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筆者は美容クリニックに勤務してから、様々な美容医療による治療を行ってきました。肌のコンプレックスが大きかったため、美容皮膚治療やスキンケアを主に行ってきたのですが、それだけではなく美容外科の施術も行ったことがあります。

筆者は肌だけでなく顔にもコンプレックスがありました。その1つが顔が丸く大きいというところです。骨格的にエラの骨がしっかりとしているのですが、それだけではなく顎下やフェイスラインの脂肪も多く下膨れ顔だったのです。

体重が重いこともあり、6キロ痩せたのですがそれでもまだ顔の脂肪が落ちずに体だけ細いというようなバランスの悪い状態でした。痩せると顔だけ脂肪が落ちる方もいれば私と同じく、どうしても顔の脂肪だけ落ちないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。

そこで筆者は、顎下とフェイスラインの脂肪吸引を勤務先のベテラン美容外科医に行ってもらうことにしました。顔の脂肪吸引といっても、脂肪吸引注射や似ているもので脂肪溶解注射など様々あります。

その中でも、私はしっかりと脂肪のあるタイプの顔つきであったため、機械による脂肪吸引を行ってもらいました。スイッチを入れると吸引ができる機械で脂肪を吸引することにより、短時間でしっかりと量を取れるというのがメリットです。
ただ、痛みが強かったり腫れが起こりやすかったり、デコボコとしやすいなどデメリットもあります。

また、勤務するクリニックではシリンジ(注射器)による脂肪吸引も行っており、ナースとして医師の介助、患者さんが不安に思われる痛みやダウンタイムのアフターケア等で実際に、接しているためとてもよく理解しています。
そこで今回は、実体験や患者さんの施術の介助などを通して脂肪吸引の実際やメリットデメリットを詳しく解説していきます。

【監修医師からのワンポイント】

脂肪吸引はとても満足度の高い施術ですが、人気が高まるにつれて修正の相談も増えてきています。ダウンタイムやリスクを正しく理解し、バズり症例だけに惑わされることなく、経験豊富で信頼できる医師を選ぶようにしましょう。

脂肪吸引のメリット・デメリット

機械での脂肪吸引のメリット・デメリット

脂肪吸引の施術は、シリンジと言って注射器で吸うタイプと機械で吸うタイプに分かれます。体や顔などどこを吸引するか、どの程度の量を吸引するかで方法を選択していきます。量や範囲が多かったり、しっかり吸引したい場所には機械が向いています。顔のジョールファットやメーラーファット、ブラジャーに乗っかるブラファットなど少ない量の吸引を行う場合は、低コストなシリンジで吸引する方法を取ることが多いです。

機械で吸引するメリットとしては、短時間で希望の量を吸引できるという点や広範囲の量が多い脂肪を吸引できるという点です。主にお腹や足、背中や二の腕、顎下フェイスラインなどでよく使われます。

機械で吸引するためパワーがありオペ時間も短いため、長時間のオペになることが少なく患者さんの負担も少なくすることができるのです。また、脂肪を多く吸引することが可能であるため、胸やお尻や顔などに脂肪を注入することもできます。

特に、胸やお尻は脂肪の量が必要になるため機械で吸引することにより満足できる量を注入することができます。脂肪細胞は一度なくなると増殖することはないと言われているため、脂肪注入をされたい方は先に脂肪吸引をして、せっかくの脂肪を無くさないように注意が必要です。

デメリットとしては、広範囲に多くの脂肪を吸引するため痛みや腫れ・内出血が出やすい(侵襲が大きい)、しっかり吸引されるためデコボコ感が残る可能性があるところです。私自身は全くデコボコ感もなく、静脈麻酔を使用してオペを行ったためオペ中の痛みもなく目が覚めたらオペが終わっているという状態でした。

しかし、体の脂肪吸引をされた方でデコボコ感が気になるという声を聞くこともありますし、オペ中の痛みが強かったと言われる方もいます。麻酔によってオペ中の痛みは変わってきますので、痛みが苦手な方や広範囲の脂肪を吸引したい方は、静脈麻酔や全身麻酔を併用されることをおすすめします。

オペ後も広範囲に多くの脂肪を吸引した場合、痛みや腫れ、内出血が出現することが多くあります。私は腫れにくいタイプなのか少し熱を持っている感じはありましたが、痛みはほぼなく、少しの内出血で済みました。

足やお腹を広範囲に多くの脂肪を吸引すると、筋肉痛のような鈍痛がすると言われており、オペ後はロキソニンなどの頓服薬を内服して経過を見ることが多くあります。痛みがひどい方では立ちっぱなしの仕事ができなかったとおっしゃる方もいらっしゃいますので、仕事復帰のタイミングもしっかり考えなければ負担が大きい可能性があります。

