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画像出典 http://image.news.livedoor.com/
※この記事は2015年に発表されたものです。
2010年から、「美魔女」という言葉を盛んに耳にするようになった。きっかけは光文社の美容系ファッション誌『美STORY』(現在は『美ST』に改題)が開催した、「国民的美魔女コンテスト」。アラフォー世代なのに年齢を感じさせず、まるで”魔法をかけているかの様に美しい”一般女性たちが、美と知性を競い合う。現在は第6回まで開催されており、グランプリが決まるたび、メディアは「奇跡の40代!」とか「まるで20代!」などと煽っている。が、同時に批判も噴出。美魔女たちは、女性たちにとってあこがれの対象である一方、好奇と揶揄の目で見られてもいる。彼女たちは、なぜこんなに嫌われてしまうのか。
小藪千豊「(美魔女ではなく)美容にお金をかけられず、キレイでもなんでもないオバハンをリスペクトすべき」
今年3月、「第5回国民的美魔女コンテスト」が開催された。約2000人の応募者の中から、見事グランプリに輝いたのは、43歳で3児の母、箕輪玖美さん。写真を見ると、まるでモデルさんのように美しく、華やかだ。実際、彼女は結婚するまで、モデル&社長秘書として活躍。現在は育児と家事に追われる日々らしい。
そんな「美魔女」のライフスタイルは、メディアでも注目された。今年4月には『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)で特集が組まれ、グランプリの箕輪さんが、「美容費は月に7~8万円」と発言する姿に、スタジオ中が感嘆。彼女の夫は経営者で、ヘアケアやホットヨガ、美容クリニックなどの費用は、すべて「夫からお小遣いとして貰っている」という。こうした、美への投資を惜しまない裕福な女性たちが、あたかも「普通の主婦です」と謙虚ぶるのが、小藪千豊にとっては気に食わないらしい。小籔は『SAPIO』15年4月号で、「キレイやったらアカンというわけではなく、それはそれでいい。だけど、(略)週に何回もエステに通って高い化粧品買ってせっせとシワを伸ばすよりも、それこそ中身が素敵なオバハンはいくらでもいる」「いろんなことを我慢して子どもを育て上げた(略)オバハンを賛辞する方向に持っていかなアカン」と、懸念を表明した。
美にお金をかけられることへの嫉妬
小藪千豊の言いたいことは分かる。世の中には「毎月のやりくりが大変」「パートで子どもの学費を稼ぐのに必死」と、苦労している中年女性もいる。一方、美魔女たちのように、美容外科通い(整形している美魔女は沢山いる)やヨガ、ジム、エステなどにお金をかけられる、裕福な中年女性もいる。そんな美魔女が「一般人です」と言って親近感を集めようとすることに、「欺瞞」を感じる人もいるだろう。
私たちはどうしても、お金持ちを妬んでしまう。特に嫌われるのは、もともと富豪の家に生まれたわけではないのに、玉の輿や事業の成功で「成り上がった」人たちだ。代表的なのが、売れっ子タレント。彼・彼女らは決して「お金持ちアピール」をしない。視聴者の好感度が下がらないようにするためだ。一部のセレブタレントを除き、みんな「私服は庶民的です」とか「コンビニやスーパーを愛用」などと発言し、セルフプロデュースにいそしんでいる。特に「美」への投資については、女性タレントを中心に口をつぐむ人が多い。女がお金をかけてキレイになることに対し、世間の目は冷たいからだ。
なぜ世間の目が冷たいのか。そこにはきっと、お金をかけて「美の高み」を目指す女性が「怖い」という感情もあると思う。

美魔女は「恐ろしい」から叩かれる
かつて、16世紀のハンガリーに実在したエリザベート伯爵夫人は、永遠の美を保つため、600人以上の少女を拉致して殺害したという。彼女は、残虐な方法で殺害した少女たちの「生き血風呂」に入り、若さを維持しようとした。この恐怖譚が、現在まで語り継がれている背景には、「永遠の美」を手に入れようとする女性への恐怖もあるのではないか。少女の「生き血風呂」に入るとまではいかないが、中年以上の女性が「美と若さ」を追い求める行為に、ちょっとした恐怖を感じる人は、結構いるのではないかと思う。
理由は、彼女たちの目的が「わからない」からだ。美魔女たちは、「美しさを追い求めるのは、夫や子供のためではなく自己満足。自分に自信をつけたいんです」と発言することもある。整形する女性も、「結局は自己満足」という言葉をよく使う。その「自己満足」が、特に男性にとっては理解できないのだ。自己満足という語彙でもって、永続的な美を追い求める中年女性たち=「美魔女」。彼女たちは、苦労している「オバハン」と比べれば、確かに何を考えているのかわからない。「オバハン」と違って、年令を重ねても「女を降りる」ことをせず、ひたすらに美を追求している美魔女たちには、底知れないエネルギーを感じる。夫以外の男性にも愛されたいのか、それとも同世代の女性と比べて「優越感」に浸りたいのか。はたまた、そのいずれでもないのか。美魔女たちが「美」を追求する理由は、正直よくわからない。だから人々は、好奇心半分でそのパーソナリティを覗きつつ、叩きたくなるのだ。「美」が志向の目的となっている美魔女たちの動機は、よくわからない。だから「怖い」。美魔女が批判される理由は、美を追求する女への、こうした「得体の知れない恐怖心」にもあるのだろう。
(参照)小籔千豊「いい年こいた美魔女をチヤホヤする国に未来ない」│NEWSポストセブン (SAPIO15.4月号より転載)
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この記事は、
STスキンクリニック青山の
田澤しおり医師が監修しています。
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北条かや
1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演する。
【Twitter】@kaya_hojo
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執筆:
北条かやライター
1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『こじらせ女子の日常』(宝島社)『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。
同志社大学社会学部卒
京都大学大学院文学研究科修士課程修了
民間企業勤務を経てライター、著述家として活動
出演
『新世代が解く!ニッポンのジレンマ』(NHK)、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)
著書
『キャバ嬢の社会学』(2014年星海社新書)
『整形した女は幸せになっているのか』(2015年星海社新書)
『本当は結婚したくないのだ症候群』(2016年青春出版社)
『王子様はどこへ消えた?――恋愛迷宮と婚活ブームの末路』(2019年青春出版社青春文庫)
『こじらせ女子の日常』(2016年宝島社)
『インターネットで死ぬということ』(2017年イースト・プレス )
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