最近はおしゃれや自分を表現するためにタトゥーを入れている方も多く、眉毛やリップなどのアートメイクも主流になっています。
読者さんのなかにも施術を受けられた方は多いのではないでしょうか?
どちらもとっても良い施術ですが、受けてみると「思った感じと違う……」と思われたり、歳を重ね趣味が変わってしまったり、少し時代遅れなデザインに感じてしまうケースもあるかと思います。

そんな時必要となるタトゥーやアートメイクの除去についてお話ししていきます。
タトゥーやアートメイクを入れられている方や除去を希望される方だけでなく、除去には入れる時よりもお金がかかってしまったり、時間がかかることが多いためこれからタトゥーやアートメイクを入れられる方にも是非読んで頂きたい内容となっております。

【監修医師からのワンポイント】

タトゥー除去はピコレーザーが主流ですが、ピコレーザーの種類や医師の技術により施術回数が変わってきます。また麻酔は麻酔クリームや笑気麻酔を使っての施術が主流ですがタトゥーは色素が深いため痛みを伴います。局所麻酔や静脈麻酔などしっかり痛み対策をしてくれるクリニックが安心です。最近では韓国で人気のレーザー照射の期間を半減できる治療も出てきているので、タトゥーの最新治療に興味がある方は気軽にご相談ください。

Contents

そもそもタトゥーとアートメイクは何が違うの?

タトゥーとアートメイクは何が違うかというとインクを入れる層が異なります。
医療アートメイクは表皮という浅い層、タトゥーは真皮という深い層にインクを入れていきます。そのためタトゥーは半永久的に残りますが、アートメイクは経年的に薄くなっていきます。また浅い層にインクを入れていくアートメイクは、1回の施術では色が定着しづらいため2〜3回程度の施術が必要となります。

医療アートメイクはクリニックが安全に留意し医療行為としてやっているので、当然のごとく医師の管理下で、医師かナースが施術をしています。
一方タトゥーを入れる施術者は彫り師と呼ばれていますが、このようなライセンスが存在する訳ではありません。彫り師は師弟関係を結び修行することで技術を身につけ施術を行うことが基本となっています。そのため以前は眉毛のアートメイクも彫り師が入れていました。

針を使用するため感染などの有害事象が問題となり、厚労省通達などで、針を通して肌に色素を入れる行為は医師が行うことが望ましいこととなりました。アートメイクと比較するとタトゥーはファッション、芸術の意味合いが強いため医療従事者以外の彫り師が施術を行っているのが現状です。

アートメイクは医師免許が必要となっていますが、ほとんどの美容クリニックでは看護師が施術を行っているかと思います。これは医師がクリニックに常駐していることで看護師でも施術可能となっています。逆に言えば、看護師のみで運営しているようなクリニックやナースサロンは違法となるためご注意下さい。

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アートメイクのレーザー除去について

スタンダードな方法はレーザーでの除去になります。レーザーの種類によって得意とする色味が異なるため以下で詳しく解説していきます。またレーザーでの除去以外の方法についてもお話ししていきます。

①ピコレーザーでの除去

特徴

ピコレーザーとはピコ秒(1兆分の1秒)という極めて短い時間でレーザーを発振する機械の総称です。レーザーの発振時間が短いことでターゲットとなる色素を衝撃波で細かく砕いてシミなどの色素を薄くしていくという仕組みになっています。この仕組みを光音響作用といいます。
また、衝撃波で砕くため周りのターゲット以外の組織への熱ダメージを最小限に抑えられるという特徴もあります。そのためレーザー照射に伴う炎症後色素沈着のリスクを最小限にすることが可能となりました。

タトゥーやアートメイクに対しての効果

タトゥーはお肌の真皮浅層から深層に渡ってインクが入っています。一気に高出力で浅層から深層にまで照射するとインクの色素も砕けますが表皮内で大きな空胞ができてしまい、皮膚が剥がれて水ぶくれができてしまいます。そうすると瘢痕といって治らないクレーターができてしまったり、濃く跡になって残ってしまう(炎症後色素沈着)ため推奨できません。

そのため表層から徐々に粉砕し、お肌の新陳代謝によって色素を排出していくというサイクルを複数回繰り返すことが必要となります。それに対してアートメイクは比較的浅い層にインクが入っているため繰り返しての照射は必要となりますがタトゥーより治療回数は少なく除去ができます。

また色味によってレーザーの反応が良い色、反応が出にくい色があり、色によってレーザーの波長を使い分ける必要があります。薄くなったタトゥーやアートメイクは次の項目で紹介するQスイッチYAGレーザーでは除去できないためピコレーザーが適応となります。