また、デコボコ感は拘縮だけでなく吸引できている箇所とできていない箇所が複数あることによっても生じます。医師の技術の問題であることも大きいため、美容クリニックへ数件カウンセリングに行き、信頼できる医師を指名すると良いでしょう。

どの医師を選んで良いか難しいと言われる方もいるのですが、美容外科で脂肪吸引を5〜10年程度行っている経験のある医師であれば、ひどくデコボコとすることは少ないと思います。心配な方は、アキーセルやバイブロフィット、PALなどデコボコしにくいような脂肪吸引の機械を選んでいただくとより安心できるかと思います。

シリンジ(注射器)での脂肪吸引のメリット・デメリット

シリンジ(注射器)で吸引するメリットは、吸引量が少ない代わりに痛みも少なく腫れや内出血が軽いというところです。顔のジョールファットやメーラーファットなど狙った部分の脂肪を少量吸引することが可能で、ここだけ気になるといった、ダイエットでは痩せることが難しい脂肪に向いているかと思います。

ただ、量が多めだったり範囲が広い部分には向いておらず、時間がかかったり取りきれずに脂肪が残ってしまう可能性があります。そういった場合は、機械による脂肪吸引を行うことをおすすめします。痛みも少なく、ダウンタイムも短い施術のため、ダウンタイムが取りにくい方や初めてで怖いと言った方にも提案することがある方法です。

デメリットは、量がしっかり取れないということです。シリンジの陰圧で引いていくため10〜20ccとれただけでもシリンジであれば、よく脂肪が取れたといえるため、5〜10cc程度と少量の脂肪を取りたい方向きです。

元々肥満体型ではない普通体型の女性の口元の脂肪や、顎下の少しだけ気になる脂肪にはちょうど良いかと思います。また、部分的に脂肪を吸引するため、ダウンタイム後に皮膚表面を目で見た時や、目で見てもわからない場合だと触った時にデコボコするリスクもあります。

顔は特にデコボコやひきつれが目立ちやすいため注意が必要です。余分な脂肪のみを取る場合はデコボコしづらいですが、シリンジでできるだけ脂肪を多く取りたい場合、取れる部分と取れない部分が出てしまうため慎重に行うことを患者さんにもよく説明しています。

▼脂肪吸引の経過ブログのまとめ記事はこちら

脂肪吸引の痛み

脂肪吸引の痛みに関しては、麻酔の際にチクっと注射の痛みがあります。その後皮膚に小さい穴を開けてカニューレと言って先の丸い金属の細い棒を入れて麻酔を皮膚の下に入れていきます。その時に押されるような感覚と鈍痛があります。どちらもなんとか我慢できる程度(範囲によっては我慢が難しい)ですので、どうしても不安な方は静脈麻酔や全身麻酔を利用すると良いでしょう。

シリンジ法は少範囲の吸引を想定して麻酔液の濃度を濃くすることが多いため、手術中の痛みの程度は軽い傾向があります。局所麻酔のみでも大丈夫な方がほとんどですが、笑気麻酔をつけると不安な気持ちもリラックスすることができます。機械を用いて広範囲を吸引する場合、極量を超えないために使用する麻酔濃度が薄くなります。そのため、静脈麻酔や全身麻酔を利用する方が安心できます。そのような場合は、オペの時間も長時間になりますので寝ている間にオペが終わる方がストレスも少ないです。

脂肪吸引のダウンタイム

浮腫と腫れ

ダウンタイムの痛みは、顔の脂肪吸引の場合2〜3日程度浮腫と腫れが出て重くだるいような感じです。筋肉痛のような痛みをイメージするとわかりやすいかなと思います。体の場合は範囲が広いため1週間程度痛みが続く場合もあります。

痛み止めの内服で痛みのコントロールを行える程度ですので、ダウンタイム中に不安な場合はクリニックに問い合わせたり、診察してもらうようにすることをおすすめします。

拘縮

筋肉痛のような痛みの後には、拘縮という、脂肪吸引後1週間ほどしてから起こる吸引した部位が硬く感じたりデコボコと違和感を感じる時期があります。

拘縮は、3〜6カ月程度して傷が治る過程で徐々に改善していきますが、それまでは突っ張りなどの違和感を感じる場合があります。拘縮が強い場合はインディバなどの高周波温熱治療を行うとより早く解消すると言われていますが、基本的には時間の経過での回復となります。

また、顔の場合はフェイスバンドをつけたり、体の場合はガードルや圧迫帯をつけることで術後のトラブルを減らせるため、しっかりクリニックに指定された日数を圧迫しましょう。保冷剤で冷やしたりされると尚、痛みが緩和されるためお試しいただければと思います。

脂肪吸引のリスク

血管の損傷

脂肪吸引で一番怖いリスクは血管を傷つけてしまうことによる出血です。その中でも呼吸困難になり、最悪死に至るというものがごく稀にあります。顎下の脂肪吸引でごく僅かですが死亡事故が日本でも、韓国でも起こっています。

