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ほくろやイボの除去に用いられるレーザーがエルビウムヤグレーザーです。痛みが少なく、麻酔なしでほくろの除去ができる唯一のレーザーであると言われています。単に「エルビウムレーザー」と呼ばれることも。
「普通のヤグレーザーとどう違うの?」という疑問を持った方もいるのではないでしょうか。ここではエルビウムヤグレーザーについて詳しく説明していきます。
「レーザーは痛くない、ダウンタイムがない」と言われていても、実際にはそれなりの痛みや施術後に配慮しなければならないことはたくさんあります。そのなかで「麻酔なしでほくろが取れる」と言われているエルビウムヤグレーザーについて興味を持った方も多いのではないでしょうか。
まずはエルビウムヤグレーザーの特性について詳しく説明します。
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エルビウムヤグレーザーの代表的なマシンにはルートロニック社のACTIONシリーズがあります。また、クリニックによってはエルビウムヤグレーザー、サーマスキャン、ブロードバンドライト(BBL)といった複数のレーザーとライトを搭載した複合機・サイトンレーザーを導入しているところもあります。
エルビウムヤグレーザーのエルビウムというのは(erbium)原子の名前。見た目は銀白色をした金属です。
ヤグレーザーのYAGというのはイットリウムという原子とアルミニウムからできたガーネットのような透明な人工宝石。ルビーレーザーやアレキサンドライトレーザーはそれぞれ天然の宝石をレーザーの母材としていますが、ヤグレーザーはYAGという人工宝石が母材となっています。
YAGは1960年代からレーザーの母材として使用されていた素材で耐熱性、放熱性などあらゆる点において優れているとして多用されてきました。
レーザーの波長は水分吸収率がもっとも高い領域の2940nmで蒸散作用が強く、照射した部分の周囲にほとんど熱作用を起こさないタイプのレーザーです。同じように水分吸収率が高いレーザーには炭酸ガスレーザーがあります。そのため、エルビウムヤグレーザーと炭酸ガスレーザーが比較されることが多くなっています。
蒸散作用が高いということは、言ってみれば、照射した部分が蒸発してなくなってしまうということ。さらにエルビウムヤグレーザーは「熱変性、熱凝固が極めて少ない」タイプのレーザーです。熱変性が少ないということは、熱によって起こる、創収縮作用(傷が治るときに皮膚が引っ張られるようになる現象)がほとんどないということ。ただし、熱凝固が少ない分、止血効果が引くというデメリットがあります。
いわゆる「ヤグレーザー」はYAGにネオジウム(Nd)という原子を不純物として混合させています。これに対し、エルビウムヤグレーザーはYAGにエルビウム(Er)を混ぜて作ったものを母材としています。混合させる不純物の違いによって肌に与える熱作用やレーザーがもつ波長が違ってくるため、適応となる症状も異なるのです。
なぜ、エルビウムヤグレーザーが単に「エルビウムレーザー」と呼ばれることがあるか?というと、誕生した当初はレーザーの母材のほとんどにYAGが用いられていたため、省略されて名前が定着してしまったものだと考えられます。
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エルビウムヤグレーザーは「盛り上がったものを蒸散(なくす)させる」ことが得意なレーザーです。そのため、盛り上がったほくろやイボの除去に最適。数あるレーザーのなかでも、ほくろやイボの除去に関してはもっとも傷跡がきれいに治りやすいとも言われています。
炭酸ガスレーザーとよく比較されますが、水分吸収率については、炭酸ガスレーザーの約10~16倍にものぼると言われており、その分、熱損傷は炭酸ガスレーザーの半分以下で済みます。傷の治りが早いのも大きなメリットと言えるでしょう。
また、熱作用が少ないことから日本人のような有色人種への使用に適しており、レーザーの治療後に起こりやすい炎症後色素沈着になる可能性も他のレーザーに比べると低めです。
エルビウムヤグレーザーの効果をまとめてみると以下のようになります。
エルビウムヤグレーザーは熱凝固が少ない分、傷口を固まらせることができず施術時に出血が多くなるというデメリットがあります。言ってみれば、皮膚を削ることになるのでレーザーが血管に当たったときなどは施術中に血が噴き出すようになることもあるそうです。
術後も2日程度は出血と浸出液が出続けることがあるので、ガーゼで保護しておく必要があります。血管がある層まで皮膚を削ることになるため、施術後、家庭で行うアフターケアが特に重要となってきます。きちんとケアできなければ、傷跡が残ってしまう可能性も。
この点、炭酸ガスレーザーは熱凝固が高く、レーザーを当てながら止血していくようなイメージで施術ができるため、出血は最小限で済むことになります。
エルビウムヤグレーザーを受けたいと思ったら、いくつかのクリニックでカウンセリングを受けて、「施術によるリスク」と「アフターケア」について詳しく説明してくれるところを選ぶようにしてください。また、医師の技術レベルによっても結果に差が出やすいので、評判のいいクリニックを探すことも大切です。
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施術後、患部は少しへこんだような状態になります創傷被覆剤を1~2週間程度貼って過ごします。この間に徐々に肌が再生されてきます。テープははがさないようにし、メイクは患部を避けて行う分にはOK。洗顔は患部を避けて優しく行います。入浴は当日から可能です。
テープをはがした後、3~6カ月程度、患部の赤みが残ることがあります。この間、しっかり紫外線防止と美白剤(クリニックで処方してもらうことも可能)でケアします。保証制度のあるクリニックの場合、この期間に再発したときには再治療を受けることができます。
止血効果の低いエルビウムヤグレーザーは施術後もしばらく出血が続くことがあります。健康な方であれば、必ず出血は止まりますが、以下のような処置をとる必要があります(内容はクリニックによって異なります)。
