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「シミ取りをしたい!」と思い、美容クリニックに訪れたことのある方も多いのではないのでしょうか? 私は美容皮膚科でナースとしてカウンセリングや施術を行っているのですが、シミ治療を行いたいと初めて美容クリニックに足を運んでくれる方がとても多いです。

そんな美容医療初心者の方も上級者も間口の広いシミ治療ですが、1回のレーザーで改善するものもあれば、内服薬の方が効果的なものもあったりとシミにも種類があり、適応となる治療も変わってきます。そんなシミ治療のリスクや痛み、治療後どのような経過(ダウンタイム)を辿るかについて分かりやすく解説していきます!

シミの種類を紹介する前にお肌の基礎知識をチェック

お肌は外側から①表皮層 ②真皮層 ③皮下組織と大きく分けられます。

①表皮層

平均0.2mm程度の厚さで、表皮層でも外側から1.角層、2.顆粒層、3.有棘層、4.基底層の順に構成されています。
一般的にスキンケアが浸透するのはこの中の1.角層の部分となっています。核を失ったいわゆる死んだ細胞で構成されていますが、お肌のバリア機能や保湿を司るのはこの角層部分で重要な役割を果たしています。

今回のテーマのシミに大きく関係するのは4.基底層の部分でここにはメラノサイトというシミの原因となるメラニンをつくる工場のような細胞(色素細胞)が存在しています。このメラノサイトという細胞は紫外線や活性酸素、摩擦、炎症など外部からの刺激によって活性化してメラニンを生成します。そうして必要以上にメラニンが生成されたところがシミやくすみとなるわけです。

②真皮層

真皮層にはコラーゲンやエラスチンといったお肌の弾力、ハリを司る膠原線維や弾性線維が位置しています。紫外線のUVAという波長は真皮層にまで到達し細胞を傷つけてしまうのでシワやたるみを引き起こします。

上記でお話ししたように、メラニンは表皮層の基底層で作られ通常は角化細胞のある上層へと送り出されるのですが、メラノサイトの障害により真皮層へ滴落することがあります。マクロファージという異物を食べてくれる食細胞がメラニンを貪食してくれますが、真皮層にまで落ちてしまったメラニンは消化されづらいため長い期間留まってしまい代謝されない状態となってしまいます。

シミの分類

ひとくちに「シミ」といっても紫外線によってできるシミもあれば、遺伝の要素が強いそばかす、炎症によって生じてしまったシミなど実はたくさんの種類があります。実はシミだと思っていたものがホクロやイボ、またはあざだったということもよくあります。また、1種類のシミだけあるという方はほとんどおらず、数種類のシミが合併している場合が大半です。

もちろん、適切にシミの分類を判断することができるのは医師のみなのでクリニックに行き診察を受ける必要があります。なのでここでは、このシミだった場合こんな施術を受けるのがスタンダードなのだとぜひ参考にして下さい!

老人性色素斑

老人性色素斑とは皆さまがよくイメージされる紫外線のダメージが蓄積することによりできるシミです。
顔や手など日光に当たる部分に生じ、比較的濃い色味でシミの輪郭がはっきりしているといった特徴があります。

雀卵斑

雀卵斑とは一般的に言われる“そばかす”のことです。遺伝の要素が強く、小学生になる頃から現れて思春期によりはっきりとしてくる頬から鼻根にかけて3mm程度の丸い形の複数のシミが生じるといった特徴があります。

遺伝子のメラノコルチン1受容体の変異体を持つ人は雀卵斑が現れやすいのですが、雀卵斑以外には白いお肌で髪の色素も薄め(茶髪や赤毛に近い地毛)、紫外線に対して敏感といった性質を持っていると言われています。

肝斑

肝斑は頬骨上や鼻下、額に左右対称で弓状に生じるもやっとしたシミです。はっきりと原因は究明されていませんが、紫外線やホルモンバランスの変化(妊娠、出産、ピルの服用など)、摩擦が発症や悪化に関与していると言われており、炎症性のシミとも呼ばれています。
男性は発症しないというわけではありませんが、肝斑に占める男女比はほとんどが女性です。

炎症後色素沈着

炎症後色素沈着とは名前の通り炎症が起きた後に生じるシミです。ニキビの跡や虫刺され、怪我が治った後にシミっぽくなってしまった経験は誰しも一度はあるのではないでしょうか。炎症=外部からの刺激なのでメラノサイトという色素を作る細胞の働きが亢進し、メラニンが増加しシミになってしまいます。

