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※この記事は2015年に発表されたものです。
化粧品関連の話題には何かとゴシップ心を働かせてしまう筆者だが、今回の事件は感慨深い。富士フィルムが今年8月、DHCの販売するスキンケア化粧品が「特許権を侵害している」として、東京地裁に「製造・販売の差し止めと損害賠償を求める『訴訟』」を起こした件だ。実は昨年9月、富士フィルムは同じ商品で、DHCに「製造・販売差し止めの『仮処分』」を申し立てている。が、折り合いがつかず、ついに訴訟に踏み切った。今回の件は、化粧品業界における競争の激しさを考える、良いきっかけになると思う。

富士フィルムが、「赤」で化粧品市場に攻め入った

富士フィルムが「DHCに特許を侵害された」と主張しているのは、同社が2007年に売り出した「アスタリフト」シリーズ。中高年層を対象とし、コラーゲンやアスタキサンチンなどの有効成分が、肌にハリや潤いを与えるという。テーマカラーは「赤」。当初は「フィルム会社が化粧品?」と驚かれたが、松田聖子や中島みゆき、松たか子などのスターを広告に起用し、大ヒット。今ではファンデーションやドリンクなど、幅広いラインナップで展開している。価格はジェリー状の美容液で約1万2000円と高額だが、売れ行きは上々のようだ。

ジェリー アクアリスタ

富士フィルム「ジェリー アクアリスタ」容量:60g 税込13,200円 画像出典 http://shop-healthcare.fujifilm.jp/

アスタリフトの商品ラインナップ

アスタリフトの商品ラインナップ 画像出典 http://shop-healthcare.fujifilm.jp/

当初、どのくらい「アスタリフト」シリーズが好評だったかは、同社ライフサイエンス研究所主任研究員(当時)・中村善貞氏のインタビューからも伺える(コメント引用元日経BPネットの特集記事より)。

” おかげさまで評判も良く、売り上げも上々です。発売当時、当社としてはかなり高い売上目標を掲げていましたが、難なくクリアすることができました。”

”「アスタリフト」は当社の女性社員も多く愛用しています。「化粧のノリが違う」「二日酔いもしなくなった」などと好評を得ています。当社はそれでなくとも美人の多い会社てすが(笑)、アスタリフトの発売以来、美人度がいっそう底上げされたような気がする。当社にお越しになる機会があれば、是非そのあたりにもご注目を頂きたいですね(笑)。”

……かなりの自信を見せている。高い研究開発費や、広告宣伝費をかけた「リターン」を実感されているようだ。バブル世代が40代後半~50代を迎えた今、アンチエイジングマーケットは大きい。富士フィルムとしては、「市場を確実に掴んだ」という自負があっただろう。

叶姉妹を広告に起用、価格は富士フィルムの3分の1

ところが2014年、DHCが次のような商品を発売した。(こちらが、14年にDHCが打ったプレスリリース)。名前は「DHC アスタキサンチン スキンケア」。富士フィルムと同じく赤を基調にしたデザインで、配合成分も同じ「アスタキサンチン」。肌にハリを与えるなどの表現も似ている。

DHCアスタ ジェル

DHCアスタ ジェル 80g 税込¥4,950 画像出典 http://www.dhc.co.jp/

しかも、DHCの化粧品は、富士フィルムの価格の3分の1だ。広告には、悩める(?)女性のイラストとともに「私は以前からアスタキサンチン配合の化粧品を使っています! でも価格が高い割にはあまり効果を感じません」という文句が。それに対して、別の女性が答え、「DHCのアスタキサンチンシリーズは、(略)5つの機能がこれ1つで完了できるのに価格もお手頃。惜しみなくたっぷり使って、効果をしっかり実感しましょう」とある。「アスタキサンチンを配合した化粧品」といえば、今のところ富士フィルムくらいなので、ネガティブキャンペーンとも取れる内容だ(穿った見方をしすぎかもしれないが)。この商品、売れ行きも良いらしい。DHP公式オンラインショップでは11月17日現在、膨大なスキンケア群の中から「売れ筋5位」にランクインしている。

中高年層に強いDHC

もともとDHCは、主要顧客が30代以上の女性だ。エイジングマーケットには強く、高価格帯からプチプラまで、さまざまなラインナップがある。ゲルマニウムやコエンザイムなど、流行りの成分をあっという間に商品化するテクニックは、見ていてため息が出るほどだ。流行を取り入れすぎた結果、多種多様な商品があふれ、デザインにまったく統一性がないのも、かえって愛おしい(HPの画像参照)。アンチエイジング市場をモノにするためには、手段を厭わない……そんな気合いも感じられる。

DHCのHPより

画像出典 DHCのHPより http://www.dhc.co.jp/

危ない橋を簡単にわたらせるほど、競争は激しい

そんなDHCだからこそ、富士フィルムの「アスタリフト」と酷似した「アスタキサンチンシリーズ」が発売された際、ネット上では一部の消費者から「これ、やばいんでないの……?」というツッコミがあった。筆者も「これは、さすがにまずいのでは」と思った。が、同じくらいの効果で価格が3分の1なら、買いたい人もいるだろう。20万円するミュウミュウのバッグは買えないけど、3万円台で似たようなデザインのサマンサ◯バサなら買えるという人は沢山いる。経済は自由競争だ。

当初から「似ている」というツッコミはあった

化粧品のアンチエイジング市場は急成長しており、どう戦うかは各社の自由である。富士フィルムの「アスタリフト」は、DHCの「アスタキサンチンシリーズ」によって、少しは打撃を受けたかもしれない。富士フィルムのブランドや高級感にこだわる消費者が、すぐにDHCに流れたとは考えにくいが、同社が主張するように「技術が盗まれた」となれば、全社を上げて戦う必要があるだろう。裁判の行方は定かではないが、DHCが相当危ない橋をわたっていることは確かだ。危ない橋を簡単にわたらせるほど、アンチエイジング界隈の競争は激しいということだろう。訴訟まで起こした富士フィルムの本気度も、それを受け流そうとしたDHCの節操なさも、化粧品市場における「争いの激しさ」を象徴している。裁判の行方を生暖かく見守りたい。

yuki

北条かや

1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演する。
【Twitter】@kaya_hojo
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北条かやライター

1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『こじらせ女子の日常』(宝島社)『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。

同志社大学社会学部卒
京都大学大学院文学研究科修士課程修了
民間企業勤務を経てライター、著述家として活動

出演
『新世代が解く!ニッポンのジレンマ』(NHK)、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)

著書
『キャバ嬢の社会学』(2014年星海社新書)
『整形した女は幸せになっているのか』(2015年星海社新書)
『本当は結婚したくないのだ症候群』(2016年青春出版社)
『王子様はどこへ消えた?――恋愛迷宮と婚活ブームの末路』(2019年青春出版社青春文庫)
『こじらせ女子の日常』(2016年宝島社)
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