美容クリニックではたくさんの種類のピーリング剤が取り扱われています。ピーリングは他の美容医療に比べるとダウンタイムや痛みが少ないことから初めての施術でも手を伸ばしやすく、読者の中にも受けたことがある方は多くいらっしゃるかと思います。

ひとえにピーリングといってもシミでお悩みの方、ニキビでお悩みの方、ハリ感のなさが気になる方におすすめのもの、ダウンタイムがほとんどないもの、皮がしっかりと剥けるものなどたくさんの種類があります。
今回は施術の効果だけでなく、ピーリングを受ける上で知っておきたいリスクやダウンタイムも詳しく解説していきます!

Contents

そもそもケミカルピーリングとは

ケミカルピーリングとはお肌に化学物質(ケミカル)を塗布することにより、余分となった皮膚を剥離(ピーリング)させる治療の総称です。

ケミカルピーリングの基本は人間がもともと持つ傷が治る過程を生かして、皮膚の再生を促すものです。私たちは、うっかり怪我をしてしまっても勝手にかさぶたができ、下に新しい皮膚ができますよね。実はピーリングもこの過程を可能な限り副作用を抑えて良い効果だけを出そうと工夫され作られています。

そのため市販品を除き、ケミカルピーリングを行う際は皮膚の仕組みを理解し、安全に施術を行える医療機関で受ける必要があります。

市販のピーリングやスクラブとクリニックで受けられる施術との違い

薬局やデパートで売られているピーリング、スクラブと施術として取り扱っているピーリング剤の違いはご存知でしょうか?

市販品とクリニックのピーリングでは主に薬剤が深達する層が異なります。
誰でも自由に購入できる商品は、基本的にはどんな人でも大きな問題がなく使える商品でなければなりません。そのため、市販品には配合できる成分や濃度に条件があります。

ピーリングは剥離できる深さにより4つに分類される

【剥離深達レベル1】

最浅層ピーリング→角層

  • ・市販のご自宅で行えるようなピーリングやスクラブ

【剥離深達レベル2】

浅層ピーリング→表皮顆粒層から基底層の間

  • ・20〜35%濃度 αヒドロキシ酸(グリコール酸、乳酸)
  • ・20〜35%濃度 サリチル酸(エタノール基材、マクロゴール基材)
  • ・10〜20%濃度 トリクロロ酢酸:TCA

【剥離深達レベル3】

中間深層ピーリング→表皮層と真皮乳頭層の一部から全部

  • ・50〜70% グリコール酸
  • ・35〜50% トリクロロ酢酸

【剥離深達レベル4】

深層ピーリング→表皮層と真皮乳頭層および網状層に及ぶ深さ

  • ・ベーカーゴードン液
  • ・フェノール(濃度88%以上)

剥離深達レベルが浅い順にどのような薬剤があるのか紹介していきます。

美容クリニックで受けられるピーリングのリスク・副作用、デメリット等

上記で説明したように深達度によってピーリングを行う目的や効果が大きく変わってきます。もちろんピーリングの主成分だけでなく、その他配合される成分により他の効果が出たりするのでピーリングの薬剤別にそのリスク・副作用、デメリット等を詳しくお話ししていきますね。

▼ピーリングを受ける前に読むと◎。医師監修記事はこちら

ホームピーリング、スクラブのリスクや痛み、ダウンタイム等

角層まで(剥離深達レベル1)浸透する自宅で行えるピーリングやスクラブは比較的、副作用なく使用できるものが多く、ニキビができてしまいやすい方や毛穴詰まりが気になる脂性肌寄りの方は使うことがおすすめです。

ニキビは皮脂の分泌量が多く、毛穴が詰まってしまいアクネ菌が繁殖し炎症が起こっている状態です。アクネ菌は通性嫌気性菌といい、酸素の少ないところを好む性格になっています。そのため、皮脂で詰まった毛穴のなかはアクネ菌にとってとても過ごしやすい環境になってしまいます。

ピーリングやスクラブを行うことで毛穴詰まりを改善することができるので、角栓をピンセットで引き抜くなどは炎症が起きてしまうためNGですが、肌に負担の少ないピーリングやスクラブで優しくケアしてあげると良いと思います。

▼ピーリングの自宅ケア詳細記事はこちら

◎クリニックで買える自宅でのスキンケアアイテム

▶︎マナソープMD グリコール酸5%、10%配合ピーリング石鹸

▶︎ゼオスキン エクスフォリエーティングポリッシュ:超微粒子マグネシウム配合スクラブ

このように脂性肌の方は自宅でのこまめな角層ケアも必要になります。しかしTゾーン(額〜鼻)は皮脂量が多いけど、Uゾーン(頬〜口周り)は乾燥していたり、実はインナードライの状態であったという患者さんも多くいます。なので商品を購入される際お肌の状態を見てもらいアドバイスを貰ったり、スクラブはお悩み箇所以外は必要以上に行わない、使用頻度を守る、ゴシゴシと擦らないなど工夫されることをおすすめします。