レーザーのターゲットを岩と例えると、QスイッチYAGレーザーは岩を小石に砕くもの、ピコレーザーは岩を砂まで砕くものとイメージして貰うと良いかと思います。
色によってレーザーを吸収する比率が異なるため黒色には長めの波長、寒色系(青、水色、緑、紫など)には中間くらいの長さの波長、暖色系(赤、ピンク、オレンジ、茶色など)には短めの波長と使い分けていきます。
そのため自分のタトゥーやアートメイクに適した波長で照射できる機械があるのか、施術してくれる医師は波長の使い分けが上手かなどカウンセリングでしっかりとお話しを聞き、クリニックの症例写真なども参考にしてどこで施術を受けるか選ぶと良いでしょう。

レーザー除去の施術の流れ

  • ①麻酔(麻酔クリーム、麻酔テープ、皮内・皮下注射の局所麻酔、笑気麻酔、冷却での痛み緩和)
  • ②照射
  • ③お肌の状態により抗菌薬やステロイド、ワセリンなどの塗り薬塗布+ガーゼ保護
  • となります。

アイラインのアートメイクのみ目薬の麻酔薬と眼球を保護するためのコンタクトレンズの挿入が必要となります。誤って目の直上にレーザーを照射してしまうと視力が下がってしまい、その後も回復しない可能性が高いためです。アートメイク除去をやっていてもアイラインの物品を取り揃えていないクリニックもあるため、ご希望の方は最初に施術可能か問い合わせることをおすすめします。
また、リスクとしては睫毛や眉毛など毛にも反応するため、一部毛が生えにくくなる場合があります。

費用

回数はタトゥーやアートメイクの色素量やお肌の状態に伴いかなり個人差があります。タトゥーの場合レーザー照射が5〜20回程度必要となり、手のひら1枚分で5〜10万円/回です。

アートメイクの場合は2〜5回程度必要で、両眉の場合3〜10万円/回が相場となります。
タトゥーはお肌の深くまでインクが入っているため通常アートメイクよりも回数、費用がかかります。またレーザーに反応しづらい黄色や肌色、白色の色素が入っている場合は黒色変化し回数が必要になる可能性があります。

ダウンタイムやリスク

ダウンタイムはかさぶたのようになるのが2週間程度、茶色っぽく跡となるのが1〜6カ月程度となります。ダウンタイムも照射箇所により差が出るためカウンセリング、診察時に確認が必要です。

  • ・赤み、ひりつき
  • ・火傷、水疱形成(水ぶくれ)
  • ・表皮剥離(皮剥け)
  • ・炎症後色素沈着
  • ・瘢痕(クレーター)
  • ・出血、皮内出血
  • ・色素脱失(白抜け)
  • ・黒色変化※

※黒色変化について
インクに鉄やチタンが含まれている場合、黒色にインクが変化する可能性があります。特に、オレンジや茶色、白色、肌色が黒色変化しやすくなっています。
患者さん本人がこのような色素を入れたつもりがなくても、タトゥーやアートメイクの施術者が形を修正するために入れている可能性があるため黒色変化についてのリスクはレーザーでの除去を希望する方は知っておく必要があります。

②QスイッチYAGレーザーでの除去

特徴

QスイッチYAGレーザーとはナノ秒(10億分の1秒)という短い時間でレーザーを発振する機械の総称です。従来はこのQスイッチYAGレーザーでタトゥーやアートメイクの除去を行っていました。

治療初期段階では効果がでるものの、段々とタトゥーやアートメイクが薄くなるにつれて反応が悪くなってしまうため完全に除去することは難しいという状況でした。その後、ピコレーザーが登場すると細かく砕かれたインクの色素にもアプローチすることができるようになったため薄くなったタトゥーやアートメイクも治療可能になりました。

つまりQスイッチYAGレーザーはタトゥーやアートメイク除去の初期段階では有効な治療のため選択しても良いかと思いますが、完全な除去を目指すのならば回数を重ねるにつれてピコレーザーに移行する必要がある機械となります。

また黒や茶色、青などの濃い色のインクには反応が良いのですが、それ以外の色調にはピコレーザーほどの切れ味はないためマルチカラーのタトゥーやアートメイクを入れている方はピコレーザーを取り扱っているクリニックを選ぶと良いかと思います。

費用

回数はタトゥーやアートメイクの色素量や深さ、お肌の状態に伴いかなり個人差があります。タトゥーの場合レーザー照射が5回以上必要となり、手のひら1枚分で5〜10万円/回でピコレーザーとさほど価格の違いはないかと思います。

アートメイクの場合は2〜5回程度必要で、両眉の場合3〜10万円/回程度でこちらもピコレーザーとほとんど変わらない相場となります。薄くなった色素にはレーザーの反応が鈍いため途中でピコレーザーに切り替えると効率良く治療できるかと思います。

ダウンタイムやリスク

ダウンタイムはかさぶたのようになるのが2週間程度、茶色っぽく跡となるのが1〜6カ月程度となります。ダウンタイムも照射箇所により差が出るためカウンセリング、診察時に確認が必要です。

  • ・赤み、ひりつき
  • ・火傷、水疱形成(水ぶくれ)
  • ・表皮剥離(皮剥け)
  • ・炎症後色素沈着
  • ・瘢痕(クレーター)
  • ・出血、皮内出血
  • ・色素脱失(白抜け)
  • ・黒色変化

タトゥー・アートメイクレーザー除去の医師監修施術詳細(概要、ダウンタイム、費用、リスク等)についてはこちら


切除手術での除去

特徴

切除手術とは外科的にタトゥーやアートメイクを切り取る施術となります。そのためあまりに広い箇所は適応外となります。また、眉毛のアートメイク除去希望の場合、毛が生えているところを切除するともう生えてこなくなってしまいます。このような場合は眉毛からはみでた色素のみを切り取ることがスタンダードとなります。

費用

自費の外科手術になるため費用はクリニックにより大きく異なります。眉毛のアートメイクや5cm程度の小さい箇所の手術では10〜30万円程度のクリニックが多いかと思います。基本的に手術の施術回数は1回で良いものの、抜糸や経過観察のため2、3回再診となることが多いと思います。

ダウンタイムやリスク

  • ・出血
  • ・内出血
  • ・感染
  • ・腫れ
  • ・色素沈着
  • ・つっぱり感
  • ・瘢痕化(クレーター)

タトゥー・アートメイク切除手術の医師監修施術詳細(概要、ダウンタイム、費用、リスク等)についてはこちら

カモフラージュ法(ホワイトタトゥー・カバーアップタトゥー)

特徴

カモフラージュ法はもともとあるアートメイクやタトゥーの上からさらに肌色の色素を入れて目立たなくする方法です。
メリットは短期間でダウンタイムも少ない点です。デメリットは肌色のインクはレーザーで除去することがかなり難しいという点があります。また、白系の色は色抜けしやすく、さらに通常のアートメイクと同様に時間の経過により褪色して色が変わってしまうというリスクがあります。またお肌も季節や年齢により色調が若干変化するためカモフラージュ法で1度施術を受けたからといって一生目立たないとも限りません。
このことから基本的にはあまりお薦めできません。

費用

施術できるクリニックも少なく、通常のアートメイクより若干高くなっています。相場は1×1cm台で2万円程度/回で定着させるために3回ほど繰り返しての施術が必要となります。
アートメイクのメニューがあるクリニックでもカモフラージュ法の取り扱いのないクリニックも多いため施術を希望される場合はクリニックにお問合せするのが良いかと思います。

ダウンタイムやリスク

ダウンタイムは1週間程度です。

  • ・赤み
  • ・ひりつき
  • ・皮剥け
  • ・一時的に濃く見える
  • ・腫れ
  • ・ヘルペスの発症(唇の場合)

削皮術

特徴

削皮術とは字の如くタトゥーやアートメイクを皮膚ごと削りとる治療方法となります。皮膚を削り取るという物理的な除去だけでなく、傷が治る創傷治癒の過程で異物(ここではインクになります)を食べて除去してくれる貪食細胞も集まりさらにタトゥーやアートメイクを薄くする作用があります。
施術後は擦り傷のようになります。一度にたくさん除去するために分厚く削ってしまうと日常生活に支障をきたす程跡になり残ってしまったり、皮膚が突っ張るため推奨できません。また皮膚は防御機能という細菌などの有害物質から身体を守る役割があるためそれを剥ぐことで感染のリスクがあります。切除の適応外だけど急いで除去したい方や傷跡にこだわらない方が削皮術が適応となります。お肌の浅い層に入れているアートメイクでは除去後の審美性の観点やリスクが釣り合わないためレーザーでの除去がスタンダードとなっております。

費用

自費の外科手術のためクリニックにより差が大きいです。狭い範囲では20〜30万/回、背中全体のタトゥーなど大きい範囲では100万円/回前後が相場となります。

ダウンタイムやリスク

ダウンタイムは2週間程度です。

  • ・赤み
  • ・出血
  • ・腫れ
  • ・瘢痕形成(クレーター)
  • ・色素沈着
  • ・感染、敗血症(傷の箇所だけでなく身体全体に細菌がまわってしまう生死に関わる重篤な病気です)

タトゥー・アートメイク削皮術の医師監修施術詳細(概要、ダウンタイム、費用、リスク等)についてはこちら

植皮術

特徴

植皮術とはタトゥーなどが入っている箇所を切除し、お尻や太ももなど他の箇所の皮膚を移植する方法です。メリットは切除術と同様に1度で治療が完結するところで、広い範囲でも皮膚を移植することでつっぱり感が少なく施術が可能となるところです。デメリットは術後2週間の固定が必要になることや皮膚の色の違いでつぎはぎに見えること、移植した皮膚が定着しないリスク、タトゥーが入っている箇所以外に傷を作ってしまうという点があります。

費用

自費の外科手術のためクリニックにより差が大きいです。狭い範囲では20〜30万/回、広い範囲では100万円/回前後が相場となります。

ダウンタイムやリスク

移植した皮膚が定着するまで約2週間程度必要となります。

  • ・赤み
  • ・出血
  • ・腫れ
  • ・瘢痕形成(クレーター)
  • ・色素沈着
  • ・感染、敗血症(傷の箇所だけでなく身体全体に細菌がまわってしまう生死に関わる重篤な病気です)

タトゥー・アートメイク植皮術の医師監修施術詳細(概要、ダウンタイム、費用、リスク等)についてはこちら

まとめ

基本的にはレーザー治療がスタンダードとなりますが、お肌の状態によって様々な除去の選択肢があります。皮膚や身体への負担を考えるとレーザーなどの皮膚科の除去方法を試した後、どうしても気になるような箇所があれば外科の治療を検討すると良いかと思います。
それぞれメリット、デメリットがあるため施術後の理想や自分がどの程度のリスクを受け入れることができるか考えてみてください。

*本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。価格は、特に記載がない場合、すべて税込みです。また価格は変更になる場合があります。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

MarkeTech

まいまい

都内の美容皮膚科メインで働く正看護師。新人の教育担当も経験。現在は保険診療も併設されているクリニックで勤務中。美容と保険をうまく組み合わせ患者様のお悩みを解決したいと考えている。美容について勉強したことを発信しており、Twitterでは1,000人以上のフォロワーも。医療従事者としてエビデンス(根拠)に基づいた内容を伝えることを心掛けている。

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監修:

村岡史子 医師

ziz CLINIC

岩手医科大学医学部卒。日本形成外科学会所属。形成外科で基礎を学び、湘南美容クリニックに入職。湘南美容クリニックでは技術指導医として全国のドクターの技術指導も担当。13年間美容医療に携わり、全国トップクラスの症例数を残す。
2023年、日本初のタトゥー除去専門クリニックziz CLINIC開院。ziz CLINICでは、レーザー、切除等タトゥー除去に関する治療が全て可能。ルラ美容クリニック顧問兼特別技術指導医も兼務。

2007年 岩手医科大学医学部 卒業
2007年 盛岡赤十字病院 勤務
2009年 岩手医科大学形成外科 勤務
2010年 タウン形成外科クリニック盛岡院院長 就任
2013年 湘南美容クリニック仙台院 入職
2014年 湘南美容AGAクリニック仙台院院長
2015年 湘南美容クリニック仙台院院長
2016年 湘南美容クリニックエリア統括ドクター
2019年 湘南美容クリニック北日本ゾーンドクター
2020年 湘南美容クリニック技術指導医
2022年 ルラ美容クリニック 顧問兼特別技術指導医就任
2023年 ziz CLINIC 設立 院長就任

執筆:

まいまい看護師

都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニックで働く正看護師。自身がニキビで悩み、SNSや雑誌などで知った情報を試すも良くならなかった経験からお肌の状態が自信をなくしたり、QOLを下げる原因にならないよう美容看護師になる。

また誤った情報で悲しい思いをする方を減らすため根拠に基づいた美容法をSNSで紹介している。クリニックでは前職、現職でも指導者・プリセプターを担当。施術だけでなくカウンセリングも行っている経験から現実的に実践できるような手軽な美容から幅広く発信。

愛知県の大学病院(救急病棟)
都内美容皮膚科クリニック
都内美容皮膚科、保険診療皮膚科その他形成外科などが併設しているクリニック