母乳は赤ちゃんにとって大切な栄養源であり、授乳を行うことによって、お母さんと赤ちゃんの結びつきがより深くなるといわれています。ところが、その大切な授乳シーンで乳頭が奥にひっこんでしまう陥没乳頭という状態に悩まされることがあります。陥没乳頭とはどのような状態か説明させて頂くとともに、治療法など医師の見解を取り入れながら解説して行くことにします。

もくじ
1.陥没乳頭とは
2.母乳のメリット・デメリット
3.陥没乳頭になってしまったときの授乳方法
4.陥没乳頭の治療法その1
5.陥没乳頭の治療法その2
まとめ

【監修医師からのワンポイント】

実に女性の約10-20%が陥没乳頭と言われています。中〜重度では授乳が困難になったり、窪んでいる溝の部分に雑菌が繁殖しやすく乳腺炎を繰り返す原因にもなるため、適切な治療が必要です。手術自体は1時間程度で日帰りで可能です。最近では整容面で手術をご希望される方もかなり増えています。

1.陥没乳頭とは

陥没乳頭とは、乳頭の中央部分がなんらかの原因によって内側に引っ込んでしまった状態を指し、仮性と真性に分類されています。この違いは、仮性であれば乳頭が刺激されることにより徐々に隆起し、正常な乳頭の状態となりますが、真性の場合には刺激によって乳頭が隆起することがないという点にあります。

1-1原因

私たちのバストは、筋肉、乳腺、脂肪で構成されており、乳腺では母乳が作られ、それが乳管という管を通って乳頭の先に届きます。乳管は細い管が何本も集まってその1本1本が途中で合流し合い、最終的には12~20本程度の管となって乳頭へとつながっています。

ところが、乳管の土台ともいえる乳腺が未発達の状態のままだと乳管も正常に成長することができず、乳頭の先端部分を内部に引き込んでしまう状態が起こりやすくなります。
つまり、これが陥没乳頭の大きな原因となるということです。ではなぜ、乳腺がいつまでも発達しないという事態が起こるのでしょうか? 

それは、女性ホルモンの分泌と大きな関わりを持ち、バスト全体の形成を司る女性ホルモンのエストロゲンの分泌が極端に少ないと、乳腺は十分な刺激を受けることができず、乳管も細胞分裂をすることができなくなるために陥没乳頭が起こることがあります。

エストロゲンの分泌は10代から盛んになり、20代をピークにどんどん分泌量が増えて行きます。ところが、この段階で栄養不足が生じてしまった場合には、エストロゲンの分泌が弱まり、バストの組織は十分に発達することができなくなり、陥没乳頭を引き起こす可能性が高まります。

特に、女性ホルモンの分泌が旺盛な時期に無理なダイエットなどで栄養不足に陥りがちな方の場合では、バストの組織が未発達な状態になりやすいので、くれぐれも無理なダイエットは行わないよう、注意しましょう。
そのほかの原因としては、生まれつき線維組織が十分に発達することができない状態となっている、あるいは下着を着用したまま就寝することによって乳頭が抑えつけられ、そのまま陥没してしまうことが考えられます。

1-2症状

乳頭が乳首の奥に引っ込み、そのまま定着した状態となります。この状態が10代~20代の若年層に起こった場合は、栄養不足などによるホルモンバランスの崩れの可能性が高まりますが、若年層に限らず、突然陥没乳頭の症状が現れた場合には、乳腺炎や乳がんの恐れがありますので、速やかに医療機関で検査を受けて原因を特定するとともに、適切な治療を開始することが大切です。

1-3授乳はできるのか

陥没乳頭は見た目が正常な状態ではないため、温泉などのパブリックスペースで引け目を感じてしまうこともあるでしょう。ですが、さらに深刻な状況となってしまうことも考えられます。それは、授乳が可能か否かという問題です。では、陥没乳頭になってしまった場合、無事に授乳を行うことはできるのでしょうか?

結論からお話しますと、陥没乳頭であっても基本的には授乳を行うことができます。ただし、お母さんのもともとの乳首が小さすぎたり、奥深くまで沈みこんでしまっている場合には、赤ちゃんがお母さんの乳首に慣れるまで授乳が困難な状態が続くかもしれません。

2.母乳のメリット・デメリット

赤ちゃんがこの世に生まれて初めて口にする食品、それは母乳です。ですが、なんらかの事情により、赤ちゃんに母乳を飲ませることができない場合もあります。それでは、母乳のメリットとデメリットについて考えてみることにしましょう。

2-1母乳のメリットとは

まず第一に挙げられるのは、経済的負担の軽減でしょう。また、初乳を赤ちゃんに与えることにより、赤ちゃんの免疫力が高まるという話も有名ですね。さらに、おっぱいを力いっぱい吸い続けることにより、赤ちゃんの顔の骨格形成に役立つというメリットもあります。

そして、母乳を赤ちゃんに与えることにより、お母さんにとっても大きなメリットが生まれます。それは、乳頭を赤ちゃんに吸われることによりオキシトシンというホルモンが分泌されるため、産後出血が軽くて済む、また、子宮系統の病気の危険性も軽減されるといわれています。

2-2母乳のデメリットとは

実は、母乳は粉ミルクと比較した場合に腹もちが悪く、授乳の間隔が短いというデメリットを持っているんです。そして、粉ミルク育児の赤ちゃんよりも黄疸が現れやすいという部分も大きなデメリットでしょう。また、短い間隔で赤ちゃんに乳頭を吸われ続けることにより、乳頭の先端部分が裂傷してしまうこともあります。

こうなってしまうと、その痛みで授乳するどころの話ではなくなり、粉ミルクに切り替えなくてはならないこともあります。特に陥没乳頭の状態で授乳を行うと、赤ちゃんが乳頭に吸いつく力が必要以上に強くなり、これが乳頭の裂傷を招いてしまうことも少なくはありません。

3.陥没乳頭になってしまったときの授乳方法

授乳の考え方は人それぞれですし、必要に応じて粉ミルクに切り替える、あるいは母乳と粉ミルクの混合で育児を行わなければならないこともあります。ですが、陥没乳頭の状態であっても母乳の出が良い場合には、なんとか自然な授乳を行いたいと考えるお母さんは多いのではないかと思います。そのようなときには、どうすればうまく赤ちゃんに母乳を与えることができるのでしょうか?

3-1搾乳

母乳の出が良いのに、なかなか赤ちゃんにおっぱいを飲んでもらえないとイライラしますし、どうかすると悲しい気分で落ち込んでしまうこともありますよね? そのようなときには、搾乳器を使用してみてはいかがでしょうか。搾乳器とは、乳頭に直接機器を取りつけて母乳を絞り出す器具で、赤ちゃんがうまくおっぱいを飲んでくれないときの心強い味方です。

また、搾乳器で絞っておいた母乳は冷凍しておくこともできますので、これを利用しないという手はありません。さらに、搾乳器を使い続けているうちに自然に陥没していた乳頭が自然に隆起した形に戻ることもありますので、陥没乳頭の方だけではなく、基本的に母乳での育児をお考えの方にも、搾乳器はお勧めすることのできるアイテムです。

3-2乳首補助カバーの使用

乳頭にかぶせて授乳の補助を行ってくれるアイテムです。このアイテムはラバー製で製造されているため、赤ちゃんによってはラバーの人工的な感触を嫌がってしまうこともあるようですが、陥没乳頭でお悩みなのであれば、ひとまず試してみる価値はあります。

また、この方法でうまく行かなかったとしても、焦る必要はありません。この方法で授乳がうまく行かない理由は、単純に赤ちゃんの好き嫌いによるところが大きいと考えられますので、そのようなときには割り切って粉ミルクを積極的に利用してみるという方法もありますから。