また、肝斑がある方、極度の乾燥肌の方、ピーリング作用のあるニキビ治療薬(ディフェリンやべピオゲルなど)を使用していて赤みや皮剥けがある方は悪化させてしまう可能性があるため、積極的な使用は控えた方が良いかと思います。

グリコール酸ピーリングのリスクや痛み、ダウンタイム等

濃度により深達度は変わりますが、美容クリニックの施術として扱われているピーリングでは表皮層(剥離深達レベル2)に作用する製剤が多いです。日本人のお肌において最もマイルドで安全なピーリングと言われています。そのためお肌が弱いため、優しく効果のある施術から始めたい方には最適なピーリングです。

グリコール酸ピーリングはニキビ肌、脂性肌の改善だけでなく、小さなシミや小じわでお悩みの方にもおすすめできる施術のひとつです。シミの場合、表皮層のターンオーバー(新陳代謝の過程)が促進されるので表皮内に貯まっているメラニン(茶色のシミの原因となる色素)が角質とともに外へ排出することができます。

完全にグリコール酸ピーリングのみでシミ消すということは正直難しいのですが、薄くしたり、くすみの改善が期待できます。ダウンタイムがほとんどない施術であるため、他のトーニング(メラニン色素を粉砕し全体のお肌のトーンをあげるレーザー治療)やレーザーフェイシャルやIPL・光治療(メラニンを熱で変性させシミの改善を行うだけでなく、ニキビの改善や脱毛効果もあり、幅広く比較的マイルドに肌状態の改善を目指す治療)などシミの種類により他の治療も併用するとさらに高い効果が実感できるので、シミ治療をしっかりと行いたい場合はレーザーなどと一緒に行う方が近道となります。

サリチル酸ピーリングのリスクや痛み、ダウンタイム等

こちらも濃度により深達度は変わりますが、美容クリニックの施術として扱われているピーリングでは表皮層(剥離深達レベル2)に作用する製剤が多いです。グリコール酸は水溶性で水に溶けやすいピーリングであることに対し、サリチル酸は脂溶性で油に溶けやすいという性質があります。

そのため、皮脂や剥がれ落ちた角質が毛穴に詰まった角栓でお悩みの場合、サリチル酸ピーリングとの相性が良いかと思います。グリコール酸ピーリングと同様にこちらも多少のピリつきや赤み、乾燥が生じる場合がありますが、ほとんどダウンタイムのない施術で、初めて美容医療に挑戦する方も受けやすい治療になっています。

ハイドラフェイシャル(サリチル酸×グリコール酸)のリスクや痛み、ダウンタイム等

ハイドラフェイシャルはダウンタイムがない施術ですが、吸引されることにより一時的な赤みや摩擦によって肝斑が悪化してしまうという副作用があります。

ハイドラフェイシャルという施術はサリチル酸とグリコール酸どちらも配合されたピーリングを使用しています。ハイドラフェイシャルでは毛穴の吸引とピーリングを同時に行い、最後に美容液の導入まで一緒にできる施術です。

「ボルテックスヒュージョンテクノロジー」という渦巻効果を生み出し、不純物を簡単に除去すると同時に、保湿成分を含む美容液を肌に浸透させる独自の技術を用いることによりダウンタイムがほとんどなく施術を受けることができます。吸引されるので一時的な赤みが出ることもありますが、通常は時間の経過とともに落ち着いていきます。

また、肝斑は摩擦により悪化してしまうので、吸引は行わず薬剤の塗布に留めるのみにしてもらうと副作用が起きるリスクを抑えて施術を受けることができるかと思います。

▼ハイドラフェイシャルがもっとよくわかる医師監修記事はこちら

マッサージピール(コラーゲンピール)のリスクや痛み、ダウンタイム等

マッサージピールは通常ダウンタイムがほとんどない施術ですが、ピーリングやレチノールなどを使用している方で乾燥が強い方は皮剥けが生じたり、化学的熱傷を引き起こしてしまう可能性があります。

トリクロロ酢酸が33%配合されている真皮層(剥離深達レベル3)にまで作用する製剤です。真皮層の線維芽細胞というコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった弾力を司るような組織を増やし、コウジ酸が含まれているため美白の効果も期待されます。

トリクロロ酢酸だけではお肌への刺激が強すぎて今まで使用できなかったのですが、コラーゲンピールは過酸化水素が緩衝材として配合されているため、皮膚への副作用や痛みが最小限になっているという特徴があります。耐えられないほど痛いという方はいないと思いますが、美容看護師として施術を行う際に「唐辛子を塗られているようだ」と話されることがあり、こちらの記事で紹介するピーリング剤の中では1番刺激感を感じやすい製剤かと思います。

