーツがなく、まるで「美人のひな形」のようである。オリコンスタイルの(「女性が選ぶ“なりたい顔”ランキング」)では、2010年に1位、11~12年は2位だったものの、13、14、15年と、3年連続でトップを飾っている。実に6年連続だ。なぜ彼女は、こんなに支持されるのか。

クールビューティと「おフェロ」の決定的な違い

オリコンでは、その類まれな容姿はもちろん、(ドラマ等で披露した)「クールビューティ然とした佇まいが、幅広い世代の女性から支持を獲得した」と分析。女性たちからは、「非の打ちどころのない顔だから」(10代)、「可愛いより、綺麗や麗しいという形容詞が当てはまる姿が理想だと思っているから」(20代)、「ホント理想の顔だから」(40代)などの声が寄せられ、幅広い世代から「あの顔になりたい」と思われているようだ。1日でいいから、北川景子の顔になって街を歩いてみたい。きっと、多くの人が振り返るだろう。完璧な、そして今風の美人である。

彼女の容貌は、完璧な「クールビューティ」だ。少し上がり気味の眉の下に、意志を感じさせるキリッとした大きい目、スッと通った大きめの鼻筋、丸顔でも面長でもない輪郭。クールビューティは、最近女子の間で流行っている「困り顔」や、目の下のチークで上気した頬をつくる「いがり顔、おフェロ顔」などとは対極にある顔だ。「困り顔」「いがり顔」「おフェロ顔」はいずれも、美人というより「可愛い、セクシー」と呼ばれるための顔。全体を幼く見せ、ちょっとアホっぽい隙をつくるメイクだ。男性に「守ってあげたい」と思わせるニュアンスもある。こうした”かわいい”は「作れる」(by「CanCam」)が、北川景子のようなクールビューティ系の顔は、そう簡単に作れない。なぜなら「クールビューティ」系の顔は、もともとのパーツが絶妙な大きさ、バランスであることに加え、「知性」を感じさせないといけないからだ。

『女優メイク PartII』表紙:北川景子

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知性があるように見せるには

「モンスター」とまで呼ばれた醜女が、美容整形で絶世の美女となる物語、『モンスター』(百田尚樹著、幻冬舎、2010)には、主人公の元ブス女性が、手術で「知性のある目」を手に入れるシーンがある。それによると、知性があるように見える顔は、「目と眉の間が狭い」のが特徴だそうだ。

“「私の目と眉の間は狭い。もちろんそういう風に手術した。なぜならこういう形の目は賢く見えるからだ。私が生まれながらに持っていた目と眉は間延びするくらいあいていたし、まぶたは腫れぼったく下がって目をふさいでいた。こんな『目』には『知性』はない!」――前掲書、「10、美の黄金比」より引用”

北川景子をはじめ、クールビューティ系といわれる美女は、目と眉の間が狭い。もともと知的に見える顔立ちなのだ。

なぜ目と眉の間が狭いと、知性的に見えるのか。『モンスター』に登場する医師、横山いわく、「人は真剣になった時や、ものを考える時、目を開いて眉を寄せる」。一方、ボーッとしている時には、目はあまり開かず、眉との間も開く。だから、人は無意識に、目と眉の間が狭い人を「知的だ」とか「賢そう」と感じるのだそうだ。すべては目の錯覚なのだが、北川景子が生まれ持ってきた顔は、知性的なクールビューティのバランスにぴったり当てはまる。しかもそのバランスは、日本人などアジア系女性には少ない。だから希少価値があり、「知性的な美人だ」と褒められる。

北川景子1st写真集『27』

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濃い「キャラ」はミステリアス度を下げる

加えて北川景子には、特定の「キャラ」というものがない。女優であることも関係しているだろうが、潤んだ笑みをたたえたまま、多くを語らない。これが彼女の美をさらに強固にしている。もともと知的な顔立ちであることに加え、しゃべりすぎないことによって、見る側が勝手にその「知的な内面」を妄想してくれるからだ。キャラといえば、「好きな女子アナランキング」でトップの水ト麻美アナウンサーは、食レポの際の「大食いキャラ」などが癒やされると人気だし、バラエティ番組で常連のタレント、ベッキーは「いつも元気なキャラ」が支持されている。が、水ト麻美もベッキーも、お茶の間の人気を集める一方で、「あの顔になりたい」とは言われない(両者とも、美人で愛らしい顔立ちなのに)。ここまで書いてみて、ようやく分かったが、私たちが北川景子の顔に憧れてしまうのは、彼女の顔立ちにもともと宿る「知性」と、特定のキャラに染まらない佇まいのせいだ。目の錯覚とはいえ、あの知的に見える顔のつくりと、私たちの想像を掻き立てる寡黙さ。北川景子のミステリアスな知性は、美の「アイドル(偶像)」になる必要条件である。もし、北川景子が今後、「あの顔になりたい」と言われ『ない』ようになってしまうとしたら、彼女に何らかの「色=キャラ」がついてしまった時だろう。そのくらい、キャラがないことは「美人」にとって必要なのだ。

北条かや

1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。16年1月下旬、『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)刊行予定。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。
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北条かやライター

1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『こじらせ女子の日常』(宝島社)『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。

同志社大学社会学部卒
京都大学大学院文学研究科修士課程修了
民間企業勤務を経てライター、著述家として活動

出演
『新世代が解く!ニッポンのジレンマ』(NHK)、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)

著書
『キャバ嬢の社会学』(2014年星海社新書)
『整形した女は幸せになっているのか』(2015年星海社新書)
『本当は結婚したくないのだ症候群』(2016年青春出版社)
『王子様はどこへ消えた?――恋愛迷宮と婚活ブームの末路』(2019年青春出版社青春文庫)
『こじらせ女子の日常』(2016年宝島社)
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