婦人科形成に関する悩みのなかでも周りに相談しにくいのが、膣の広がりに関する悩み。加齢によって起こる変化やパートナーからの指摘など、きっかけはさまざまですが、ひそかに悩んでいる人が多いトラブルです。ここでは膣の広がりが起こる原因や婦人科形成クリニックで受けられる最新の膣縮小手術について詳しく説明していきます。

【監修医師からのワンポイント】

尿もれや、お風呂後に膣からお湯が出たり、ちならが気になったりと多くの方が膣の緩みで悩まれています。けれど他の人にはなかなか相談しにくい内容で自分だけかもと恥ずかしいと思われる方が多く、誰にも相談できずにいることが多いと思います。今は膣圧も測定できるのでまずは客観的に確認するためにもカウンセリングでご相談いただければと思います。

目次

  • 1.誰にも相談できない! 膣に関する悩み
  • 1-1.膣の広がり
  • 1-2.膣の広がりが起こる原因とは
  • 1-3.膣の広がりによって起こるトラブル
  • 1-4.膣の広がりを解消するエクササイズ
  • 2.膣縮小手術とは
  • 2-1.膣縮小手術の種類
  • 2-1-1.レーザー治療
  • 2-1-2.HIFUによる治療
  • 2-1-3.高周波、超音波による治療
  • 2-1-4.フィラー(ヒアルロン酸やPRPなど)による治療
  • 2-1-5.膣の内部を縫い縮める手術
  • 2-2.膣縮小手術の失敗
  • 3.まとめ

1.誰にも相談できない! 膣に関する悩み

まずは膣が広がるとどうなるか、膣がなぜ広がっていくかの原因を詳しく説明していきます。

1-1.膣の広がり

膣は本来、粘膜部分に水分が豊富でふっくらとしており、膣の入り口は引き締まった状態です。しかし、加齢や出産などで女性器が変化していくと、内部の粘膜や筋肉が衰えてゆるみ、膣口(膣の入り口)が徐々に広がっていきます。

1-2.膣の広がりが起こる原因とは

老化によってデリケートゾーン内部の粘膜、筋肉が痩せてくるのが一番多い原因です。これは年齢とともに女性ホルモンの一種であるエストロゲンが低下することによって誰にでも起こること。
女性の出産や加齢に伴うホルモンバランスの変化、また体重の激しい増減等は膣組織の行きすぎた伸縮やコラーゲンの損傷、膣壁の筋肉の弛緩(ゆるみ)などを引き起こす可能性があります。

さらに年齢とともに膣内部や肛門周りの筋肉である骨盤底筋群全体が衰えてくることでもゆるみが起こります。
骨盤底筋はデスクワークが中心で運動不足になりがちなケースでも衰えていくため、最近では若い女性でも膣のゆるみに悩む人がいるようです。

また、出産時には赤ちゃんが産道である膣内部を押し広げるようにして生まれてくるため、出産後は筋肉がゆるんだ状態に。さらに赤ちゃんが入った子宮の重みや出産時のいきみなど、骨盤底筋群全体に大きな負担がかかります。

若いときの出産では膣の広がりやゆるみも、比較的元の状態に戻りやすいようですが、何人か出産している人や出産した年齢が遅かった人は膣が広がったままになりやすいです。その他にも性行為によって膣が広がることもありますし、生まれつき膣の入り口が広いという方もいます。

1-3.膣の広がりによって起こるトラブル

膣が広がったり膣の内部がゆるんできたりすると以下のようなトラブルが起こります。

  • ・性行為の際の感覚の低下、パートナーからの不満につながる
  • ・重いものを持ったときやくしゃみをした時などに起こる尿もれ
  • ・入浴後、膣内部からお湯がもれる、空気がもれて音が出る(ちなら)
  • ・空気や水が入ることで細菌性膣炎にかかりやすくなる
  • ・膣組織内の常在菌バランスの乱れによる、におい、違和感
  • ・子宮や膀胱、肛門が膣内に降りてくる(悪化すると膣の外にまで出てくる)

一概に病気と呼べるものではありませんが、このように女性器の健康状態が崩れると、QOL(クオリティ オブ ライフ)の低下を招き日常生活にも影響を及ぼしかねません。
骨盤底筋全体がゆるむことで頻尿になることもあります。出産が原因の場合、多くの症状は半年から1年程度でおさまっていきますが、症状がひどい場合や長引く場合は婦人科や美容婦人科で相談してみることをお勧めします。

■出産後に膣の広がりを感じたという声

「昨日、産後初めて旦那とHしましたが、多少つっぱるような痛みがありました。それに、ゆるくなっている気がしたので、「ゆるくなってる? 」と聞いたら「うーん…若干? (笑)」と気まずそうに言われました。こんな大きな頭が出てきたんだから当たり前か。と思いながらも、少しショックです…」

出典 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/

「忘れていましたが、産後数ヶ月(もしかしたら半年以上)もの間、同じように膣からお湯が出てきて悩んだ覚えがあります。でも、気付いたら自然に治っていました。今はお風呂も気になりません」

出典 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/

1-4.膣の広がりを解消するエクササイズ

膣の広がりは年齢とともに誰でも感じるトラブルのひとつです。頻尿や尿もれなどの不快な症状を防ぎ、性生活の充実を図るためにも骨盤底筋を鍛えるエクササイズを習慣にしてみてはいかがでしょうか。

■骨盤底筋のエクササイズ

  • ①イスに腰かけて足を肩幅くらいの広さに開く。背筋はまっすぐにし、肩の力を抜いておきましょう。
  • ②おなかの力を抜き、肛門から膣にかけて力を入れて引き上げるようなイメージで締めていきます。締めた状態で5秒キープ。
  • ③ゆっくりと力を抜いて、5回繰り返します。1日に4〜5セット繰り返すと効果的です。立った状態や仰向けに寝た状態でもできるので、毎日の習慣にしてみましょう。

2.膣縮小手術とは

膣の広がりやゆるみを改善する方法として効果が高いのが婦人科形成や美容外科で行われている膣縮小術です。近年、メスを使わない非侵襲の治療が充実してきています。
女性特有の悩みに対するレーザーなどを用いた治療は、日本人の気質上、あまり一般的に広まっていませんが、海外ではすでに認知されている治療法で、医学文献はもとより、TVなどのメディアでも広く取り上げられています。ここからは最新の膣縮小術について紹介していきましょう。

2-1.膣縮小手術の種類

膣縮小術には現在のところ、以下のような方法があります。尿もれなどの不快な症状があっても、残念ながら治療は保険適用にはなりません。

  • ・レーザー治療(ジュリエット、インティマレーザー、モナリザタッチなど)
  • ・HIFUによる治療(ゴールドウルトラヴェラなど)
  • ・高周波、超音波による治療
  • ・フィラー(ヒアルロン酸、PRPなど)の補充
  • ・膣の内部を縫い縮める手術

2-1-1.レーザー治療

■ジュリエットレーザー

出典 https://tbc.clinic/

ジュリエットはデリケートゾーン用に開発されたエルビウムヤグレーザーになります。
従来のCO2レーザーと違い火傷などのリスクがなく、膣粘膜の表面を傷つけることなく深い層までレーザーが届くため膣の引き締まり効果も高いのが特徴です。また、お一人ずつディスポタイプのアダプターのため、感染症なども心配することなく安心して治療を受けられます。ジュリエットレーザーは膣内の治療に追加してデリケートゾーンの美白レーザーにもなるのでデリケートゾーンのトータルケアができます。

■インティマレーザー

出典 https://www.fotona.com/

メスを使用しないレーザー治療は合併症のリスクが少なく、安心して受けられる治療として注目が集まっています。インティマレーザーはFOTONA(フォトナ)社の最新YAGレーザー機器「SP Dynamis」を用いた方法。アメリカではVタイトニング(膣弛緩治療)として認可を受けています。

施術は専用のアプリケーターを膣内部に挿入し、粘膜下層のみに約60℃の熱エネルギーを与えるというもの。熱によって与えられたダメージによって皮膚のコラーゲンの生成が促されます。すると、粘膜を構成する細胞のひとつひとつが水分を維持できるようになり、ふっくらとした粘膜を取り戻すことができます。膣内部全体の引き締めはもちろん、膣の入り口や尿道口をパワフルに引き締めることができます。

また、レーザーは筋肉にも刺激を与えるため、骨盤底筋群の引き締めにもつながり、膣全体の若返りが可能です。このレーザーは粘膜の表面を傷つけることがないため、痛みやダウンタイムが少ないのがメリット。膣の入り口に麻酔クリームを塗ることで施術時の痛みを軽減することが可能です。

膣内部全体に照射し引き締めを行う方法だけではなく、膣の入り口のみ(小陰唇)に照射して膣の入り口を引き締める方法、尿道の周辺に照射して膀胱を引き上げ、頻尿を解消する方法など、悩みに応じて施術をアレンジすることも可能です。また、レーザー治療なので、小陰唇の気になる黒ずみが軽減するのも嬉しいポイントです。

■モナリザタッチ

出典 https://youtu.be/

フェミリフトと同様、顔のリフティングなどに使用されるフラクショナル炭酸ガスレーザーを応用した施術。イタリアのDEKA社が開発したマシンを使用します。1回の治療で不快な症状が50%改善されたという声もある治療方法です。

「腟粘膜の線維芽細胞が活性化され、新生コラーゲンが生成。「ふっくらとした厚み」や「ひだ」のある潤い豊かな腟に生まれ変わります。その結果、腟萎縮による不快な症状が軽減。QOLを高め、長期にわたり快適にお過ごしいただけます」

出典 http://ja.monalisatouch.com/

施術時の痛みはなく、麻酔は必要ありません。施術時間も5分程度で術後の処置も特になく、普段の生活ができます。施術後3日間、性交渉を控えるだけでダウンタイムもありません。通常は、45日~60日間隔で、4~5回の治療を推奨しています。

「お風呂で湯船につかった後、腟からのお湯の漏れがなくなった」「性交時に分泌液の量が増えた」「パートナーから腟内が『せんべい布団から羽毛布団のようにふかふかになった』と言われた」

出典 http://ja.monalisatouch.com/

など、女性のQOLを向上させてくれる施術としてテレビや雑誌などでも繰り返し取り上げられている施術です。

■モナリザタッチの口コミ

2-1-2.HIFUによる治療

HIFU=High Intensity Focused Ultrasound 高密度焦点式超音波治療法を女性器用に応用した施術。最新型の膣HIFUは Gold Ultra Vera(ゴールドウルトラヴェラ)になります。「膣のウルセラ」とも呼ばれています。

HIFUは超音波エネルギーを集中させて、目的部位のみにエネルギーを与え治療を行うもの。他の組織へダメージを与えることがありません。レーザーよりもエネルギーが伝わる深度が深く、手術でしか届かなかったゾーンへのアプローチが可能です。

HIFUのエネルギーによって約1週間の時間をかけて粘膜のコラーゲンが再生されはじめます。効果は3週間後くらいから実感でき、約1年程度続くと言われています。1年に1回施術を受けることで効果が持続しやすくなります。痛みは強くないので、麻酔なしで施術できます。

2-1-3.高周波、超音波による治療

■ビビーブ

RF(高周波)を用いて、熱のエネルギーを照射し、膣内部のコラーゲンの再構築を促す方法。親指サイズのアプリケーターを挿入し、膣の表面を冷却しながら皮膚の下層にあるコラーゲン組織に熱を与えます。1週間後くらいから効果が実感でき、持続は1年程度。施術は20分程度で終了し、麻酔不要。性交渉は3日後から可能です。

■ULTRA FEMME 360

2017年秋に日本に初上陸した最新マシン。熱のエネルギーを照射して膣内部にアプローチするという原理は他の方法と同じ。超音波と高周波を同軸照射し、40〜43℃の温度で膣内部を治療します。膣内部のアンチエイジングをはかります。施術時間は8分程度と短く、痛みやダウンタイムもなし。施術中は心地よい温かさを感じるほどです。非侵襲(ダメージが少ない)で施術時間が短い施術です。

■サーミタイト

顔やボディのたるみ解消に使用される高周波医療器サーミタイトを使用する膣縮小がサーミVa(サーミバー)です。高周波の熱エネルギーによって膣内環境を整え、コラーゲンの生成をサポートします。

サーミタイトは皮膚のタイトニング効果が高く、1回の施術でも満足度のいく結果が得られる施術として人気があります。膣内環境が整うことで、加齢による膣の乾燥やかゆみの改善にもつながります。施術は30分程度で痛みもありません。

2-1-4.フィラー(ヒアルロン酸やPRPなど)による治療

フィラーとはヒアルロン酸などをはじめとする安全性の高い生体物質でできた充てん剤のこと。膣縮小にはヒアルロン酸とパールフィラーの2種類があります。

■ヒアルロン酸注射

膣内部にヒアルロン酸を注射し、内側から粘膜をふっくらさせる方法。膣の粘膜にあったヒアルロン酸を注射することで手軽に膣の縮小ができる方法です。局所麻酔を使用してから注射するので、痛みはほとんどなく、ダウンタイムもなし。効果の持続には個人差があり、半年から1年程度と言われています。費用は16〜19万円程度が相場です。

■パールフィラー注射

韓国で開発された新しい注入剤、パールフィラーを注射する方法。生体適合性が高く、アレルギー反応が起こる可能性のない注入剤です。注入後、約2週間で膜が構成され、カプセル化して内部をふっくらさせてくれます。
パールフィラーはヒアルロン酸と違って、非吸収性なので、効果が半永久的に続くのが特徴です。

非吸収性といってもパールフィラーはカプセル化するので、万が一の際は取り除くこともできます。こちらは施術後1週間で性交渉が可能。ただし、パールフィラーは1本あたり約25,000円で、標準で5本程度注入が必要となり、注入料として約20万円が別にかかります。合計すると費用は30万円以上からと高く、施術を受けられるクリニックがまだ少ないのがデメリットと言えます。

■PRP注射

PRPとは、Platelet Rich Plasmaの略で、多血小板血漿のことです。PRPには成長因子が多く含まれ、膣に注入すると元の膣の状態に戻そうとする力が働きます。
本来の能力を引き出し、匂いや乾燥、また性感度の上昇や尿もれ・ちならなど多くのお悩みに対応することができる治療です。

また本来の組織に置き換わるため半永久的に効果が持続します。
PRPはご自身の血液から作製します。そのため、ヒアルロン酸などと異なり、アレルギーを心配することなく、安心して治療が受けられます。
ただしPRPは再生医療のため限られたクリニックでしか行うことはできず、価格も30万〜と高額になるところがデメリットと言えます。

2-1-5.膣の内部を縫い縮める手術

膣の内部を縫い縮める手術。会陰部や会陰小帯を切除したり、粘膜を除去または剥離するなどして調整のうえ、縫合します。効果は半永久的に得られます。産後はもちろん、生まれつき膣が広いという方にも適した治療方法です。

施術は30分程度、吸収される糸を使用するケースがほとんどですが、抜糸をした方がよりきれいに傷が治癒するようです。腫れや痛みなどのダウンタイムは1週間程度。性交渉は1カ月控える必要があるので注意しましょう。膣の内部を縫い縮める手術は産婦人科領域でも高度な技術と経験が必要な手術になります。産婦人科専門医を取得している医師に執刀してもらうべき方法です。感染症などになる恐れもあるので、術後の生活スタイルについても気をつけなければなりません。費用は35〜42万円程度が相場となっています。

2-2.膣縮小手術の失敗

外科手術以外の低侵襲の方法では失敗するケースは少ないようですが、あまり変化が感じられないという例はあるようです。効果はかなり個人差がある施術ですので、医師とよく相談してから施術を受けるかどうか決めるようにしましょう。

膣内部を縫い縮める手術では術後、患部を清潔に保てなかったり、傷が治癒しきらないうちに性交渉することで感染症が起こる例があります。溶ける糸でも抜糸をした方がいいのは患部を清潔に保つためでもあります。

本来、粘膜部分は傷がきれいに治りやすい部分。さらに膣内部は空気に触れないので痛みも少なくてすむはずです。術後、痛みが長引くようであれば、医師に相談するようにしましょう。また、膣縮小術を受ける際にはどの方法であっても、術後のケアや生活面で注意すべきことなどを医師にしっかり確認し、守るようにしましょう。

膣縮小術は子宮や膀胱といった他の臓器に近い部分が対象となる治療です。非侵襲の方法であっても症例の多い、経験が豊富で技術の高い医師が在籍しているクリニックを探して治療を受けるようにしてくださいね。

3.まとめ

周りに相談しづらい膣の広がりについての悩み。いろいろな解消方法があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。日本人女性にとっては、なかなか打ち明けづらい症状ですが、ダウンタイムもなく、治療後も歩いて帰宅できる程度の簡単な処置である治療方法が主流です。
婦人科形成の施術については女性医師がカウンセリングから担当するクリニックが多いので、気になるかたは一度、カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込です。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

Emiri

Emiri

美容系全般得意なライター。自身でも美容医療を実践。

閲覧中の記事:

監修:

山村菜実 医師

東京美容クリニック 表参道本院

東京女子医科大学卒業。産婦人科専門医でもある山村医師は、女性の患者さんを多数診療する中、女性ならではの悩みを全て解決できる医師になりたいと考え美容クリニックを開院。表参道本院では美容皮膚科に加え美容婦人科を併設し、美容婦人科の医療にも力を入れている。
2022年3月東京美容クリニック理事長就任

東京女子医科大学医学部医学科 卒業
東京慈恵会医科大学病院. 勤務
東京美容クリニック 青山本院. 院長
東京美容クリニック 理事長