高濃度のトリクロロ酢酸が配合されているもののフロスティング作用(お肌の皮が剥けてくること)がほとんどないため、直後の赤みは生じてしまうもののダウンタイムが軽微な施術です。皮剥けが起こりづらいピーリングではありますが、ピーリング作用のあるニキビ治療薬(ディフェリンやべピオゲルなど)や肌への刺激にあるレチノールやハイドロキノンを使用中の方は皮膚が薄くなっている可能性があるため、普段よりも皮が剥ける可能性が高くなっています。

クリニックの規定や成分の種類、濃度によりますが1週間程度このようなお薬やスキンケアはお休みしてもらうとダウンタイムを抑え施術を受けることができます。一般的な経過だと赤みは1〜2日、皮剥けは1週間程度ダウンタイムとして生じます。

リバースピールのリスクや痛み、ダウンタイム等

リバースピールもマッサージピールと同様にダウンタイムがほとんどない施術になりますが、使用するピーリング剤の種類が多いため、皮剥けや化学的熱傷のリスクは少し高くなります。

リバースピールは先程ご紹介したマッサージピールに加え、表皮下層に深達するピーリング剤、表皮浅層に深達するピーリング剤の3つを組み合わせた施術です。名前の通り、内側からよみがえらせるようなピーリングで深い層から浅い層までアプローチできるため肝斑や色素沈着の改善が期待されます。

マッサージピールと同様皮剥けのダウンタイムが生じることは少ないのですが、2つ、3つとピーリング剤を重ねることで軽度の灼熱感や痛みがある場合があります。痛みが強くある場合はもう十分に浸透したという合図にもなり拭き取りを行います。なので長時間痛みを我慢して過ごす必要はないのであまり不安なく受けられる施術です。

ミラノリピールのリスクや痛み、ダウンタイム等

ミラノリピールは皮がしっかりと剥けるピーリング剤なので、ダウンタイムは1週間程度見る必要があります。深くにまで浸透するため、マッサージピールとリバースピール同様に化学的熱傷のリスクはあります。

トリクロロ酢酸が35%配合されている真皮層(剥離深達レベル3)にまで作用する製剤です。こちらも線維芽細胞を刺激し肌にハリを出すだけでなく、5種類の酸やビタミンが含まれていることによりニキビの改善、シミの改善効果も期待されます。

亜鉛が緩衝材として含まれており、高濃度のトリクロロ酢酸が配合されているものの施術時の痛みはほとんどありません。ダウンタイムは皮剥けがしっかり起きるので、直近の1週間程度で大切な予定がある場合は期間を空ける必要があります。

このようにピーリングと一言で言っても深達する層、配合されている成分により違った効果が期待できます。また高いリスクではありませんが、皮膚が弱っているときのピーリングは化学反応で火傷をしてしまったり、清潔が保たれていないと毛嚢炎という毛穴の炎症が生じたり、紫外線や摩擦の影響で色素沈着を生じる可能性はどの製剤でもあります。それぞれの特徴をしっかり説明を受けた上で施術を受けるようにしましょう!

▼ピーリングのバリエーションおさらいは医師監修記事のこちらをチェック

【記事の執筆・レビューに使用した参考文献等】

記事の正確性等の確保方法及び参考文献の取り扱いについては、Call to Beautyの編集プロセスをご覧ください。

『新しい美容皮膚科学』(2022南山堂)
日本美容皮膚科学会 監修
クイーンズスクエアメディカルセンター皮膚科 部長 尾見徳弥 編
みやた形成外科・皮ふクリニック 院長 宮田成章 編
静岡社会健康医学大学院大学 学長・理事長 宮地良樹 編
大阪医科薬科大学 教授 森脇真一 編

『日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)2008』
日本皮膚科学会
古川福実、松永佳世子、秋田浩孝、上田説子、薄木晶子、菊地克子、幸野健、田中俊宏、林 伸和、船坂陽子、師井洋一、山本有紀、米井希

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

MarkeTech

まいまい

都内の美容皮膚科メインで働く正看護師。新人の教育担当も経験。現在は保険診療も併設されているクリニックで勤務中。美容と保険をうまく組み合わせ患者様のお悩みを解決したいと考えている。美容について勉強したことを発信しており、Twitterでは1,000人以上のフォロワーも。医療従事者としてエビデンス(根拠)に基づいた内容を伝えることを心掛けている。

閲覧中の記事:

執筆:

まいまい看護師

都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニックで働く正看護師。自身がニキビで悩み、SNSや雑誌などで知った情報を試すも良くならなかった経験からお肌の状態が自信をなくしたり、QOLを下げる原因にならないよう美容看護師になる。

また誤った情報で悲しい思いをする方を減らすため根拠に基づいた美容法をSNSで紹介している。クリニックでは前職、現職でも指導者・プリセプターを担当。施術だけでなくカウンセリングも行っている経験から現実的に実践できるような手軽な美容から幅広く発信。

愛知県の大学病院(救急病棟)
都内美容皮膚科クリニック
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニック