スポンサーリンク
※この記事は2015年に発表されたものです。
2012年に公開された映画『ヘルタースケルター』(原作・岡崎京子、監督・蜷川実花)は、同じ女として衝撃的だった。いわずとしれたストーリーは、全身整形のスター「りりこ」が、芸能界の頂点に上り詰めるも、ある出来事がきっかけで「整形歴」を暴かれ、美容整形の後遺症も悪化し、追いつめられていくというもの。多くの人はたぶん、この作品を見て反射的に、「整形美女の顛末」や「美を追求し続けることの怖さ」を感じたと思う。実際、筆者の周りでもそのような感想を述べる女性は多かった。が、今回はその、”運命に翻弄された悲劇のヒロイン”、りりこが、ほんとうの意味で「実は主体的だったのではないか」ということを考えてみたい。
映画『ヘルタースケルター』のキャッチコピー「最高のショーを、見せてあげる」が象徴するもの
12年公開の映画『ヘルタースケルター』は、原作と比べて残念な点もあったが、キャッチコピーがとにかく秀逸だった。「最高のショーを、見せてあげる」――これは間違いなく、主人公、沢尻エリカ演じる「りりこ」の主張だ。「見せてあげる」という言葉の、どこがすごいのか。りりこのような職業(タレント、女優、モデルなど)は、ふつう「見られる立場」であることを強く意識しているはずだ。りりこは、それをあえて「見せてあげる」と表現する。「女としての商品価値でもって、社会から見られる、消費される」はずのタレント、りりこが、いつのまにか「見る存在」として、マウントポジションに立っているのである。しかも「最高のショー」である。この「ショー」は、原作でより詳細に描かれている。彼女が全身整形でスターに上り詰め、そして凋落していくさまは、すべて「ショー」なのだ。そして、りりこはそれを十分に認識している。原作では、より「りりこ」が客観的に自分を見つめている様子が描かれている。その欲望へと向かうエネルギーは、こちらが圧倒されるほどだ。

出典 http://www.eyescream.jp/special-all/interview/mika-ninagawa
女として「見られることの苦しみ」から解放される方法
りりこを全身整形させた芸能事務所の女社長は、彼女を若かりし頃の自分と同じような外見に作り上げた。いわばりりこは、女社長の不気味な欲望が投影された「作品」なのだ。女社長の欲望や、若い女性たちの憧れを一心に集め、りりこは美の「記号」としてメディアに流通する。若さと、作られた美貌でメディアを席巻し、りりこは苦悩と恍惚を味わう。体はいつか、医療行為の副作用で崩れてしまう。苦しんでいるように見えるりりこだが、こんなことも言っている。
「あたしはあたしがつくったのよ あたしが選んで あたしがあたしになったのよ」(岡崎京子、『ヘルタースケルター』祥伝社、2003より)
彼女は壊れていく過程で、実はすごいことを言っている。「見られることの恍惚も苦悩も含め、あたしの人生は、あたしが選んだ」と断言しているのだ。誰にも私をコントロールなんてさせない。あたしが、すべてをコントロールしてやる。誰がなんと言おうと、あたしは、あたしなりの幸せを掴んでやる。それが世間から非難されたって、何が問題なの?……こうしてりりこは、芸能界で「見られること」の煩悩から解放されていく。映画版では、そのあたりのプロセスが細かく描かれていないのが残念だが、原作ではより深く、彼女が「解放」へと向かう過程がわかるつくりになっている。
「見られる側」から「見る側」へ ※ネタバレ内容あり
『ヘルタースケルター』を、整形美女の崩壊ストーリーという筋書きだけで見るのはもったいない。同作品には、「見られる存在」である女が、いかにして「見る存在」へと変貌を遂げるか、という重大な論点が隠されているからだ。りりこは最終的に、美容整形手術の後遺症が限界に達し、メディアにもゴシップを書き立てられ、困窮する。結果的として、大勢のカメラの前で記者会見をすることになる。が、その直前、彼女はまったく動じることなく、ナイフで自らの片目をくり抜くのだ。いわばりりこは、美しいスターから、一夜にして「異形の者」となったわけだ。
そんな彼女は数年後、異国の地で「片目のない女」として、フリークショーに出ていることが示唆される。りりこは「他人に見られるために作られた顔」を、ギョッとするような「異形」に自ら変え、それを見せ物にしている。観客は、手を叩いて喜ぶ。いや、私が「喜ばせてあげている」のだ。りりこは言うだろう。「フリークショーに出ている私と、芸能界に君臨していたときの私は、違うように見えるかもしれないけど、基本的には同じよ。私が、『私を見せる主体』であるということ。その構造は、私の外見がどんなに変わっても、同じなの」。
「見られる側」ではなく「見る側」にいる限り、りりこは確固たる主体性を体現している。多くの女にとって(男にとってもそうかもしれないが)、「見られる側」でいることの苦悩は大きい。他者の目を延々と気にすることになるからだ。だからこそ、あっけらかんと「見る側」に回ってしまうりりこの「主体性」に、多くの鑑賞者(特に女性)は虜になったのではないか。『ヘルタースケルター』を読むとき、私はいつも、1人の「見られる存在」たる女として、りりこの主体性に憧れる。そういう女は、結構いるのではないかと思う。
■SNSの情報だけでは不安……という方へ
症例写真や口コミだけでは分からない“医療的な視点”があります。美容医療の特徴や向き不向きを医師が丁寧に監修した記事がありますので、より安全に施術を選びたい方は参考にしてください。
-
人気のたれ目形成のリスク、ダウンタイム、痛みとは。意外と知らない目尻切開との違いも解説
Contents 意外と知られていないたれ目形成と目尻切開の違いとは たれ目形成のリスク、デメリット、ダウンタイム 目尻切開のリスク、デメリット、ダウンタイム たれ目形成と併用すると良い施術 まとめ 【監修医師からのワンポイント】たれ目形成は当院でもよく行っている手術ですが、誰にでも似合うわけではありませんし、リスクも伴います。方法としても糸で縫合するだけの方法、皮膚切開をする方法、目の裏の粘膜側から切開する方法など様々です。どのような目が似合うのか医師とよくシミュレーションして決めましょう。また、目尻切開も人気の高い手術です。目の周りの骨格などを加味して幅を決めていきます。大きく目の横幅を変えたい場合は目尻靭帯移動術を一緒にやると良い効果がでます。いずれにせよ、よく医師と相談し、最適な方法を見つけてください。 日本人はその他の
この記事は、
BIOTOPE CLINICの
苅部淳医師が監修しています。 -
若いうちのお悩みも多い首のシワ。忘れがちな日常のケアをしつつ、切らない美容医療施術も取り入れて
Contents 首のシワの種類 首への美容医療 自宅でできる首のシワケア まとめ 首をびよーんと引っ張る癖のある方いらっしゃいませんか?ドキッとしたそこのあなた。首を見てみると、首のたるみやシワになっているかもしれません。首は顔と繋がっているため鏡で目に入ることが多く、お悩みを相談されることが顔と同じくとても多いパーツです。 シワだけでなくイボやシミ・くすみも目につくため、お悩みの方がとても多いのです。株式会社アースケアが行なった調査によれば100人中68%の女性が首に年齢が現れると回答しています。 半数以上が顔だけでなく、首の老化により年齢を感じているのです。顔を隠して首だけを見ても若いのか年齢を重ねているのかがわかるというのは、とても興味深いなと思いました。また、コロナによりマスクをつけることが習慣化してからは化粧品原料等を製造する丸善製薬株式
【すぐに探せます![地域✕施術]全国おすすめクリニック一覧はこちら】
北条かや
1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演する。
【Twitter】@kaya_hojo
スポンサーリンク
執筆:
北条かやライター
1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『こじらせ女子の日常』(宝島社)『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。
同志社大学社会学部卒
京都大学大学院文学研究科修士課程修了
民間企業勤務を経てライター、著述家として活動
出演
『新世代が解く!ニッポンのジレンマ』(NHK)、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)
著書
『キャバ嬢の社会学』(2014年星海社新書)
『整形した女は幸せになっているのか』(2015年星海社新書)
『本当は結婚したくないのだ症候群』(2016年青春出版社)
『王子様はどこへ消えた?――恋愛迷宮と婚活ブームの末路』(2019年青春出版社青春文庫)
『こじらせ女子の日常』(2016年宝島社)
『インターネットで死ぬということ』(2017年イースト・プレス )
スポンサーリンク