美容医療のレーザーやピーリング、光治療(IPL)、マイクロニードルの施術後もお肌が軽く炎症している状態になります。このようなダウンタイム中に紫外線をたくさん浴びてしまったり、摩擦などの負担が加わると炎症後色素沈着が生じるのでご注意下さい。

後天性真皮メラノサイトーシス

後天性真皮メラノサイトーシスはシミというよりあざの一種に分類されます。左右対称に頬や鼻に青みやグレーがかった色素斑を呈するのが特長です。こちらも原因ははっきりと分かっていませんが、紫外線や女性ホルモン、炎症による刺激が加わり発症することが多いと言われています。

シミとあざの違いって何だろう?

あざというと生まれつき=先天性のものと思われる方が多いかと思いますが、ここで説明したように後天性のものもあります。そうなると、シミとあざは何が違うのかと疑問になりますよね。

  • ・シミ:表皮層に位置するメラノサイトという色素細胞が活性化しメラニンが大量に作られてしまうため生じる色素斑
  • ・あざ:表皮層、真皮層問わず存在する母斑細胞という色素細胞が増加して生じる色素斑

このように色素を作り出す細胞の違いによってシミとあざを分類することができます。

脂漏性角化症

老人性イボとも呼ばれている良性の腫瘍です。少し盛り上がっているようなシミであれば、もしかしたらイボの一種である可能性があります。また原因不明ではありますが、露出部に多いことや中年期以降に多発することから、紫外線による影響が大きいのではないかと言われています。

▼美容皮膚科医監修のシミ治療記事はこちらから

 

それぞれのシミに対する治療

ここまでで色々な種類のシミがあり、それぞれ特徴が異なることを解説していきました。今度はどのような治療が適応となるのかお話ししていきます。

老人性色素斑に対する治療

老人性色素斑はピコレーザーやQスイッチレーザーでのスポット治療がおすすめです。数あるシミの中でも色の濃い老人性色素斑はスポット治療の反応が良く、1〜3回ほどの施術で目立ちづらくなります。

痛み

スポットは輪ゴムでパチンと弾かれるような痛みで老人性色素斑のある部分のみ数回照射する施術です。照射箇所が少ない場合は麻酔を行うことなく施術を受ける方が大多数です。輪ゴムで弾かれる程度といっても、少しパチっとする程度で意外と大丈夫だったと施術後お話される患者さんが多いです。

またひとつシミを取ったあと、他の部位も施術を希望される方もいることから痛みはあるもののそこまで不安に感じる必要はないかと思います。照射箇所が多い方や痛みに弱い方は表面麻酔のクリームやテープを貼付できます。また痛みに弱い自覚がある方はまずは小さなシミ1箇所だけ照射を希望し、大丈夫そうであればその他気になる箇所を追加するという選択肢もあります。

ダウンタイム

施術直後はレーザーの衝撃で少し空気が入ったような状態になるため、白っぽく照射部位が変化します。その後赤黒い瘡蓋(かさぶた)のようになり、2週間程度で剥がれ落ちます。新しい皮膚ができ馴染むまでは1〜3カ月、炎症後色素沈着が生じた場合は半年以上改善まで要します。

炎症後色素沈着を可能な限り生じさせないように肌色のテープやキズパワーパッドのような被覆材で瘡蓋が剥がれるまで紫外線や摩擦から保護する必要があります。

ダウンタイム2週間目以降スポットを照射しテープなどを剥がした後は状態により、お肌の漂白剤と言われているハイドロキノンや美白だけでなく炎症を抑える効果のあるトラネキサム酸などを塗ることもあります。

▶︎ピコスポット

雀卵斑

雀卵斑はどうしても再発しやすいため、残念ながら一度取ったからといって、今後も一生綺麗な状態が保てるというわけではありません。そのためダウンタイムや回数、費用を加味してどの治療を行うか検討して頂くと良いかと思います。

スポット治療

雀卵斑も比較的色の濃いシミであるため老人性色素斑と同じようにスポット治療が適応となります。
スポットを行うメリットは1〜3回程度の少ない治療回数で治療が終了するという点です。
デメリットは2週間以上のダウンタイムがあることや高すぎる出力での照射やアフターケアが不十分(摩擦、紫外線への暴露)であれば広範囲に炎症後色素沈着を生じてしまい治療前よりも目立ってしまう可能性があることが挙げられます。

ダウンタイムが取れるか、アフターケアをしっかりできるか考え、症例写真が充実しているクリニックを選ぶと良いかと思います。

▶︎ピコスポット

光治療(IPL)

光治療とは数種類の波長の光を用いてレーザーよりマイルドに幅広い悩みに対して効果を出せる治療です。雀卵斑はもちろん全体的なくすみやニキビ跡の色素沈着、ニキビ、脱毛、赤みなどにも改善効果が期待されます。マイルドであるため、スポット治療に比べダウンタイムは軽いのですが、その分治療回数は5回以上必要となることが多いです。

光治療(IPL)の痛み

少し熱いチクっとした痛みがありますが、麻酔を必要とする患者さんはほとんどいません。どちらかと言えば、痛いというより眩しさを訴える方が多いです。
筆者もIPLの施術は何度も受けているのですが、痛みはほとんど気にならないです。施術者としても痛みの理由から複数回のコースを途中でやめたいと言われる患者さんにも出会ったことはありません。

光治療(IPL)のダウンタイム

光治療はお顔全体に照射することができる施術です。雀卵斑部分はマイクロクラストと呼ばれる一時的な濃いシミに変化してポロッと剥がれ落ちます。それ以外の部分はほんのり赤みが出る程度で、一時的なもので1週間もしないうちに引いていきます。

一般的なダウンタイム経過の例
  • 施術当日
    ほんのり顔が赤くなる。シミ部分は少し濃く反応する。
  • 施術後2〜5日
    赤みは引き、シミ部分が瘡蓋のようになる。ひりつきはほとんどない。
  • 施術後1週間程度
    シミ部分がポロッと剥がれ落ち薄くなる。

▼IPL治療をしっかり深掘りしたならこちらの医師監修記事も

▶︎光治療(IPL)

肝斑

肝斑は保存療法を行うことが推奨されています。完治させることは難しく、ホルモンバランスなどの増悪因子により濃く広がってしまうシミになります。
なので治療方針は取るというより抑え込むようなイメージになります。

トラネキサム酸内服

肝斑治療の第一選択はトラネキサム酸というお薬の内服です。トラネキサム酸は風邪を引くと喉の痛み止めとして出されることもあるので内服したことのある方も多いかと思います。トラネキサム酸には炎症を引き起こすプラスミンを抑制する作用があり、このおかげでメラノサイトの活動が落ち肝斑が改善すると言われています。

肝斑だけでなく、他のシミに対しても悪化防いでくれたり、美容医療でどうしても副作用として起きてしまう可能性のある炎症後色素沈着を予防するためにも内服がおすすめされています。
内服だけでなく、外用も推奨されているのでトラネキサム酸配合のスキンケアも併せて取り入れて頂くと良いかと思います。

トラネキサム酸の内服(医薬品にあたるので医療機関での販売になります。)

※トラネキサム酸には止血作用があり、血栓という血の塊ができてしまうリスクがあります。健康な方は問題ありませんが、脳梗塞や心筋梗塞の血管が詰まる病気にかかったことがある方や抗凝固剤(血液サラサラ薬)を飲んでいる方は注意が必要です。また今は低容量ピルとの飲み合わせを問題ないと考える医師が多いのですが、どちらも血栓のリスクのある薬ではあるので心配な方は一度医師に相談されると良いかと思います。

ピコトーニング

トラネキサム酸の内服をした上でさらに改善させたい方にはピコトーニングという施術があります。こちらはレーザーの衝撃波でメラニンを細かく砕くような施術です。優しいレーザーで基本的には肝斑に対しての効果が期待できますが、炎症反応の強い肝斑は逆に悪化してしまう可能性もあります。

ピコトーニング治療の痛み

多少のチクチク感はありますが痛みはほとんどありません。筆者も何度も受けていますが痛みは気にならないものの機械によって差があるなと感じました。キャンデラ社のピコウェイという機械は痛みをほぼ感じなかったのですが、キュテラ社のエンライトンという機械では弱めの出力でも我慢はできるものの鋭いなにかでツンツンされているような痛みを感じました。

ピコレーザーのなかでも多少の差があるので痛みが心配な方はカウンセリング時トーニングを受けている他の患者さんはどんな反応をされることが多いか聞くと良いかと思います。

ピコトーニング治療のダウンタイム

ほんのりお顔全体がピンクになる程度です。施術当日からお化粧をしても大丈夫なので気にならない範囲かと思います。

▶︎ピコトーニング

炎症後色素沈着

炎症後色素沈着はお肌の代謝を上げてくれるようなピーリング剤がおすすめです。

ミラノリピール

ミラノリピールとはトリクロロ酢酸(TCA)という真皮層にまで浸透しコラーゲンを増やしてくれる成分が含まれています。またビタミンやスクワランなどの肌に栄養を与えてくれる成分も豊富に配合されており、炎症後色素沈着、くすみ、小皺、ニキビなどの改善、ハリ感UPなど幅広い効果が期待されます。

痛み

ほとんどありません。ピーリング剤なので多少のピリつきがあります。ダーマペンと併用するスーパーヴェルヴェットという施術はただ塗布するだけより、効果実感は得やすいものの強い灼熱感があるため、痛みに弱い方はまずは通常の塗布のみの施術を選ぶと良いかと思います。

ダウンタイム

1週間程度ポロポロと白く皮剥けが起こります。

一般的なダウンタイム経過の例
  • 施術当日
    赤みやひりつきが残ることがあります。
  • 施術後2〜7日
    口周りなど皮膚が薄い箇所から薄く皮剥けが起こります。もろもろと少しずつ剥けていくため、お化粧で隠すことは難しいかと思います。

▶︎ミラノリピール

▼他のピーリング剤も有効です! どんな施術があるかはこちらをチェック

後天性真皮メラノサイトーシス

後天性真皮メラノサイトーシスもスポット治療が適応となります。
老人性色素斑など他のシミでスポット治療を行う際も同様ですが、照射部位に肝斑があると濃くなってしまう可能性が高いため、プレトリートメントとしてトラネキサム酸やビタミンCなどの内服を行ったりする必要があり、すぐに施術できないこともあります。

▶︎ピコスポット

脂漏性角化症

イボの一種なので大きさにもよりますが炭酸ガス(CO2)レーザーで削っていくような治療が選択されることが多いです。

痛み

局所麻酔を行うのでレーザー照射中の痛みはありません。細い針を使用しますが局所麻酔を行う際の注射の痛みはあります。

ダウンタイム

スポット治療と同様、2週間程度茶色のテープやキズパワーパッドのような被覆剤で摩擦や紫外線から保護をする必要があります。

▶︎炭酸ガス(CO2)レーザー

▼以下の光老化の記事では、詳しく紫外線対策の方法も紹介しています。

シミ治療で要となるのが紫外線対策と摩擦防止です。美容医療と合わせて日々のケアも頑張っていきましょう!

【記事の執筆・レビューに使用した参考文献等】

記事の正確性等の確保方法及び参考文献の取り扱いについては、Call to Beautyの編集プロセスをご覧ください。

『あたらしい美容皮膚科学』(2022南山堂)
日本美容皮膚科学会 監修
クイーンズスクエアメディカルセンター皮膚科 部長 尾見徳弥 編
みやた形成外科・皮ふクリニック 院長 宮田成章 編
静岡社会健康医学大学院大学 学長・理事長 宮地良樹 編
大阪医科薬科大学 教授 森脇真一 編

『MSDマニュアルプロフェッショナル版 脂漏性角化症』(2020年MSDマニュアルプロフェッショナル版)
Denise M. Aaron , MD, Dartmouth Geisel School of Medicine

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

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まいまい

都内の美容皮膚科メインで働く正看護師。新人の教育担当も経験。現在は保険診療も併設されているクリニックで勤務中。美容と保険をうまく組み合わせ患者様のお悩みを解決したいと考えている。美容について勉強したことを発信しており、Twitterでは1,000人以上のフォロワーも。医療従事者としてエビデンス(根拠)に基づいた内容を伝えることを心掛けている。

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執筆:

まいまい看護師

都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニックで働く正看護師。自身がニキビで悩み、SNSや雑誌などで知った情報を試すも良くならなかった経験からお肌の状態が自信をなくしたり、QOLを下げる原因にならないよう美容看護師になる。

また誤った情報で悲しい思いをする方を減らすため根拠に基づいた美容法をSNSで紹介している。クリニックでは前職、現職でも指導者・プリセプターを担当。施術だけでなくカウンセリングも行っている経験から現実的に実践できるような手軽な美容から幅広く発信。

愛知県の大学病院(救急病棟)
都内美容皮膚科クリニック
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニック