スポンサーリンク
Contents
シミ治療や毛穴治療を検討されたことがある方はピコレーザーというワードを聞いたことがあるのではないでしょうか?
似たような機械でQスイッチレーザーというものがあり、以前シミ取りをQスイッチレーザーで受けたという方もいると思います。
今回はよく耳にする「ピコレーザーってつまり何?」「ピコレーザーの中にも色々な種類があるけど違いはあるの?」「Qスイッチレーザーなどの他のレーザーとの違いは?」など基本的な疑問から少し難しいところまで、現役美容ナースの日々の治療経験をベースにお伝えしていきます!
そもそもレーザーとは?
LASER(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)とは、放射の誘導放出による光の増幅の頭文字を取って作られた言葉です。そう言われても、よく分からないと思うので簡単に説明すると、紫外線などの普段身の回りにある光は様々な波長が混在した光ですが、レーザーはひとつの波長の光を増幅し外部へ取り出したものということになります。
美容医療マニアの方は炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、YAGレーザーなどの名前を知っている方も多いかと思います。これは機械に使われる媒質により以下のように分類されています。
- ①気体:炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)
- ②固体:YAGレーザー(Er・・・エルビウム/Nd・・・ネオジウム)、アレキサンドライトレーザー、ルビーレーザー
- ③液体:色素レーザー
- ④半導体:GaAlAs
今回のピコレーザーはYAGレーザーにあたります。
ピコレーザーの基本
ピコレーザーとはピコ秒(1兆分の1秒)という短い照射間隔(=パルス幅)が出る機械のことです。以下の項目で詳しく説明しますが、照射間隔が短いということは衝撃波によりシミを細かく砕くようなイメージで、周辺組織に与える熱のダメージを低減できるというメリットがあります。
ピコレーザーはシミ治療にも毛穴治療にも利用できます。毛穴治療のピコフラクショナルというモードではお肌の表面への損傷はほとんど与えず皮膚の内部に極めて小さい空洞をつくることでダウンタイムが少ないという特徴があります。
照射間隔(パルス幅)が長いQスイッチレーザー
従来のシミ治療ではQスイッチレーザーが主に使われてきたので名前を知っている方も多いのではないかと思います。
同じようなシミ治療に使われるレーザーですがどんな違いがあるかというと、パルス幅というレーザーが照射されている間隔がQスイッチレーザーの方がピコレーザーよりも長いという点にあります。
Qスイッチレーザーはナノ秒(10億分の1秒)が照射間隔になります。ピコレーザーのピコ秒(1兆分の1秒)と比較するとQスイッチレーザーの方がレーザーの光が出ている時間が長くなるため、衝撃波よりも熱による影響が大きくなるという特徴があります。
ちょっとマニアックな衝撃波と熱のお話
レーザーは以下の選択的光熱融解理論をもとに使用していきます。
- ①標的(シミ、血管などのお悩み各々)を破壊する十分な熱エネルギーを持っている
- ②標的組織に選択的に吸収される
- ③熱拡散が周囲組織に及ばず標的組織のみにとまる
といったようにしっかりシミの原因は破壊しつつ周りへの損傷を最低限に抑えるよう使用するレーザーの種類を選定し、出力やパルス幅といった設定を調整していく必要があります。
ピコレーザーはパルス幅(照射間隔)が短いため光音響作用という衝撃波によりシミを破壊し、Qスイッチレーザーはパルス幅が長いため高熱作用という熱によりシミを破壊するという特徴があります。
Qスイッチレーザーの場合、衝撃波による周辺組織への損傷(光機械作用)が考慮されていないため、皮膚の中で大きな空胞が形成作用され、赤みや内出血といった炎症が惹起され炎症後色素沈着のリスクが高くなります。
ピコレーザーでどんな治療ができるのか
ピコレーザーにはスポット、トーニング、フラクショナルという主に3つのモードがあります。
最初に症例写真、施術風景を用いてそれぞれどんな施術になっているかご紹介していきます。
ピコスポット
いわゆるシミ取りレーザーがピコスポットになります。出力が高めのレーザーをピンポイントで照射していきます。照射するとシミ部分が直後は白っぽくなるIWP(Immediate Whitening Phenomenon)という現象が起こり、その後瘡蓋(かさぶた)のようになり剥がれ落ちるという経過を辿ります。
従来のQスイッチレーザーと比較すると反応が良いものの薄いシミより濃いシミを得意としており、肝斑及び肝斑と他のシミが重なっていた場合は悪化してしまう可能性もあります。このようにどのシミでも取れるわけではなく、施術後の摩擦防止や遮光といったケアができていないと炎症後色素沈着といって逆に濃く跡が目立ってしまうというリスクもあるためしっかりとシミの状態を見てもらうことが大切です。
ピコトーニング
出力が低めなレーザーを顔全体に照射することでメラニン色素を衝撃波により細かく砕き、くすみや肝斑などのシミの改善が図れます。ピコスポット後は瘡蓋(かさぶた)のようになりますが、ピコトーニングの後はほんのりと赤くなるくらいで比較的ダウンタイムが軽く、施術時の痛みも3つのモードのなかで1番少ないです。ピコトーニングの場合徐々に薄くするというイメージのため5〜10回程施術が必要となります。
ピコフラクショナル
ピコフラクショナルはお肌の表面に傷はつけず、皮膚内部に小さな空洞を作り真皮層を再構築(リモデリング)されていく過程を利用することで毛穴治療、リジュビネーション(若返り)治療を行なっていきます。チクチクとする痛みがあり、毛穴治療目的ではしっかりした赤み、リジュビネーション治療目的ではほんのりとした赤みが出るくらいがダウンタイムの目安となります。
ピコレーザーの機械の種類と特徴
ピコレーザーはピコ秒発振レーザーの総称です。多くの美容クリニックで取り入れられているピコレーザーについて解説していきます。
ピコシュア(PicoSure):Cynosure社
- ・波長 532/755nm
- ・パルス幅 550〜750ps
FDA(日本の厚生労働省と同じような機関)の承認を取得しており、パルス幅が50ps刻みの可変式であることが特徴です。
ピコウェイ(PicoWay):Syneron Candela社
- ・波長 532/785/1064nm
- ・パルス幅 300、375、450ps
FDAの承認を取得しており、最も短いパルス幅で発振できます。
エンライトン(enLIGHTen):Cutera社
- ・波長 532/670/1064nm
- ・パルス幅 750ps&2ns(サブパルス)
FDAの承認を取得しているだけでなく、532/1064nmの波長では国内承認も取得しています。市販機のピコ秒発振レーザーのなかでもっとも照射時間が長い機械です。
機械により多少の特徴の違いがあるものの、機種だけでなく適切なショット数やレーザーにしっかり反応しているかどうか、エンドポイント(治療目標)を見ているかどうかなど施術者の知識や技量も治療成果に大きく関わってくるため症例写真を見て調べたり、信頼できる美容クリニックで施術を受けられることをおすすめします。
ピコレーザーと相乗効果のある治療とは(肌治療スケジュールの一例)
前項で紹介したピコスポット、ピコトーニング、ピコフラクショナルは肌状態により他の施術と組み合わせることも有効です。
ケミカルピーリング
サリチル酸ピーリングやコラーゲンピールなどのケミカルピーリングと併用することでお肌のターンオーバー(新陳代謝)を促進し、滞留しているメラニン色素を外へ排出することができます。
ターンオーバーは加齢、紫外線により段々と遅くなっていきます。レーザーでシミの色素を細かく砕いても外へ出す機能が低下していると、レーザーを受けても改善まで時間がかかってしまうことがあるため肌状態により、ケミカルピーリングも組み合わせてもらうと高い治療効果が期待できます。
※コラーゲンピール(マッサージピール)はレーザーと同じ真皮層という皮膚の内部に作用するピーリング剤です。敢えてピーリングとレーザーで同じ層を攻める必要がないと考える先生もいるためクリニックの治療方針に合わせて併用して下さい。
エレクトロポレーションやイオン導入、パック
これらは美容成分を肌へ導入していく施術になります。レーザー治療に併用することで治療効果を高めるだけでなく、レーザー後お肌をクーリングすることでダウンタイムの軽減にもつながります。
基本的にパックなど塗るだけでは表皮上層まで、イオン導入では表皮中層から下層まで、エレクトロポレーションでは真皮下層まで導入できます(皮膚は表面から表皮→真皮→皮下組織という順の構造となっています)。
トラネキサム酸などの内服
施術中だけでなく、実は施術前からプレトリートメントとしてトラネキサム酸やビタミンC、ビタミンEなどの内服治療を行うことが重要です。
ピコトーニングやピコスポットはシミを薄くするレーザーとはいえ、メラノサイトというシミを作り出す工場のような細胞が活性化している状態だと効果実感が乏しくなったり、反対に炎症によりシミが濃くなってしまうリスクもあるので、肌状態に合わせて内服治療を行う必要があります。
ピコレーザーのその他の治療法
ピコトーニング→ピコスポット
ピコトーニングで全体的なくすみや薄いシミを改善し、残ってしまった濃いシミを最後にピコスポットでピンポイントに治療していく方法があります。
前述の通りピコスポットは比較的濃いシミ治療が得意であるため、ある程度ピコトーニングで薄くしてからスポットを検討することもおすすめです。
ボディへのピコスポット
身体にできたシミも照射することができます。顔に比べると衣服により摩擦が生じてしまったり、手元などは日焼け止めがすぐ落ちてしまい、紫外線対策がどうしても難しい場合があります。しっかりとテープなどで保護するといったアフターケアを頑張りましょう。
▼ピコレーザーでのタトゥー・アートメイク除去の医師監修記事はこちら
-
ピコレーザーの登場で変わるタトゥー・アートメイクを除去する方法
最近はおしゃれや自分を表現するためにタトゥーを入れている方も多く、眉毛やリップなどのアートメイクも主流になっています。 読者さんのなかにも施術を受けられた方は多いのではないでしょうか? どちらもとっても良い施術ですが、受けてみると「思った感じと違う……」と思われたり、歳を重ね趣味が変わってしまったり、少し時代遅れなデザインに感じてしまうケースもあるかと思います。 そんな時必要となるタトゥーやアートメイクの除去についてお話ししていきます。 タトゥーやアートメイクを入れられている方や除去を希望される方だけでなく、除去には入れる時よりもお金がかかってしまったり、時間がかかることが多いためこれからタトゥーやアートメイクを入れられる方にも是非読んで頂きたい内容となっております。 【監修医師からのワンポイント】タトゥー除去はピコレーザーが主流ですが、ピコレーザーの種類や医師の技術によ
この記事は、
ziz CLINICの
村岡史子医師が監修しています。
まとめ〜日焼け対策について〜
紫外線対策が不十分だとせっかく肌治療を行なっていてもいたちごっこになってしまい元も子もありません。施術後はもちろん、施術前も日焼けしてしまうとメラノサイト(シミを作り出す工場のような細胞)が活性化してしまい、治療が上手くいかなくなってしまいます。
肌治療の第一歩は日焼け止めを適切に塗ることなので、365日しっかりと塗るように努めましょう!
【記事の執筆・レビューに使用した参考文献等】
記事の正確性等の確保方法及び参考文献の取り扱いについては、Call to Beautyの編集プロセスをご覧ください。
『あたらしい美容皮膚科学』(2022年南山堂)
日本美容皮膚科学会 監修
クイーンズスクエアメディカルセンター皮膚科 部長 尾見徳弥 編
みやた形成外科・皮ふクリニック 院長 宮田成章 編
静岡社会健康医学大学院大学 学長・理事長 宮地良樹 編
大阪医科薬科大学 教授 森脇真一 編
*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。
まいまい
都内の美容皮膚科メインで働く正看護師。新人の教育担当も経験。現在は保険診療も併設されているクリニックで勤務中。美容と保険をうまく組み合わせ患者様のお悩みを解決したいと考えている。美容について勉強したことを発信しており、Twitterでは1,000人以上のフォロワーも。医療従事者としてエビデンス(根拠)に基づいた内容を伝えることを心掛けている。
スポンサーリンク
執筆:
まいまい看護師
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニックで働く正看護師。自身がニキビで悩み、SNSや雑誌などで知った情報を試すも良くならなかった経験からお肌の状態が自信をなくしたり、QOLを下げる原因にならないよう美容看護師になる。
また誤った情報で悲しい思いをする方を減らすため根拠に基づいた美容法をSNSで紹介している。クリニックでは前職、現職でも指導者・プリセプターを担当。施術だけでなくカウンセリングも行っている経験から現実的に実践できるような手軽な美容から幅広く発信。
愛知県の大学病院(救急病棟)
都内美容皮膚科クリニック
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニック
スポンサーリンク