出産後、多くの女性が経験する抜け毛の悩み。シャンプーしたときに排水口に溜まった抜け毛を見て「このまま薄毛になってしまうのでは……」と不安を覚えた方もいるのでは? では、この産後の抜け毛はいつまで続くのでしょうか。ここで産後の抜け毛の原因や対策、その他の女性の抜け毛・薄毛のトラブルについて詳しく説明しましょう。

目次

1.産後の抜け毛とは

妊娠中はそれほど気にならなかった抜け毛が出産後、急に増えた……。こんな声をよく聞きますよね。産後の抜け毛は「分娩後脱毛症」とも呼ばれ、多くの女性が悩む症状のひとつです。産後はさまざまな体調の変化が起こるだけではなく精神的にもストレスを感じやすい時期。抜け毛の原因と対策を知って、ストレスの元となる不安を解消しましょう。

産後に髪の毛が抜ける原因

産後に抜け毛が増える原因はずばり「ホルモンバランスの変化」にあります。まず、女性ホルモンの種類と主な役割をおさらいしておきましょう。

・プロゲステロン(黄体ホルモン)
 妊娠を維持するためのホルモン。乳腺を発達させたり、子宮のはたらきをコントロールしたりする
・エストロゲン(卵胞ホルモン)
 女性らしさを司るホルモン。肌や髪のコンディションを整える、気持ちを前向きにするといった作用も

通常、この2つは月経周期に合わせて交互に優位になりますが、妊娠中は妊娠を維持するため、プロゲステロンだけが優位になります。出産後、3カ月くらい経つとこのバランスは出産前の状態に戻ろうとして、いずれの女性ホルモンも急激に減ることに。

頭髪は4~6年くらいかけて抜けて生え変わるというヘアサイクルを繰り返しています。エストロゲンにはこのヘアサイクルのうち、毛髪が伸びて成長する「成長期」を長引かせる作用があるのです。妊娠中、抜け毛がいつもより少なく感じるのはこのためだと考えられています。

しかし出産後、急激にエストロゲンが減少すると毛髪は持続していた成長期を終え、成長が止まる「退行期」を経て、抜ける準備をはじめ、実際に毛髪が抜ける「休止期」へと移り変わることに。こうして「抜けずに伸び続けていた髪が一気に抜けるような感覚」を覚えるのです。

このように産後の抜け毛はホルモンバランスが元に戻るという体の自然な摂理にともなって起きているのです。抜け毛が増えるとショックですが、あまり考えすぎるとかえってストレスを増やしてしまうので、「そのうちおさまるはず」と考えるようにしてみてください。

産後の抜け毛はいつからいつまで?

後の抜け毛はいつからいつまで?

産後の抜け毛は女性ホルモンのバランスが元に戻ろうとする出産後、3カ月くらいから1年以内にはおさまると言われています。これ以上、抜け毛が続くようであればホルモンバランスの乱れ以外にも原因があるのかもしれません。1年以上、抜け毛が続く場合、病院で相談してみてもいいでしょう。

産後の抜け毛対策

では産後の抜け毛を少しでも早く減らすためにはどのような対策をとればよいのでしょうか。

・育毛剤やシャンプーを変えてみる
ホルモンバランスの変化によって起こる抜け毛自体を防ぐことは難しいのですが、育毛剤や育毛シャンプーなどで新しく生えてきた毛髪を元気に育てるサポートをすることは不可能ではありません。

ドラッグストアで売られているような安価なシャンプーは合成界面活性剤などが配合されていて、頭皮のバリア機能を低下させ、発毛するための頭皮環境を悪化させてしまうことがあります。この時期はアミノ酸やせっけん系など刺激の少ないシャンプーに切り替えてみてもよいでしょう。

女性用育毛剤を使って頭皮の保湿、血行促進をサポートすることで頭皮環境を整えてくれるものがありますが、中には妊娠、授乳中には使用できないものもあります。購入するときには事前に確認してみましょう。ただし育毛剤はあくまでもサポート的な役割を果たすものです。高額な商品を購入するのであれば、薄毛専門のクリニックで相談する方がいいでしょう。

2.今、増えている女性の抜け毛・薄毛の悩み

今、増えている女性の抜け毛・薄毛の悩み

抜け毛や薄毛の悩みは男性特有のものと思われてきましたが、最近は女性でも抜け毛や薄毛の相談でクリニックを訪れる人が増えているそうです。続いて産後の抜け毛以外で女性が抜け毛に悩むケースについて考えてみましょう。

2-1.年齢による女性の抜け毛・薄毛

40歳を過ぎると、徐々に女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌が低下してきます。産後の抜け毛と同様、エストロゲンが低下すると毛髪の成長期が短くなって抜け毛が増え、全体的に柔らかく細い毛が多くなって髪全体のボリュームが低下してしまうのです。

エストロゲンが低下するといわゆる更年期障害の症状が現れ始めます。人によりますが、更年期障害の症状のひとつとして抜け毛や薄毛が起こることもあるようです。更年期障害は早い人で30代後半から、通常は閉経前後の5年の間に起こると考えられています。閉経する一般的な年齢を50歳くらいとすると、45~55歳くらいの間に抜け毛が増えたり、薄毛になったりする可能性があると言うことができます。

2-2.ストレスや無理なダイエット、生活習慣の乱れによる抜け毛

女性の抜け毛というと、これまでは産後の抜け毛や更年期障害の症状によるものがほとんどでしたが、最近では若い女性でも抜け毛や薄毛の相談でクリニックを訪れる人が増えています。

男性と同じように仕事ができる社会でのストレスや不規則な生活、無理な食事制限によるダイエット、夜更かしや運動不足……。ホルモンバランスはこうしたさまざまな理由によって乱れてしまいます。最近では20代でも更年期障害のような症状を訴える人もいるのだとか。また喫煙や過度のアルコール摂取も抜け毛の原因となることがあります。

幸い、更年期障害を含めたホルモンバランスの乱れによる抜け毛や薄毛は適切な治療を受け、生活習慣を改善することで症状も軽快することが多いと言われています。治療にはビタミンやミネラルの内服、育毛剤などの処方、成長因子を頭皮に注入するメソセラピーが行われます。

2-3.女性男性型脱毛症とは

クリニックで抜け毛や薄毛の治療を受ける場合、抜け毛が起きている原因をしっかり追究することから始まります。なかでも男性の抜け毛や薄毛と同じように、男性ホルモンが過剰になることで起こる女性男性型脱毛症性 (FAGA=FemaleAGA)の場合、男性の育毛剤に使用されているミノキシジルの処方など一般的な女性の抜け毛と違った特別な治療があります。

FPHL(Female Pattern Hair Loss)とも呼ばれる女性型脱毛症は、男性の薄毛のように髪の毛が徐々に抜け落ちていくということはあまりなく、頭頂部を中心に、細く柔らかい毛になり、髪のボリュームがなくなっていきます。
ホルモンの影響は論じられているものの、はっきりした原因がわかっていないのも特徴です。

3.女性の抜け毛・まとめ

昔から「髪は女性の命」というほど、私たち女性にとって大切なのが頭髪です。出産だけではなく、ストレスや生活習慣の乱れ、過度のダイエットなど抜け毛や薄毛の原因はいろいろありますが、男性の場合と違って抜け毛が起きている原因を取り除き、生活習慣を変えることで女性の抜け毛や薄毛は改善できるという意見が多くなっています。原因と対策を正しく理解して、いつまでも美しく豊かな髪をキープしたいですね。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

Emiri

Emiri

美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。

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監修:

蘇原しのぶ 医師

しのぶ皮膚科

東海大学医学部卒業。皮膚科医として大学病院で経験を積み、都内の皮膚科にて副院長を歴任。2016年しのぶ皮膚科開院し院長に就任。
しのぶ皮膚科では、一般皮膚科治療はもちろん、美容治療はヒアルロン酸注入を中心に、先生目当てに患者様が来ている。安心してリピートできるクリニックとして人気に。さまざまなSNSで積極的に発信、テレビ出演も多数。

日本アンチエイジング外科・美容再生研究会認定医
日本皮膚科学会会員など

東海大学医学部卒
北里大学皮膚科
獨協大学皮膚科
新宿皮フ科副院長
しのぶ皮膚科院長