なぜそのようなことが起こるかというと、顎下や首には大きな血管がいくつもあるため、カニューレで傷をつけると大量の出血を起こし、その出血や浮腫により気管を圧迫してしまうことにより呼吸ができなくなってしまうのです。

帰宅後などある程度時間が経過してから起こることがあるため、急に苦しくなる場合はすぐに救急車を呼ぶ必要があります。件数はごく僅かですので脂肪吸引に慣れている施設であれば過度な心配はいらないですが、術後の緊急連絡先があるかはクリニックに確認しておきましょう。

脂肪塞栓

脂肪塞栓といって脂肪吸引でダメージを受けた血管に脂肪の成分が入ってしまい肺などの大切な臓器の血管に詰まってしまうというリスクもあります。これは広い範囲の脂肪吸引をする際に起こり得る合併症で、リスクは低いのですが起こってしまうと危険なものです。体のダメージが大きいことがリスクとして考えられるため、一度に広範囲の施術を避けることが大切です。施術範囲については医師とよく相談しましょう。

ドイツの研究では脂肪吸引の致命的な合併症について、原因は出血や腹部の内臓を傷つけたこと、肺塞栓症だったという報告もあります。これからもわかる通り稀な合併症ですので、部分的で少量の脂肪吸引であればリスクはごくわずかのため安心してくださいね。

まとめ

脂肪吸引は部分痩せが叶うとても満足度の高い施術です。私自身、顎下とフェイスラインの脂肪吸引を行ったことで写真を不意に取られても綺麗なフェイスラインになりとても満足していますし、患者さんからもやってよかったとのお声をいただくことが多いです。

ただし、リスクやメリット・デメリットのあるオペですので、ご自身の希望にはシリンジや機械のどれが良いのか、本当に必要か、納得できるまで相談されてください。医師の技量によるところも大きい施術ですので、ビフォーアフターの写真や何件程度オペの経験があるのかなどカウンセリング時に不安に思うことはしっかり解消してから施術されると安心であると思います。

特に、体の足やお腹など範囲の広い部分ではオペ中の痛みが強かったり、ダウンタイムが長かったりとデメリットもありますので、仕事の休みなどダウンタイムの調整をしっかりと行いましょう。ここが後少し細かったら……そんなお悩みが脂肪吸引によって改善し、自信がついたり、好きな洋服が着れるようになったり、鏡を見るのが楽しくなる、そんなオペですので気になっている方はぜひカウンセリングなど行かれてみてはいかがでしょうか。

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【記事の執筆・レビューに使用した参考文献等】

記事の正確性等の確保方法及び参考文献の取り扱いについては、Call to Beautyの編集プロセスをご覧ください。

『Major and lethal complications of liposuction: a review of 72 cases in Germany between 1998 and 2002』(2008 National Library of Medicine)
Marcus Lehnhardt、Heinz H Homann、Adrien Daigeler、Joerg Hauser、Patricia Palka、Hans U Steinau

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

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トマト看

4年制大学の看護学科を卒業後総合病院のICUで1年勤務。その後、美容クリニックに勤務して3年目の、看護師としては4年目になる。美容クリニックはパート含め計6院の美容外科・皮膚科勤務歴があり使用した機械や介助についたオペも多い。高校生の頃から肌荒れに悩んでおり、スキンケアマニアのため市販のスキンケアやドクターズコスメの知識も豊富である。

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監修:

渓智司 医師

脂肪吸引ラボトウキョウ

北里大学医学部卒業。東京大学医学部形成外科・美容外科勤務等を経て、美容外科へ。特に脂肪吸引と脂肪注入に魅了され、脂肪吸引、豊胸専門のクリニックで院長として従事。2024年東京・銀座に脂肪吸引ラボトウキョウを開院。繊細なデザインと大胆な変化を両立させる技術を提供し、ダウンタイムの短縮にもこだわる。脂肪吸引の執刀数は3,000件以上。

2016年 北里大学医学部卒業
     焼津市立総合病院臨床研修
2018年 東京大学医学部 形成外科・美容外科
     焼津市立総合病院 形成外科
2019年 大手美容クリニック
2021年 脂肪吸引・豊胸専門クリニック
2022年 脂肪吸引・豊胸専門クリニック院長
2024年 脂肪吸引ラボトウキョウ開院

執筆:

トマト看看護師

4年生大学の看護科を卒業後ICUを1年経験し、救急医療や重症看護を学んだ。その後、複数の美容皮膚科や美容外科で経験を積み美容看護師として働いて3年目になる。日頃からエビデンスやその方それぞれにあった美容医療を提案している。
患者さんからの指名も多く、美容の豆知識を呟いているX(旧Twitter)ではフォロワー2,500人と支持を得ている。

3次救急病院(ICU)
美容皮膚科
美容皮膚科・外科

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