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ボトックスやヒアルロン酸製剤を用いた治療は美容皮膚科でも美容外科でも毎日たくさんの方が受けられている施術です。数年前まではボトックスやヒアルロン酸といってもまだまだ敷居が高かったり、存在すら知らない方がほとんどでした。
しかし、レーザー治療などで美容医療が広く一般的になってきたことによりボトックスやヒアルロン酸などの注入治療も身近な存在と感じるようになった患者さんが増えています。美容クリニックで勤務する看護師として肌の施術をしながらお話していると、「気になっているけれど私に合っているのかしら?」というお声をよくいただきます。また、ボトックスは定期的に受けているものの、ヒアルロン酸は価格がやや高いため悩んでいるという方も多くいらっしゃいます。そんな皆さんが気になっているヒアルロン酸治療について今回は解説していきます。
【監修医師からのワンポイント】
ヒアルロン酸製剤を用いた治療はその安全性と手軽さから広く普及し、多数の企業が市場に参入したことでどんどん進化しています。元来はfillerとしての使用が中心だったものの、スネコスやプロファイロといった次世代のヒアルロン酸製剤が登場したことで、その適応は著しく拡大しました。
ヒアルロン酸とは
まず、そもそもヒアルロン酸とは何なのかという質問を受けることもあるのですが、ヒアルロン酸とは人間の体に元々含まれている成分(多糖類)です。保水性に富み、ヒアルロン酸1gで水分を2Lから6L保つことができると言われています。
ヒアルロン酸は皮膚の水分を保持したり、関節の動きを滑らかにするなど多様な働きをしています。ドラッグストアに並んでいるスキンケア用品にも保湿成分として含まれていることもあるため、耳にされたことがある方も多いのではないでしょうか。肌の水分量や骨のボリュームの減少により30代後半から顔が痩せたり肌にハリがなくなることでたるみが出てきてしまいますが、そういった箇所にヒアルロン酸を注入することで若々しい印象を与えることができます。
70代では赤ちゃんの5分の1程度にまでヒアルロン酸が減ってしまうこともわかっており、知らず知らずのうちに老化が進んでいるのです。前述したようにヒアルロン酸自体が元来体内に存在している多糖類であることから、ヒアルロン酸製剤はアレルギーも少なく、治療の結果がもし気に入らなくてもヒアルロン酸を溶かす酵素を注入することで、ヒアルロン酸を溶解させることができるというのが強みです。
一方で、ボトックスの治療で気に入らない結果が出てしまった場合は残念ながら現時点で拮抗薬(効果を打ち消す薬)は存在しておらず、ヒアルロン酸と違って効果が切れるまで3カ月程度待たなければなりません。
ヒアルロン酸を用いた治療は直後から変化を実感できることからも満足度が高くもっと早くやっていたらよかったと言われることが多いです。
ヒアルロン酸を入れる場所
ヒアルロン酸はボリュームが欲しい部位(額、こめかみ、鼻、口唇、顎、ほうれい線やゴルゴ線など)にボリュームを補充する目的で使用できるほか、保水力に期待して広くお顔全体に注入するような使い方もできます。
最近のヒアルロン酸製剤は効果の持続も長く、施術の値段が高いと嫌厭される方はいらっしゃいますがよくよく考えると意外とコスパの良い施術だと思います。
ヒアルロン酸の種類
ヒアルロン酸製剤にはいくつもの種類があり、使用する目的によってそれらを上手に使い分ける必要があります。以降、少し詳しく説明していきます。
ジュビダームビスタ
ジュビダームビスタとはアメリカのアラガン社のヒアルロン酸で厚生労働省の認可を受けており、世界的にも最も認知度の高いシリーズだと思います。バイクロスという技術を使い、高分子と低分子のヒアルロン酸を掛け合わせて分子同士の結合を強めているため、従来のヒアルロン酸よりもちがよくなっています。
ジュビダームビスタシリーズの中にはボライト、ボルベラ、ボリフト、ボリューマ、ボラックスなど複数の製剤があり、これらはヒアルロン酸の濃度≒「硬さ」に違いがあります。一般的には「硬い」製剤はもちがよく形状維持に優れ骨の近くなど深部に使用することが多く、「柔らかい」製剤は皮膚表面に近い部位に使用できますがもちはやや落ちるといわれています。
①ボライト
ボライトは1番粘度が低く柔らかいもので、皮下に注入することにより肌の水分量を上げて肌質を良くしたりハリツヤを出すことのできるヒアルロン酸です。シリーズの中で最も新しい製剤で、注目を集めています。
②ボルベラ
ボルベラは2番目に柔らかい製剤で、涙袋や唇のボリュームを出し、形を整えることに使用されます。滑らかな製剤であるため柔らかい目元に利用されることもあります。
③ボリフト
ボリフトは粘度や弾力が適度にあるヒアルロン酸でゴルゴラインや頬のボリュームを出す目的で使われます。ボリューマと比べると柔らかいため、多くの部位に使用できる製剤です。
④ボリューマ
ボリューマはボリフトよりも粘度や弾力が高くこめかみや額、頬などにボリュームを出すことができるため、よく使われるヒアルロン酸です。
ボリューマの得意とする額やこめかみ領域は、痩せてしまうとゴツゴツした男性的なシルエットになってしまうため、本製剤を使うことで手軽に女性らしい、若々しく丸いシルエットにすることが可能で、人気です。
⑤ボラックス
ボラックスはジュビダームビスタシリーズの中で最も硬い製剤です。硬い製剤のため骨の代替として使用することが可能で、鼻を高くしたり顎を形成したり、ほうれい線の基部(ほうれい線と鼻翼の合流地点)の深部、骨の直上に注入してほうれい線を薄くする、通称「貴族ヒアル」と呼ばれる処置にも本剤がよく使用されます。効果も直後からわかりやすく1年半程度効果が持続します。
スネコス
スネコスはイタリアのProfessional Dietetics社が開発した新しいタイプのヒアルロン酸製剤でジュビダームビスタと違ってボリュームを出したり形を作る目的ではなく、肌のブースター・栄養剤的な目的で使用されるヒアルロン酸です。
非架橋のサラサラなヒアルロン酸に6種類のアミノ酸が配合されており、治療対象の皮膚の下に広く製剤を注入することで、アミノ酸が作用しコラーゲンやエラスチンの産生が促される、という仕組みのようです。通常のヒアルロン酸製剤では対応が難しかった皮膚表面の細かいシワや青クマの治療に使用することができるため、注目を集めている製剤です。
プロファイロ
プロファイロもイタリア製ですがIBSA社という、スネコスとは別の会社が開発したヒアルロン酸製剤です。スネコスと似ておりお肌の水分量を増やしたり肌質の改善ができます。
前述したスネコスとの違いはプロファイロが架橋型のヒアルロン酸製剤であるということと、アミノ酸は含有していないという点です。プロファイロは架橋型のためスネコスほどサラサラではありませんが、一方でプロファイロが持つ独自のヒアルロン酸の架橋構造により深部の組織にまで拡散して保水性を発揮することができ、加えて線維芽細胞や脂肪幹細胞の活性化を促し皮膚の深部にまで質の改善が得られるようです。
製剤の性質上ヒアルロン酸がゆっくり拡散して効果を発揮するため施術方法も独特で、IBSA社の推奨する部位(顔・首だと左右合計10ヶ所)に、0.2ccずつポツン、ポツンと注射をし、製剤が自然に拡散するのを待ちます(BAPテクニック)。
皮膚の質の改善、という意味ではスネコスもプロファイロもよく似ていますが、スネコスの方がより表在の若返りに、プロファイロはより深部の若返りに向いていると言えそうです。
最近のヒアルロン酸注入の傾向
特に多いのは、唇と涙袋のヒアルロン酸が10代や20代の若い患者さんから人気です。少しの変化ですがメイクがしやすくなったり、オペは怖くてなかなかトライできない方でもパーツの魅力が増すため気軽にトライできるというのが人気です。
もし、気に入らなくてもヒアルロン酸溶解酵素で溶かすことができるため、安心して使用できます。唇のヒアルロン酸は加齢によって薄くなり人中も伸びてくるため、40代以降の方にもお勧めできる施術です。
しかし、注入しすぎるといかにもヒアルロン酸を入れているような唇になってしまうこともあるため、そうなりたくない方は自然にしたいと前もって注入する医師に伝えることが重要です。こうなりたいと写真を見せるのも有効でしょう。使用するヒアルロン酸の量も少なめのため、費用も20,000円から40,000円と低額なことも人気の大きな理由かと思います。
また、日本人は顎が小さい方が多く、顎のヒアルロン酸も年代問わず人気です。顎ができるだけで横から見た時のEラインが整い綺麗になるだけでなく、フェイスラインがすっきりとして痩せて見える効果もあります。その場合はボトックスを注入すると筋肉の動きを休ませることができるため、ヒアルロン酸の吸収を遅らせることができ長持ちするためヒアルロン酸とボトックスの併用をお勧めしています。
ハイフやサーマジェンなどで改善しないほうれい線は意外と凹みが原因のこともあります。上を向いて鏡で顔を見た時にもほうれい線が気になる方は、たるみによるほうれい線ではなく凹みによるものが多いので、その凹みを埋めてあげるだけで改善することがあるのです。
大体、左右合わせて1〜2cc程度でほうれい線が埋まりフラットに若々しい印象になります。今までハイフを何回もしてきたのにほうれい線が気になっていた方にはとても喜ばれました。
30代後半以降の方に最近人気なのが、スネコスです。肌の元気がなくなってきた方や目元のシワが気になると相談を受けることが多く、オペはまだ怖いけれど何か施術で対応したいという方に提案させて頂いています。
1クールしっかりスネコスを注入した方は肌質も良くなり若々しい肌になったと喜ばれることが多いです。クマにも効果があるため、クマ治療を注入で行いたい方にも良いでしょう。
カニューレは必要なのか
ヒアルロン酸製剤の注入に際しては、カニューレ(先の尖っていない針)を使用することがあります。ヒアルロン酸製剤を使用する上で施術者が最も留意しなければならないのは「血管の中にヒアルロン酸製剤が入ってしまう」ことで、万が一そのような事態に陥ると血管が詰まり、血管に栄養される組織が死んでしまう可能性があります。このような事態を避けるために施術する医師は解剖を熟知していなければなりませんが、更なる安全対策として、血管に刺さりにくい先端が鈍なカニューレを使用することがあります。
医師によってヒアルロン酸製剤の入れ方が異なることがあるためカニューレの使用の有無は医師の判断によりますが、特別な針のため通常別途料金がかかりますが、安全性等を考えると損失になることはありません。
何らかの理由でどうしてもカニューレを使用したくない方は前もって相談するようにしましょう。
まとめ
ヒアルロン酸製剤を用いた治療は値段が高いことや芸能人がよくヒアルロン酸顔と揶揄されることでいいイメージを持っていない患者さんも多くいらっしゃいます。ただ、適応さえ間違わなければ即効性がありダウンタイムもほとんどないとてもいい施術です。
目的・治療したい部位によってヒアルロン酸製剤を用いた治療の適応の有無と製剤の種類が変わってくるため、自分に向いている製剤はなんなのか大まかに検討してクリニックに行かれると良いかと思います。ただ、自分で何が合っているのか、そもそもヒアルロン酸があっていないのではないか、不自然にならないか等不安な気持ちを抱えている方も少なくありません。
そういった場合はすぐに施術を行うのではなくカウンセリング後に一度検討してから行うことをおすすめします。自分の理想と施術の結果がかけ離れていて、思っていたのと違うという方も中にはいらっしゃるためモニター写真や自分の理想とする写真と照らし合わせて医師との理想の擦り合わせをしっかり行いましょう。
そうすることによって理想と現実のギャップが減少します。また、ヒアルロン酸の量と価格は比例するため、どの程度の予算であるかしっかりと伝えることで理想に近づけるためにはどのような注入の仕方をするのか医師と相談することが可能です。
他院で予算を伝えておらずたくさん注入されてしまったとのお声も時に聞く事があります。予算が少ないことを知られるのが恥ずかしいと思う方もいらっしゃいますが、事前に伝えて頂くことでご予算の範囲内で最大限の効果を生むための工夫などを検討することができます。
ここまでヒアルロン酸治療について詳しく解説してきました。満足度が高く安全性も高いアルロン酸治療は、多くの方に向いている施術だと思いますので、あまり気負わずにぜひ一度トライしていただきたいと思います。
*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。
トマト看
4年生大学の看護科を卒業後ICUを1年経験し、救急医療や重症看護を学んだ。その後、複数の美容皮膚科や美容外科で経験を積み美容看護師として働いて3年目になる。日頃からエビデンスやその方それぞれにあった美容医療を提案している。
患者さんからの指名も多く、美容の豆知識を呟いているX(旧Twitter)ではフォロワー2,500人と支持を得ている。
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監修:
中務秀一 医師
Bellefeel Clinic新宿
日本形成外科学会専門医。2006年に岡山大学医学部医学科を卒業後、日本一忙しいとも言われる湘南鎌倉総合病院で一般外科の修練を行い、日本外科学会専門医の資格を取得。東京大学医学部形成外科学教室の光嶋勲教授(当時)との御縁で同教室に入局後、杏林大学医学部附属病院、東京大学医学部附属病院、国保旭中央病院でマイクロサージェリー、外傷、再建を中心とした形成外科学の研鑽を積んだ。2016年頃から美容医療の道も歩み始め、現在に至る。帰国子女。
得意分野はネックリフト、フェイスリフト、脂肪吸引、脂肪移植、各種修正術、形成外科一般。
2006年 岡山大学医学部医学科卒業
〜2008年 広島市立広島市民病院初期研修
2008年 湘南鎌倉総合病院外科
2014年 杏林大学医学部形成外科
2016年 東京大学医学部形成外科
2017年 国保旭中央病院(形成外科医長)
〜2023年 ルーチェクリニック銀座院
現在 Bellefeel Clinic新宿 院長
執筆:
トマト看看護師
4年生大学の看護科を卒業後ICUを1年経験し、救急医療や重症看護を学んだ。その後、複数の美容皮膚科や美容外科で経験を積み美容看護師として働いて3年目になる。日頃からエビデンスやその方それぞれにあった美容医療を提案している。
患者さんからの指名も多く、美容の豆知識を呟いているX(旧Twitter)ではフォロワー2,500人と支持を得ている。
3次救急病院(ICU)
美容皮膚科
美容皮膚科・外科
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