施術箇所の保護はどんなに小さいものでも必ず行わなければ、きれいに傷を治すことができません。ガーゼや止血剤、創傷被覆材などを使うため「まわりの人に気づかれないようにイボやほくろを取りたい」という場合、長期の休みを利用するなどして、予定のないときに施術を受ける必要があります。
逆を言えば一定期間、テープなどで保護しておけば、キレイに治りやすいということ。アフターケアがシンプルであると考えることもできます。ただし、テープをとったあとも患部はとてもデリケートになっているので必ず、紫外線から保護するようにしてください。
この処置をきちんと行わないと、傷跡が残ってしまうばかりか、かえって汚くなってしまうこともあるので、必ずクリニックで指導されたとおりにケアするようにしましょう。
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イボやほくろをきれいに除去する効果の高いエルビウムヤグレーザー。実際の施術はどのように行われるのでしょうか。ここからはクリニックにおけるエルビウムヤグレーザーの施術プロセスや価格についてお話していきます。
・カウンセリング
肌の診察をし、状態を確認します。エルビウムヤグレーザーが適しているかどうかを判断し、適応であれば、エルビウムヤグレーザーのメリットとデメリット、リスクやアフターケアについて説明を受けます。心配な点や分からないことがあれば、積極的に確認しましょう。疑問を残さないようにするのがポイントです。
ほくろやイボの除去は大きさによってミリ単位で価格が変わるため、ここで患部の大きさを測定します。イボや稗粒腫がいくつかあるという場合は、まず小さいものを取って経過を見てから再度、他の部分の施術を受けるという方法もできます。
・洗顔、クレンジング
洗顔、クレンジングをして肌を清潔な状態にします。
・施術
大きさにもよりますが、ほくろやイボなら5分程度。痛みもほとんどないので麻酔は使用しないことがほとんどですが、ほくろやイボの大きさによっては麻酔を使用することもあります。冷却して痛みを軽減する場合も。
施術後は患部を保護するテープを貼って終了します。患部が大きい場合、冷却ケアが行われることも。施術後は患部以外の部分であれば、メイクをして帰宅可能です。
施術後の痛みはほとんど気にならないという声が多いようですが、万が一腫れや痛みが気になるような場合、クリニックに連絡して必要があれば診察を受けるようにしましょう。出血もテープから染み出てくるようであれば、クリニックに連絡してください。
多くのクリニックがエルビウムヤグレーザーの治療を受けて再発した場合、一定期間無料で再治療を受けることができる保証制度を設けています(ただし、初回のカウンセリングで複数回の施術が必要と言われた場合は別になります)。
ほとんどのクリニックはイボやほくろの大きさによって価格を決めていますが、クリニックによりばらつきがあります。1ミリ当たり4,000円くらいからが相場で最低10,000円~というところ、5ミリまで5,000円というところも。ニキビ跡改善など広範囲の治療の場合、11回50,000円~と高額になります。
カウンセリングで総額いくらかかるか説明されるので、それを聞いてから施術を受けるかどうか決めるようにしましょう。
以前の写真はいただけなかったのですが見せてもらったところ、スターラックス1540よりもエルビウムヤグレーザーの方が凹凸に効くかも。ただしダウンタイムが長く、数日水につけられないのとしばらくは自分で軟膏包帯やらないといけないのが面倒。あと、金額的にも少し高い。
— いせかいちゃんは年齢を考慮しない (@0nyankopon) January 20, 2015
@kobe__ はじめまして。私も、エルビウムヤグレーザーで一回目治療して、今日で4日目になります。
目の周りなど、かなり範囲が広いので、かなりの回数が必要との事。
その後、レーザーの治療は再開されましたか?6回のレーザーの効果はどんな感じでしょうか?— しほりん (@hah_is) February 12, 2014
@hah_is 最初の治療から一年が経ちましたが、独立した腫瘍は消えて、腫瘍がつながって盛りあがり変色したようになっていたところは高さが低くなり、だいぶ範囲も狭くなって、アトピー程度の見た目になりました。ご参考になれば幸いです。(続)
— ヨード卵 (@kobe__) February 14, 2014
「10日くらい前にエルビウムヤグレーザー受けました。 まだ赤みは残ってるし、強く照射したところはかさぶたみたいになってるけど、 全体的に傷跡が薄くなった印象です」
レーザー治療として昔から用いられているエルビウムヤグレーザー。傷跡が残りにくく、痛みが少ない反面、患部をきちんと保護してアフターケアを正しく行わないときれいに治すことができません。とはいえ、テープでしっかり2週間程度保護すればOKという風にシンプルに考えることもできます。ずっと悩んでいたほくろやイボにあっという間にサヨナラできて大満足!という声も少なくありません。
エルビウムヤグレーザーを受けてみたいという方は、いくつかのクリニックでカウンセリングを受けるなどして、信頼して任せられそうなドクターを探してみてくださいね。
*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税抜きです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。
美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。
いなばクリニック
東京慈恵会医科大医学部卒業。大学病院にて経験を積み、横浜市でいなばクリニックを開院する。一般皮膚科をメインにしつつも、美容皮膚科治療も積極的に行っています。
特に、多くの機器を導入しているレーザー治療、光治療においては地域の美容かかりつけクリニックとしてリピーターが多い。HIFUテクノロジーのウルトラセルQプラスなど話題の機器も抑えています。
東京慈恵会医科大医学部卒
慈恵医大附属病院
聖路加国際病院
いなばクリニック院長
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