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※この記事は2016年に発表されたものです。
女性向けの掲示板(「ガールズちゃんねる」)はクセになる。女性が書き込むという点では「発言小町」と似ているが、「ガルちゃん」ではカテゴリ分けがなく、人気のスレッドが上位に表示される。「中卒の人についてどう思いますか?」「男性の顔と身長どちらを重視しますか?」など、いかにも女が興味津々、かつ賛否両論ありそうなスレッドは伸びる。書き込む「ガルちゃん民」たちの間では、美容整形ネタもけっこう人気がある。
目次
- 「まるでハリーポッターのドビー」と報じられた元AV女優について
- 罵詈雑言から分析、同情へと変わるコメントたち
- 七瀬リナの男性憎悪
「まるでハリーポッターのドビー」と報じられた元AV女優について
ガルちゃんで「美容整形」を検索すると、出るわ出るわ。週に1度はスレッドが立つ。ネタの常連は、平子理沙、ヴァニラ、菜々緒に、HKT48の兒玉遥、あとは韓国の美容整形ニュースや、「美容整形で失敗した方いますか?」などの「おしゃべり系」。ニュースから実体験まで、なんでもネタになる。
最近、興味深かったのは(「【閲覧注意】世界を騒然とさせた元AV女優七瀬リナ、”ドビー”と呼ばれた整形&激痩せの理由」)だ。七瀬リナはAV女優としてのキャリアがあり、現在は関西で風俗嬢をしている。11月にテレビ東京系の「ヨソで言わんとい亭」に出演し、その発言が物議をかもしたようだ。七瀬はもともと、鼻や目、アゴ、脂肪吸引などの美容整形歴があり、昨年、その写真が欧米で「ハリー・ポッターのドビーのよう」と報じられ、話題になった。覚えている人も多いだろう。その後も、彼女はツイッターで「これぞ躁鬱www オンオフのスイッチが激しい。今は一人にしてください」とか、「お金は裏切らない。世の中結局はお金」などの過激(?)な発言が注目されている。
17歳の女性から整形を批判された際には、「お前頭大丈夫か? 自分ブスって自覚してるか? かなりブスやからな? 自覚しろよ?」と晒すなど、かなり攻撃的だ。まあ、七瀬を攻撃した少女も愚かだったとは思う。人には愚行権があるから、ここは「喧嘩両成敗」というしかないけれど。
罵詈雑言から分析、同情へと変わるコメントたち
そんな七瀬リナを、「ガルちゃん民」はどう見ているのか。コメントを見ていくと、女性たちの意見がどんどん「洗練」されていくのが分かる。はじめのうちは、「こわい」とか「宇宙人!」「メンヘラ」など、感情的な反応が目立った。とりあえず叩いとけ、という感じだ。
上から目線で、「ブスでも友達いる人はたくさんいるよ。顔のせいにしちゃダメだってば。メンタル弱そう」と書き込む人もいた。が、次第に「なんていうか、病気だよね。自覚がないなら尚タチが悪い。可哀想な人」など、分析する人が出てくる。「だんだん気の毒になってきた(~_~;) どうゆう環境で育ったらこんな人間になるんだろ」あたりは、18歳でAV女優となった彼女の養育環境に、思いを馳せる余裕があるらしい。分析は、次第に「同情」へと変わる。
「みんな冷たいね。ゆがんだ美意識でも、それを作り上げられるまでに辛い経験してんじゃん」とか、「21歳でこんな…精神的にも良くなるといいですね。普通の幸せ、普通の人生を送れますように」など、祈るようなコメントが出始める。
今や美容整形界では知らない人がいないタレントのヴァニラも、同情系のコメントが書き込まれやすいタイプだ。過去にトラウマがあったらしい「整形美人」は、叩かれると同時に哀れみの対象となる。七瀬リナは以前から、「私は特にメンタル弱くて悩みやすいの。けど悩んだって解決しない。プラスに考えよう」とか、「1億貯める! 貯めたんねん。わしの人生もう終わってるわ。親に申し訳ない。娘AV女優で風俗嬢とか恥やろ。爆笑」などとツイートしている。こうしたツイートを見た人もいるのだろう。ガルちゃんには次第に、「辛い過去があったんだね」、「整形前だって可愛かったと思うし、こんなに若い子がここまでしなきゃいけないまで思いつめてたなんて涙が出そう」などのコメントが増えていった。「批判するのは、ここで終わり。この子を批判するほど私たちの心は荒んでいないよ」という人もいる。
七瀬リナの男性憎悪
七瀬リナはよく、「男のことは金としてしか見てない」「諭吉大好き」などと発言している。風俗嬢という仕事が、いかに男への憎悪を生むものかと痛感する。「究極のサービス業」など、どんなにキレイ事を並べても、結局は「女性器」に還元される仕事なのだ。自分をモノに還元する客=男を、彼女たちは憎み、「カネ」に還元する。その心の機微は想像するしかない。ただ、ガルちゃんのコメントを見ていると、こうした仕事のことを想像すらせず、同情するだけの人が多いようだ。
七瀬は以前、「同業の方とか女の子にフォローされるとなんか嬉しい。基本女の子好き。笑 だから見てるんならフォローしてね。はあと」とつぶやいていた。「基本女の子好き」という気持ちは私も分かる。風俗嬢として働く七瀬リナの「男性憎悪」。その要因を真の意味で想像しようとしないガルちゃん民たちのコメントは、「(こういう人と)関わりたくない。私よかったブスでも普通の人間で」という書き込みに集約されている。ガルちゃんを見ていて虚しくなるのは、この手のコメントを見つけてしまったときである。
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北条かや
1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。16年1月下旬、『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)刊行予定。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。
【Twitter】@kaya_hojo
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執筆:
北条かやライター
1986年、石川県金沢市生まれ。ライター。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に『こじらせ女子の日常』(宝島社)『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)。その他の著書に『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』(いずれも星海社)がある。NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。
同志社大学社会学部卒
京都大学大学院文学研究科修士課程修了
民間企業勤務を経てライター、著述家として活動
出演
『新世代が解く!ニッポンのジレンマ』(NHK)、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)
著書
『キャバ嬢の社会学』(2014年星海社新書)
『整形した女は幸せになっているのか』(2015年星海社新書)
『本当は結婚したくないのだ症候群』(2016年青春出版社)
『王子様はどこへ消えた?――恋愛迷宮と婚活ブームの末路』(2019年青春出版社青春文庫)
『こじらせ女子の日常』(2016年宝島社)
『インターネットで死ぬということ』(2017年イースト・プレス )
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