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※この記事は2016年に発表されたものです。
「かやさん、”いい女”の定義って何でしょうね?」――先日ある女性(Mさん)と、こんな話題で盛り上がった。彼女はアラサー、とっても可愛らしいお人形のような顔立ちで、女性なら誰もが一度は憧れるキラキラした職業に就いている。私から見ればとっても「いい女」だと思うが、そんなMさんが「いい女とは何か」悩むなんて、何があったのか。
「いい女を目指しなよ」
どうしたのか聞いてみると、Mさんはある年上の男性と2人で話していて、「◯◯ちゃんは、これからいい女を目指しなよ」と言われたらしい。可愛くてうるわしい彼女に、そんなことを言う男性ってどんなヤツ、いや人だ?
私「はぁ~……余計なお世話感もありますけど、確かに『いい女』ってなんでしょうね」
Mさん「そうなんですよ。実は下着について話していた流れで、『いい女』の話になったんですけど」
私「その男性、Mさんのことが好きなんじゃないですか??」
――やっちまった。男女が2人でシモの香りがする話をしていると、恋愛感情があるのではと勘ぐってしまう典型的な非モテ思考。
「それはないと思います。『いい女を目指しなよ』ってことは、逆に考えると今の私は『いい女じゃない』ってことかもしれませんし」と、Mさんは冷静だ。
う~ん。もしかしたら、その男性にとってMさんは、たまたま「好みの女」じゃなかったってことかもしれない。自分の好みではないから、「いい女になりなよ=君は俺にとっての理想の女ではないから頑張れ」とか適当なことを言うのではないか。可愛いMさんにそんなことを言うなんて、なんてヤツ、いや人だ。
Mさん「それはいいんですけど、世間的に言う『いい女』って何でしょうねぇ」
確かになんだろう。
男から見ても、女から見ても「いい女」
色気がある女=いい女かもしれないが、それだけじゃないような気がする。タレントでいうと、色気がある壇蜜は男ウケしそうだが、女ウケも完璧かといえばそうでもない。Mさんは、「難しいですね。男性から見ても女性から見ても『いい女』っていますもんねぇ」と言う。最近グラビアで再ブレイクしている深田恭子も、いい女というより性的魅力のある女って感じだ。そうか気がついた。いい女は、体つきがいいだけじゃなくて、中身も感じさせなければならない。その中身とはなんだろうか。
自立していれば「いい女」か
私「いい女といえば『自立』じゃないですか? 恋愛に依存するんじゃなくて、なにかしら自立している女性。仕事でも趣味でも、恋愛以外のものを持っている人!」
Mさん「なるほど……でもバリバリ仕事をしている女性って、恋愛対象から外れがちじゃないですか?」
たしかに。自立しまくったバリキャリ女性が、恋人から「君は僕がいなくても生きていけそうだね」とフラれるのは、よくありそうな話だ。いい女は、自立しすぎていてはいけないのか。
モテるのが「いい女」?
ファッション誌『CanCam』では数年前、上司からも女子からも男子からも好かれる「全方位モテ」なる言葉を使っていたが、あれがいい女かといえばそうでもない。「全方位モテ」を叫ぶCanCamの読者モデルに対して、私は「いい女だな」と思ったことがない(失礼)。それは彼女たちが外見ばかりで、中身がない(ように描かれている)からだ。男への依存心、丸出しって感じがする。ある種の男からは「いい女」だと思われても、女性からはあんまり……ウケがよくなさそうだ。
ついでにいうと、モテる女のなかには「オタサーの姫」なる女子たちもいるが、あれも全然いい女ではない。こちらも自立しておらず、男性集団のなかでちやほやされているだけ。つまり、自立せずただ男に好かれるだけでは、モテ系女子、小悪魔系女子とかオタサーの姫とか、そういうふうにカテゴライズされるだけで、「いい女」とはいえない。「ズルい女」くらいには、なれるかもしれないが。
余裕のある女は最強だ
Mさんと私が、「いい女……難しいですよね……」と落ち込みかけていたところへ、別の知人がひとこと。
「いい女って、余裕のある女じゃないですか?」
……それだ!! バリキャリで仕事ができても、毎日仕事ばかりで忙しく、余裕がない女はあんまり「いい女」らしくない。小悪魔系でモテる女もいいけれど、それは「ズルい女」でしかない。男女双方から「いい女だなぁ」と思われる女は、どこか余裕を感じさせるのだ。
余裕を持って生きるのは難しい。毎日バタバタして、疲れて、ストレスを抱えて愚痴ばかり、そんなふうになりがちな私たちが「いい女」になるのが難しいのは、きっと「余裕」がないからだ。余裕をもって仕事をこなす力、自分のことを考える余裕、相手を思いやる余裕。その余裕が、もしかしたらちょっとした隙すら感じさせ、嫌味のない色気につながるのかもしれない。
なにごとにも余裕のある女は、肉食系女子のようにがっつかない。モテ系、量産型女子のように、キャッキャふわふわしていない。自分というものをしっかり持ち、半歩先を予想して、余裕をもって動く。それが「いい女」。最強ではないか。アラサーになった大人の女が目指すべきは、余裕のある女だ。
Mさんはこの後、予定があるらしかった。「いい女談義、またしましょうね!」「またしましょう! ではでは!」と言いあって、2人でバタバタと席を立った。スケジュールが詰まっていて、今日も忙しい。いつも慌ててばかりの私たちが「いい女」を目指すのは、結構大変そうだ。
北条かや
1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。最新著書は『こじらせ女子の日常』(宝島社)『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。
【Twitter】@kaya_hojo
【Facebookページ】北条かや
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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執筆:
北条かやライター
1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『こじらせ女子の日常』(宝島社)『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。
同志社大学社会学部卒
京都大学大学院文学研究科修士課程修了
民間企業勤務を経てライター、著述家として活動
出演
『新世代が解く!ニッポンのジレンマ』(NHK)、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)
著書
『キャバ嬢の社会学』(2014年星海社新書)
『整形した女は幸せになっているのか』(2015年星海社新書)
『本当は結婚したくないのだ症候群』(2016年青春出版社)
『王子様はどこへ消えた?――恋愛迷宮と婚活ブームの末路』(2019年青春出版社青春文庫)
『こじらせ女子の日常』(2016年宝島社)
『インターネットで死ぬということ』(2017年イースト・プレス )
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