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FAGAについて聞いたことはありますか?
FAGAとはfemale androgenetic alopeciaの頭文字をとったもので女性の薄毛の総称です。また最近では同様の意味でFPHL(female pattern hair loss)と呼ばれることもあります。
美容クリニックで働いていると薄毛のお悩みはご友人などには相談しにくいと言われる患者さんに多く出会います。
現代では、髪型や髪色も自己表現のひとつとされることもあり、薄毛のお悩みは生活の質(QOL)の低下にも繋がりかねない問題ですよね。
この記事では、女性のAGAが起こる原因、症状、治療についてお話ししていきます。悩まれている方の参考になれば幸いです。
性の脱毛FAGAについて
FAGAの症状
女性では更年期以降頭皮の中央部から徐々に両サイドに比較的大きな範囲で広がっていくような形で脱毛が進行することが多いです。FAGAの治療は自費となりますが、円形脱毛症や皮膚炎など病的な状態であれば保険適応でできる効果的な治療法もあります。そのため、自己判断せず医師の診察を受けるようにしましょう。
毛の構造について
毛は皮膚の付属器のひとつであり、紫外線や虫、外力などの刺激から保護する機能があります。抜け毛の末端にあるぷくっとしたいわゆる毛根の部分は医学的には毛球部と呼ばれています。この末端の毛球部に毛母細胞という細胞があり、これが盛んに分裂することで毛を作り上げていきます。毛母細胞が活発に分裂するよう司令する役割の細胞があり、これを毛乳頭細胞といいます。
毛の末端部分は毛細血管と接しており、血液中から栄養をもらうことで毛乳頭細胞が働きます。そのため、頭皮の血流が悪いと十分に毛を作る細胞が働かなくなってしまい、薄毛の原因となってしまいます。
また、毛球部の少し上には毛を支える立毛筋という筋肉があり、この付近をバルジ領域といいます。バルジ領域には幹細胞があり、幹細胞には毛や表皮、脂腺など様々なものに分化ができるという性質があります。
医療脱毛を受けた経験のある方はご存知かもしれませんが、蓄熱式の脱毛器はこのバルジ領域にレーザーの熱を加わえることで毛を産生できなくするという仕組みになっています。バルジ領域では毛の生え変わる時に次の新しい毛を生成する司令塔のような役割も担っています。
毛周期とは
毛周期とは毛が生えて、成長して、退縮して抜ける周期のことで、ヘアサイクルとも呼ばれています。毛周期には①成長期 ②退行期 ③休止期という3つの期間があります。それぞれの期間について以下で詳しく解説させて頂きます。
※期間については今回FAGAを主題としているため頭髪の場合を記載しております。パーツ毎に毛周期は変わってくるのでご注意下さい。
①成長期・・・毛母細胞が盛んに分裂し細胞増殖を繰り返し毛が太く長く成長していく時期です。成長期は2〜6年程の期間続き、毛周期に占める成長期の割合は約90%となっています。
②退行期・・・毛母細胞の分裂がストップし、細胞が自然に死んでいくことで退縮していく時期です。休止期は2〜3週間程度続き、毛周期に占める退行期の割合は約1%となっています。
③休止期・・・末端が徐々にバルジ領域の近くまで上がっていき毛髪が抜け落ちる段階です。バルジ領域まで達するとまた次の成長期が始まるようシグナルが出されて、毛の元となる二次毛芽が発生します。休止期は3〜4カ月程続き、毛周期の占める休止期の割合は約10%程となっています。
理論上、毛周期で考えると1日あたり100本以内の抜け毛であれば通常の範囲内であると考えられます。
Instagramでも毛の構造についてイラストを用いて説明しているのでご興味がある方はチェックしてみて下さい!
