母乳は赤ちゃんにとって大切な栄養源であり、授乳を行うことによって、お母さんと赤ちゃんの結びつきがより深くなるといわれています。ところが、その大切な授乳シーンで乳頭が奥にひっこんでしまう陥没乳頭という状態に悩まされることがあります。陥没乳頭とはどのような状態か説明させて頂くとともに、治療法など医師の見解を取り入れながら解説して行くことにします。

もくじ
1.陥没乳頭とは
2.母乳のメリット・デメリット
3.陥没乳頭になってしまったときの授乳方法
4.陥没乳頭の治療法その1
5.陥没乳頭の治療法その2
まとめ

1.陥没乳頭とは

陥没乳頭とは、乳頭の中央部分がなんらかの原因によって内側に引っ込んでしまった状態を指し、仮性と真性に分類されています。この違いは、仮性であれば乳頭が刺激されることにより徐々に隆起し、正常な乳頭の状態となりますが、真性の場合には刺激によって乳頭が隆起することがないという点にあります。

1-1原因

私たちのバストは、筋肉、乳腺、脂肪で構成されており、乳腺では母乳が作られ、それが乳管という管を通って乳頭の先に届きます。乳管は細い管が何本も集まってその1本1本が途中で合流し合い、最終的には12~20本程度の管となって乳頭へとつながっています。

ところが、乳管の土台ともいえる乳腺が未発達の状態のままだと乳管も正常に成長することができず、乳頭の先端部分を内部に引き込んでしまう状態が起こりやすくなります。
つまり、これが陥没乳頭の大きな原因となるということです。ではなぜ、乳腺がいつまでも発達しないという事態が起こるのでしょうか? 

それは、女性ホルモンの分泌と大きな関わりを持ち、バスト全体の形成を司る女性ホルモンのエストロゲンの分泌が極端に少ないと、乳腺は十分な刺激を受けることができず、乳管も細胞分裂をすることができなくなるために陥没乳頭が起こることがあります。

エストロゲンの分泌は10代から盛んになり、20代をピークにどんどん分泌量が増えて行きます。ところが、この段階で栄養不足が生じてしまった場合には、エストロゲンの分泌が弱まり、バストの組織は十分に発達することができなくなり、陥没乳頭を引き起こす可能性が高まります。

特に、女性ホルモンの分泌が旺盛な時期に無理なダイエットなどで栄養不足に陥りがちな方の場合では、バストの組織が未発達な状態になりやすいので、くれぐれも無理なダイエットは行わないよう、注意しましょう。
そのほかの原因としては、生まれつき線維組織が十分に発達することができない状態となっている、あるいは下着を着用したまま就寝することによって乳頭が抑えつけられ、そのまま陥没してしまうことが考えられます。

1-2症状

乳頭が乳首の奥に引っ込み、そのまま定着した状態となります。この状態が10代~20代の若年層に起こった場合は、栄養不足などによるホルモンバランスの崩れの可能性が高まりますが、若年層に限らず、突然陥没乳頭の症状が現れた場合には、乳腺炎や乳がんの恐れがありますので、速やかに医療機関で検査を受けて原因を特定するとともに、適切な治療を開始することが大切です。

1-3授乳はできるのか

陥没乳頭は見た目が正常な状態ではないため、温泉などのパブリックスペースで引け目を感じてしまうこともあるでしょう。ですが、さらに深刻な状況となってしまうことも考えられます。それは、授乳が可能か否かという問題です。では、陥没乳頭になってしまった場合、無事に授乳を行うことはできるのでしょうか?

結論からお話しますと、陥没乳頭であっても基本的には授乳を行うことができます。ただし、お母さんのもともとの乳首が小さすぎたり、奥深くまで沈みこんでしまっている場合には、赤ちゃんがお母さんの乳首に慣れるまで授乳が困難な状態が続くかもしれません。

2.母乳のメリット・デメリット

赤ちゃんがこの世に生まれて初めて口にする食品、それは母乳です。ですが、なんらかの事情により、赤ちゃんに母乳を飲ませることができない場合もあります。それでは、母乳のメリットとデメリットについて考えてみることにしましょう。

2-1母乳のメリットとは

まず第一に挙げられるのは、経済的負担の軽減でしょう。また、初乳を赤ちゃんに与えることにより、赤ちゃんの免疫力が高まるという話も有名ですね。さらに、おっぱいを力いっぱい吸い続けることにより、赤ちゃんの顔の骨格形成に役立つというメリットもあります。

そして、母乳を赤ちゃんに与えることにより、お母さんにとっても大きなメリットが生まれます。それは、乳頭を赤ちゃんに吸われることによりオキシトシンというホルモンが分泌されるため、産後出血が軽くて済む、また、子宮系統の病気の危険性も軽減されるといわれています。

2-2母乳のデメリットとは

実は、母乳は粉ミルクと比較した場合に腹もちが悪く、授乳の間隔が短いというデメリットを持っているんです。そして、粉ミルク育児の赤ちゃんよりも黄疸が現れやすいという部分も大きなデメリットでしょう。また、短い間隔で赤ちゃんに乳頭を吸われ続けることにより、乳頭の先端部分が裂傷してしまうこともあります。

こうなってしまうと、その痛みで授乳するどころの話ではなくなり、粉ミルクに切り替えなくてはならないこともあります。特に陥没乳頭の状態で授乳を行うと、赤ちゃんが乳頭に吸いつく力が必要以上に強くなり、これが乳頭の裂傷を招いてしまうことも少なくはありません。

3.陥没乳頭になってしまったときの授乳方法

授乳の考え方は人それぞれですし、必要に応じて粉ミルクに切り替える、あるいは母乳と粉ミルクの混合で育児を行わなければならないこともあります。ですが、陥没乳頭の状態であっても母乳の出が良い場合には、なんとか自然な授乳を行いたいと考えるお母さんは多いのではないかと思います。そのようなときには、どうすればうまく赤ちゃんに母乳を与えることができるのでしょうか?

3-1搾乳

母乳の出が良いのに、なかなか赤ちゃんにおっぱいを飲んでもらえないとイライラしますし、どうかすると悲しい気分で落ち込んでしまうこともありますよね? そのようなときには、搾乳器を使用してみてはいかがでしょうか。搾乳器とは、乳頭に直接機器を取りつけて母乳を絞り出す器具で、赤ちゃんがうまくおっぱいを飲んでくれないときの心強い味方です。

また、搾乳器で絞っておいた母乳は冷凍しておくこともできますので、これを利用しないという手はありません。さらに、搾乳器を使い続けているうちに自然に陥没していた乳頭が自然に隆起した形に戻ることもありますので、陥没乳頭の方だけではなく、基本的に母乳での育児をお考えの方にも、搾乳器はお勧めすることのできるアイテムです。

3-2乳首補助カバーの使用

乳頭にかぶせて授乳の補助を行ってくれるアイテムです。このアイテムはラバー製で製造されているため、赤ちゃんによってはラバーの人工的な感触を嫌がってしまうこともあるようですが、陥没乳頭でお悩みなのであれば、ひとまず試してみる価値はあります。

また、この方法でうまく行かなかったとしても、焦る必要はありません。この方法で授乳がうまく行かない理由は、単純に赤ちゃんの好き嫌いによるところが大きいと考えられますので、そのようなときには割り切って粉ミルクを積極的に利用してみるという方法もありますから。

それでは次に、陥没乳頭の状態になったときの治療方法を、医師の見解を交えながらご紹介して行くことにします。

4.陥没乳頭の治療法その1

まずはセルフで改善することのできる方法をご紹介しておくことにします。急に陥没乳頭になってしまった場合を除き、妊娠前から陥没乳頭だった方の場合には、妊娠中期からケアをしておくとよいでしょう。そのケアとは、ご自身でマッサージを行い、乳頭が隆起しやすい状態に持って行くというものです。

方法はとても簡単、お風呂の浴槽で身体を温めながら、ゆっくりと乳頭の周囲からマッサージを始め、指先で乳頭をつまんでみて下さい。乳頭が奥まっていればいるほどなかなか隆起しにくい状態ではありますが、これを毎日繰り返し行うことで、徐々に乳頭が隆起してくるケースは案外多いものです。

特に仮性の陥没乳頭の方の場合では、数回のマッサージで乳頭が正常な形に隆起してくることもあります。厄介なのが真性の陥没乳頭ですが、この場合であっても根気よくマッサージを行うことにより、授乳本番までに多少なりとも状態が改善されることも考えられます。

いずれの場合であっても、注意して頂きたいのは必ず妊娠中期の安定期に入ったあたりでマッサージを開始するということです。というのは、慌てて妊娠初期からマッサージを開始してしまうと、その刺激が子宮にダイレクトに届いて子宮の収縮を招いてしまうこともあるからです。乳頭のマッサージは焦って行うものではありませんので、腰を落ち着けて、ゆったりとした気分で行ってみて下さいね。

5.陥没乳頭の治療法その2

では、医療のプロである医師は、陥没乳頭に対してどのような治療方法を推奨しているのでしょうか?
船橋中央クリニックは、手術による治療方法を推奨しています。

1.牽引法:傷が小さく負担が軽い方法
乳首の陥没の程度が軽い「仮性陥没乳頭」の場合にお勧めする手術方法です。傷は乳首の根元にわずかに付く程度です。術後に出産・授乳の予定がある方の場合には、乳管を傷つくことは絶対にありませんので、授乳に影響がありません。
術後、7日前後で抜糸を行います。

2.切開法:切開して乳首を引っ張り出す方法
乳首の陥没の程度が強い「真性陥没乳頭」の場合に行う手術方法です。乳首周囲の皮膚を2~3ヵ所Z型に切開します。乳首が引き出されるようにZ型の皮膚の位置を入れかえて、縫合します。治療後は再陥没を予防し、乳首が突出した状態で癒着させるために器具で固定します。傷跡は乳首の中心につきますが、乳首は元々傷が非常に目立ちにくい部位なので、時間とともにほとんどわからなくなります。術後に出産・授乳の予定がある方の場合には、乳管を傷つくことは絶対にありませんので、授乳に影響がありません。
術後、10日前後で抜糸を行います。

出典 https://www.funa-biyou.com/

ては、陥没乳頭の治療で手術を行う場合には、保険が適用されるのでしょうか?
ナグモクリニックによると、

「陥没乳頭(陥没乳首)の治療には、保険が適用される場合があります。対象となるのは40歳未満で、今後授乳の予定がある方です。陥没乳頭が原因で授乳に障害があると思われる場合、または授乳が困難であると疑われる場合に保険が適用されます」

出典 http://www.nagumo.or.jp/

とのこと。一人で悩むよりも、専門医に相談することが解決の早道かもしれませんね。
ですが、手術となると、その経過が心配ですよね。銀座ファインケアクリニックによると、

「1週間後に抜糸が必要です。患部の入浴は抜糸後から可能です。シャワーは、治療の翌日から可能です」

出典 http://www.ginzafine.com/

ということですので、あらかじめカウンセリングを受け、計画的に手術を受ける必要がありそうです。

上記では、切開による陥没乳頭治療法をご紹介させて頂きましたが、皮膚を切開しない治療方法を推奨している医師も存在しています。
コーラルビューティークリニックは、

「二重埋没法でも使用する髪の毛よりも細い糸を用いて、陥没した乳頭を持ち上げるように固定します。メスを使わないので傷も残りませんし、授乳も正常機能を保ちます。2mm程度の針穴から糸を通し、ループ状に数ヶ所固定するだけの簡単施術なので、約20分で終了します。必要に応じて陥没乳頭専用の治療用ピアスや少量のヒアルロン酸注射を用いて結果を安定させます。重症度を診断した後に適応であれば、この施術で十分です」

出典 http://www.coral-beauty.jp/

この方法を推奨しています。メスを使用する手術に対して抵抗のある方は、このようなクリニックでひとまずカウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか?

ただし、この方法は「重症度を診断した後に適用であれば」ということですので、陥没乳頭の重症度によっては受けることができない可能性もありますね。

それでは最後に、メスを使用する手術の再発率についてのお話です。
こいずみ形成クリニックによれば、

「再発率は7~8%ですが、重症の方では10%前後、中等度では4%台です。

再発した場合は再度同じ手術を行います。再発しても手術前よりは乳頭が出やすくなっていることがほとんどですので、再手術では今のところ全例で矯正されております」

出典 https://www.meteor-clinic.com/

とのことです。

まとめ

見た目の問題だけではなく、授乳に大きな影響を与えかねない陥没乳頭は、他人に相談することができないだけに、一人で悩んでしまいがち。
ですが、一歩治療への道を踏み出せば、案外いろいろな治療方法があることがわかりましたね。まずはセルフで改善を試みるというのもひとつの方法ではありますが、それで解決することができないのであれば、思い切って専門クリニックの門を叩いてみてはいかがでしょうか。

yamada

山田美羽

美容系ライター。エステから美容医療まで歴20年。

閲覧中の記事:

陥没乳頭手術が受けられるクリニック

  • 住所: 東京都渋谷区代々木2-9-2久保ビル6F
  • 最寄駅: JR新宿駅南口徒歩約3分、京王線新宿駅4番出口徒歩1分、地下鉄都営新宿線、大江戸線新宿駅4番出口徒歩1分
  • 院長: 板井 徹也
  • 診療時間: 10:00~20:00
  • 休診日: 年中無休
  • 住所: 大阪府大阪市北区梅田1-3-1大阪駅前第1ビル2階
  • 最寄駅: 地下鉄四ツ橋線西梅田駅徒歩約1分、JR東西線北新地駅徒歩約1分、阪急・阪神各線梅田駅徒歩約3分、地下鉄各線梅田駅徒歩約5分
  • 院長: 木村 幸志伊
  • 診療時間: 10:00~19:00(予約制)
  • 休診日: 年中無休(年末年始を除く)
  • 住所: 大阪府大阪市北区茶屋町1-27 ABCマート梅田ビル6F
  • 最寄駅: JR大阪駅徒歩3分、阪急梅田駅徒歩1分、御堂筋線梅田駅徒歩3分、谷町線東梅田駅徒歩5分、阪神梅田駅徒歩5分
  • 院長: 横谷 仁彦
  • 診療時間: 10:00~19:00
  • 休診日: 年中無休