それでは次に、陥没乳頭の状態になったときの治療方法を、医師の見解を交えながらご紹介して行くことにします。

4.陥没乳頭の治療法その1

まずはセルフで改善することのできる方法をご紹介しておくことにします。急に陥没乳頭になってしまった場合を除き、妊娠前から陥没乳頭だった方の場合には、妊娠中期からケアをしておくとよいでしょう。そのケアとは、ご自身でマッサージを行い、乳頭が隆起しやすい状態に持って行くというものです。

方法はとても簡単、お風呂の浴槽で身体を温めながら、ゆっくりと乳頭の周囲からマッサージを始め、指先で乳頭をつまんでみて下さい。乳頭が奥まっていればいるほどなかなか隆起しにくい状態ではありますが、これを毎日繰り返し行うことで、徐々に乳頭が隆起してくるケースは案外多いものです。

特に仮性の陥没乳頭の方の場合では、数回のマッサージで乳頭が正常な形に隆起してくることもあります。厄介なのが真性の陥没乳頭ですが、この場合であっても根気よくマッサージを行うことにより、授乳本番までに多少なりとも状態が改善されることも考えられます。

いずれの場合であっても、注意して頂きたいのは必ず妊娠中期の安定期に入ったあたりでマッサージを開始するということです。というのは、慌てて妊娠初期からマッサージを開始してしまうと、その刺激が子宮にダイレクトに届いて子宮の収縮を招いてしまうこともあるからです。乳頭のマッサージは焦って行うものではありませんので、腰を落ち着けて、ゆったりとした気分で行ってみて下さいね。

5.陥没乳頭の治療法その2

陥没乳頭の治療法は、いくつかあり、軽度のもの(仮性陥没乳頭)には、埋没法やティモリアン法、重度のもの(真性陥没乳頭)は、乳頭を水平に切開し、原因の組織を処理する酒井法などがあります。どちらも乳管を傷つけたりということはないので、将来的な授乳は可能になります。
医師の判断が必要ですが、陥没乳頭治療は、40歳未満、将来授乳予定の方は、保険が適用される場合があります。

メスを使用する手術の再発率について、指で出そうとしても出てこないなど症状が重い場合(真性陥没乳頭)は10%、平均では7〜8%としているクリニックもあるようです。その場合再手術になります。

まとめ

見た目の問題だけではなく、授乳に大きな影響を与えかねない陥没乳頭は、他人に相談することができないだけに、一人で悩んでしまいがち。
ですが、一歩治療への道を踏み出せば、案外いろいろな治療方法があることがわかりましたね。まずはセルフで改善を試みるというのもひとつの方法ではありますが、それで解決することができないのであれば、思い切って専門クリニックの門を叩いてみてはいかがでしょうか。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込です。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

yamada

山田美羽

美容系ライター。エステから美容医療まで歴20年。

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監修:

阿部絵里香 医師

eクリニック 横浜みなとみらい院

東京女子医科大学医学部医学科卒業。その後、慶應義塾大学病院などで形成外科医として顔面や体表の腫瘍、外傷や傷跡の治療、乳房再建手術など、形成外科全般の診療に従事。形成外科医として培ってきた豊富な経験と、女性ならではの視点を活かし、2024年にeクリニックに入職。現在、副院長を務めている。
得意な施術は、婦人科形成、二重整形、眉下切開、ヒアルロン酸、糸リフト。

2017年 東京女子医科大学医学部医学科 卒業
2019年 慶應義塾大学病院 形成外科 入局、東京都済生会中央病院 形成外科
2020年 国際医療福祉大学成田病院 形成外科
2021年 国家公務員共済組合連合会立川病院 形成外科
2022年 横浜市立市民病院 形成外科、慶應義塾大学病院 形成外科(チーフレジデント)
2023年 横浜市立市民病院 形成外科
2024年 eクリニック

この記事の監修ドクターが所属するクリニック

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