FAGAが起こる原因
全て解明されている訳ではありませんが、遺伝や男性ホルモンによる影響(※男性ホルモンだけでは説明できない症例もあります)、女性ホルモンが低下することによる影響が原因であると考えられています。更年期でFAGAのお悩みが出やすくなるのもホルモンバランスが崩れることが関与しているためと考えられます。
FAGA治療の考え方
女性の薄毛では毛髪が以下のような状態に陥ってしまっています。
①毛が抜け落ち新しい毛を作るシグナルを出す休止期が長く続く
②髪の毛が細くなる
そのためこのような状態を改善していくようアプローチしていくことがFAGA治療を成功に導く鍵となります。
また具体的な治療法の前にどのようにすると上記のような状態が改善されるのかFAGA治療の考え方についてお話ししていきます。
血流
毛の構造についてのページで説明したように血液が栄養を運ぶことで毛髪をつくる毛母細胞が活性化します。実際に脱毛部分を調べると、頭皮の毛細血管の機能が大幅に低下していることが報告されています。
毛を作る細胞(毛母細胞)を活性化させる
人の体では様々な化学反応が起き代謝や活性が起きています。毛の生成を行う時も、ビタミン、アミノ酸、アミノ酸が連なったペプチドなどが化学反応に必要な補酵素として働きます。
ビタミンが欠乏していると毛の成長が止まり、抜け落ちてしまったり、毛質が悪くなってしまいます。
アミノ酸はタンパク質のもととなる成分です。髪の毛はケラチンという18種類のアミノ酸で構成されており、アミノ酸は体内で合成できるもの(非必須アミノ酸)と合成できないもの(必須アミノ酸)の2種類があります。そもそもの材料が不足していると髪の毛が作れなくなってしまうため補給する必要があります。
ペプチドといっても様々な種類がありますが、休止期から成長期に移行する髪の毛を生やすときのシグナルや成長期から退行期に移行する髪の毛が成長がストップするときのシグナルにアプローチし、髪の毛を強化したり、毛母細胞へのダメージを予防する作用があります。
頭皮の健康の維持
頭皮の状態が良くないと毛の成長が上手くいかず薄毛に繋がってしまうリスクがあります。例えば皮脂が多ければ、皮脂を好むマラセチア菌などの菌が皮脂を皮膚に刺激をもたらす成分に変えてしまい痒みなどの症状を引き起こします。
痒みにより頭皮を掻いてしまうとその刺激で髪が抜けてしまいます。このように土壌がしっかりできていないと髪の毛が成長しづらくなってしまうため、炎症がある場合は保険診療の皮膚科で診察を受け、先に頭皮の炎症を抑える治療を行う必要があります。
FAGA各治療法について
それではFAGAにはどのような治療があるのか以下で紹介していきます。男性型脱毛とは治療方法が異なるためご注意下さい。
外用薬(塗り薬)ミノキシジル
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版より「ミノキシジル外用を行うよう強く勧める(女性型脱毛の場合はミノキシジル1%)」とされています。
ミノキシジルはどんな作用があるかというと
①血行を促進させる作用:血管を拡張させ血流が良くなる
②細胞増殖促進効果:毛包のサイトカイン(タンパク質)の生成が増加する
③細胞の自然死を抑制する:毛根の細胞が死ぬことで脱毛が進行するため
が挙げられ、実際に試験でもミノキシジルの有意な発毛促進効果が示されています。
注意しなければならないのが、ミノキシジルを塗り始めた初期に休止期脱毛といって一時的に抜け毛が多くなることがあります。一時的な脱毛があるということを知っていないと効果が出る前に離脱してしまいますよね。これは通常の反応であるため一踏ん張りして頂き、塗り続けてもらうことが重要になります。
副作用は痒み、紅斑、落屑(フケのような状態)、顔についてしまった場合その箇所の多毛などが報告されています。
ミノキシジルの内服について
このように発毛効果がとても高いミノキシジルですが、塗り薬の推奨度は高いものの飲み薬は行うことを推奨されていません。実際ミノキシジルを内服すると全身の毛が増える多毛の効果があります。また、血管が広がることにより血圧が下がり、脈が増加し動悸がしたり、息苦しさを感じたり、胸が痛くなるといった副作用が出現することもあります。
頭髪以外の毛も増えるため利益が少ないこと、血圧の低下による危険性が大きいためおすすめできません。
※健康被害が生じる可能性があるため海外の通販サイトからの個人輸入もしないようにして下さい。
内服薬
男性型脱毛の場合デュタステリド(商品名:ザガーロ)やフィナステリド(商品名:プロペシア)という内服薬が強く推奨されていますが、女性型脱毛の場合は「行うべきではない」とされています。
女性に内服してもらった試験ではプラセボ(偽薬)群と比較し有意な効果の差がなく、妊婦さんが内服すると男の子の胎児の生殖器官の発育に影響を及ぼしてしまう可能性があるという点が推奨できない理由となります。
植毛術
自毛植毛術は行なってもよい、人工毛植毛術は行うべきではないとされています。
自分の毛髪の場合は生着率が高いとされていますが、ポリエステルなどの人工の毛髪の場合は抜け落ちる割合が高く、拒絶反応を起こすリスクがあります。日本の法律では問題ありませんが、アメリカのFDA(日本でいう厚生労働省のような機関)が人工毛植毛術を禁じており日本皮膚科学会も勧めていないことから行わない方が良いと思います。
メソセラピーによる育毛成分の注入
メソセラピーとは針を使用し薬液を注入する施術の総称です。クリニックにより使用する機器や薬剤は異なりますが代表的なものをいくつか紹介していきます。
メソセラピーで使用する機器
・MPガン
ミシンのように針が1本ついており、針先から薬液が出るようになっているため頭皮に直接注入することができます。
・ダーマペン
髪の毛よりも細い極細針が先端に16本ついており毎秒1,920個の微小な穴を開け、そこから頭皮に薬液を浸透させることができます。
どちらも頭皮に針で穴を開ける施術のためリスクやダウンタイムとして、赤み、腫れ、皮むけ、内出血などが挙げられます。
注入できる育毛成分
・KGF:ケラチノサイト成長因子
新しい髪の毛を作り、紫外線などによる細胞のダメージを防ぐ役割があります。
・FGF:線維芽細胞成長因子
細胞の再生をサポートする役割があります。
・IGF:インスリン様成長因子
血管の新生を促し、成長期の髪の毛を維持します。
・ビタミン類
髪の毛を作るメカニズムに必要な酵素を補給します。
ヘアケア商品
医療機関専売品のFAGA分野のヘアケア商品だとペロバームがあります。
特許を取得している髪の毛の成長を促し、強い毛包や毛幹を作るよう促す成分が配合されており抜け毛を予防し、髪の毛の再生を促進する効果があります。
ペロバームは性別や年齢の制約がない点や臨床試験、毒性試験で副作用が報告されていないという点もおすすめできる理由のひとつです。
シャンプー、コンディショナー、ローションのほか、まつげ、眉毛用の製品もあります。
まとめ
髪の毛のお悩みはなかなか相談しづらいと感じる方も多いと思いますが年齢を重ねるごとに誰しも薄毛や白髪など髪のお悩みは持つものです。このようにたくさんアプローチの仕方があるので、頭皮の状態や予算、手軽さなどを考え選択することができます。FAGAについてお悩みの方は自分にはどの方法が合っているのか医療機関で相談してみて下さい。
*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。
まいまい
都内の美容皮膚科メインで働く正看護師。新人の教育担当も経験。現在は保険診療も併設されているクリニックで勤務中。美容と保険をうまく組み合わせ患者様のお悩みを解決したいと考えている。美容について勉強したことを発信しており、Twitterでは1,000人以上のフォロワーも。医療従事者としてエビデンス(根拠)に基づいた内容を伝えることを心掛けている。
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執筆:
まいまい看護師
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニックで働く正看護師。自身がニキビで悩み、SNSや雑誌などで知った情報を試すも良くならなかった経験からお肌の状態が自信をなくしたり、QOLを下げる原因にならないよう美容看護師になる。
また誤った情報で悲しい思いをする方を減らすため根拠に基づいた美容法をSNSで紹介している。クリニックでは前職、現職でも指導者・プリセプターを担当。施術だけでなくカウンセリングも行っている経験から現実的に実践できるような手軽な美容から幅広く発信。
愛知県の大学病院(救急病棟)
都内美容皮膚科クリニック
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニック
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